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全国に伝わるもの

八尺様(はっしゃくさま)とはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品

八尺様  / ハッシャクサマ

人型の妖怪現代の妖怪 現代の噂話

身長が八尺ほどある女の姿のもの。目をつけられた者は数日で命を落とすという。

八尺様とはどんな妖怪か

八尺様は、背の高さだけで恐怖を作る怪談です。

八尺、およそ2メートル40センチほどの背丈を持つとされる女の姿のもの。白い服とつばの広い帽子という出で立ちで語られます。

ぽ、ぽ、ぽ……

男とも女ともつかない低い声を立てる、というのが特徴です。

目をつけられた者は数日のうちに命を落とすとされ、助かるには家から出ず、四方を地蔵で囲った土地を離れるといった手順が語られます。

この話は、インターネットの掲示板に投稿された怪談が出どころです。ある土地に古くから伝わる封じの話という形式で書かれていますが、投稿以前の記録は確認されていません。

特定の地方の言い伝えではないため、「出る場所」を挙げることができない妖怪です。

それにもかかわらず、映像作品やゲームを通じて、現代の妖怪のなかでは群を抜いて知られています。

八尺様の漢字表記と読み方

読みは「はっしゃくさま」です。

」は日本の古い長さの単位で、一尺はおよそ30.3センチ。八尺なら約2メートル42センチになります。

メートルではなく尺で示されている点に意味があります。尺という単位は、古い言い伝えらしさを作ります。もし「2メートル40センチの女」と書けば、まったく印象が変わるでしょう。

」という敬称も同じ働きをします。恐ろしいものを敬って呼ぶのは、日本の民俗によくある形です。犬神を「神」と呼ぶのと同じです。

名前の作り方そのものが、伝承らしさを狙っています。

八尺様(はっしゃくさま)

もっとも一般的な表記。

八尺さま(はっしゃくさま)

仮名交じりの表記。

8尺様(はっしゃくさま)

数字を用いた表記。

八尺様の姿と特徴

八尺様の姿は、次のように語られます。

身長 … 八尺、約2メートル40センチ。
服装 … 白いワンピース。
帽子 … つばの広い白い帽子。
… 長い。
… 「ぽ、ぽ、ぽ」という低い音。
姿の変化 … 見る人によって、その人の親しい者の姿に見えることがある。

身長が唯一の特徴といってよいほどです。他の要素はどれも普通で、異様なのは背丈だけです。

白いワンピースの女性は、街で見かけてもおかしくない姿です。ただし、背が2メートル40センチある。

普通の姿に、一点だけ異常がある。この作りが、八尺様の恐ろしさを生んでいます。

「ぽ、ぽ、ぽ」という声も同様です。恐ろしい叫び声ではなく、意味の分からない間の抜けた音です。だからこそ落ち着かない。

塀の向こうから頭だけが見える、という描写が繰り返されます。

八尺様の伝承物語

  1. 掲示板に投稿された話 ─ 出どころ
  2. 伝承らしさの作り方 ─ 何が効いているか
  3. 現代に妖怪が生まれるということ
  4. 背丈だけが人から外れている

掲示板に投稿された話 ─ 出どころ

八尺様の話は、インターネットの掲示板に投稿されたものです。

形式は、体験談です。祖父母の家に泊まりに行った少年が、塀の向こうに異様に背の高い女を見る。それから「ぽ、ぽ、ぽ」という声が聞こえるようになる。

祖父母に話すと、家族の顔色が変わります。この土地に古くから伝わるものだと告げられ、少年は座敷に閉じ込められ、複数の僧が呼ばれて封じの儀式が行われる。

翌朝、少年は車で土地の外へ送り出される。四方を地蔵で囲った土地の外へ。

「絶対に振り返るな」「窓の外を見るな」 と念を押されて。

古い伝承の形式を、正確になぞった作りです。 土地の禁忌、家族の秘密、封じの儀式、振り返るなという戒め。

しかし、この話が投稿される以前の記録は確認されていません。

伝承らしさの作り方 ─ 何が効いているか

八尺様の話が広まったのは、伝承らしさが精密に作られているからです。

尺という単位 … メートルではなく尺。古さを感じさせます。
「様」という敬称 … 恐ろしいものを敬う日本の民俗の形。
四方の地蔵 … 土地を結界で囲うという実際にある発想。
振り返るな … 日本の説話に繰り返し現れる禁忌。
家族が知っている … 土地の秘密という設定。
期限がある … 数日以内に死ぬという切迫。

