無実の罪で首をはねられた男の怨みが、作物を枯らす虫になった。
平四郎虫とはどんな妖怪か
平四郎虫は、山梨県に伝わる伝説です。
山梨県西八代郡六郷町(現・市川三郷町)に