これらはすべて、実際の日本の伝承に見られる要素です。

本物の部品で、新しいものを組み立てている。

だから、伝承として読んでしまう。八尺様の話が広まった理由は、この作りの正確さにあります。

創作であることは、価値を下げません。 むしろ、どうすれば伝承らしくなるかを教えてくれる資料といえます。

現代に妖怪が生まれるということ

八尺様は、現代に妖怪が生まれる過程を、そのまま見ることのできる例です。

古い妖怪については、いつどこで生まれたのかを追うことができません。記録が残っていないからです。

しかし八尺様は違います。

投稿された日付が分かります。 広まっていく過程が記録に残っています。絵が描かれ、映像が作られ、ゲームに登場し、別の作者による続きの話まで生まれました。

これは、江戸時代の妖怪絵巻で起きたこととよく似ています。絵師が新しい妖怪を描き、別の絵師が写し、性格が加えられていく。

媒体が変わっただけで、妖怪の作られ方は変わっていません。

掲示板は、現代の妖怪絵巻です。ぬらりひょんが絵巻から生まれたように、八尺様は投稿から生まれました。

数百年後、この違いは意味を持たなくなっているかもしれません。

背丈だけが人から外れている

八尺様の恐ろしさは、背の高さの一点に集約されています。

なぜ、背が高いことが怖いのでしょうか。

ひとつは、人の形のまま、寸法だけが違うことです。角も牙もありません。姿は普通の女性です。ただし、大きさが違う。

わずかに違うものは、まったく違うものより不気味です。 これは広く知られた感覚で、人形や作り物の顔が不快に感じられる現象とも通じます。

もうひとつは、塀の向こうから頭が見えるという描写です。本来なら見えないはずの高さに、顔がある。

日常の風景に、一点だけ寸法の合わないものがある。

加えて、「ぽ、ぽ、ぽ」という意味を持たない声。恐ろしい叫びではなく、間の抜けた音です。

理解できないものが、理解できる姿をしている。これが八尺様の作りです。

八尺様の伝承地域

八尺様には、訪ねられる伝承地がありません。

八尺様はインターネットの掲示板に投稿された怪談が出どころです。塚も祠も、ゆかりの地もありません。

話のなかには「四方を地蔵で囲った土地」が出てきます。これは物語の設定です。

発生地とされる県が語られることもありますが、いずれも確かめられていません。

この妖怪は、場所を持たないことがはっきりしている数少ない例です。 無い場所を、あるように書くことはしません。この欄は空のままにしてあります。

八尺様の正体と考えられているもの

八尺様の正体については、次のことがはっきりしています。

これは創作された怪談です。 インターネットの掲示板に投稿された話が出どころであり、投稿以前にさかのぼる記録は確認されていません。 出どころは掲示板の書き込みです。

そのうえで、なぜこれほど広まったのかを考える価値があります。

伝承の部品が正確に使われています。 尺という単位、「様」という敬称、四方の地蔵による結界、振り返るなという禁忌、土地の秘密を知る家族。これらはすべて実際の日本の伝承に見られる要素です。本物の部品で組み立てられているため、伝承として読めてしまいます。

恐怖の作りも優れています。 人の形のまま寸法だけが違うという不気味さ、意味を持たない「ぽ、ぽ、ぽ」という声、塀の向こうから見える頭。理解できるものと理解できないものが同居しています。

現代の妖怪の生まれ方を示す資料としても重要です。江戸時代の絵師が新しい妖怪を描き、別の絵師が写して性格を加えていったのと、起きていることは変わりません。媒体が絵巻から掲示板に変わっただけです。

創作であることは、この妖怪の価値を下げません。

八尺様をめぐる妖怪のつながり

八尺様が登場する作品

八尺様は、作品を通じて姿が定まった妖怪です。

投稿の文章には細かい姿の描写がありません。白い服、つばの広い帽子、背が高い。それだけです。

その文章をもとに絵が描かれ、映像が作られ、ゲームに登場するうちに、姿が一つに固まっていきました。

江戸時代の妖怪が絵巻によって姿を得たのと、同じことが起きています。同じ経路で生まれた姦姦蛇螺とあわせて、ネット怪談の代表として扱われます。

八尺様が登場する映像

ホラー映像作品

八尺様を題材とした映像作品が複数作られています。

怪談を朗読する動画

掲示板の投稿を読み上げる形の動画が数多く作られ、話が広まる大きなきっかけになりました。

八尺様が登場するゲーム

ホラーゲーム

追いかけてくる存在として、八尺様を題材にした作品が数多く作られています。

同人作品

作者以外の手による続きの話や派生作品が数多く生まれています。

八尺様が登場する絵

投稿された絵

白いワンピースとつばの広い帽子という姿は、投稿の文章をもとに描かれた絵によって定着しました。

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八尺様についてよくある質問

八尺様とは何ですか。

八尺、およそ2メートル40センチほどの背丈を持つとされる女の姿のものです。白い服とつばの広い帽子で語られ、「ぽ、ぽ、ぽ」という低い声を立てるとされます。

八尺様は昔からいる妖怪ですか。

違います。インターネットの掲示板に投稿された怪談が出どころで、それ以前にさかのぼる記録は確認されていません。

八尺様が出る場所はどこですか。

ありません。特定の土地の言い伝えではなく、塚も祠もゆかりの地もありません。話に出てくる「四方を地蔵で囲った土地」は物語の設定です。

なぜ八尺様は怖いのですか。

人の形のまま寸法だけが違うためです。角も牙もなく姿は普通なのに、背丈だけが異常です。わずかに違うものは、まったく違うものより不気味に感じられます。

「ぽ、ぽ、ぽ」とは何ですか。

八尺様が立てるとされる声です。意味のない音であることが、かえって落ち着かなさを生んでいます。

八尺様は創作なのに妖怪といえますか。

いえます。江戸時代の妖怪絵巻にも、絵師が新しく作った妖怪が含まれます。媒体が絵巻から掲示板に変わっただけで、妖怪の生まれ方そのものは変わっていません。

八尺様と併せて覚えたい言葉・用語

(しゃく)

日本の古い長さの単位。一尺はおよそ30.3センチ。八尺は約2メートル42センチ。

結界(けっかい)

土地や場所を区切って、外のものが入らないようにすること。四方に地蔵を置く形が語られる。

ネット怪談(ねっとかいだん)

インターネット上で生まれ、広まった怪談。八尺様はその代表とされる。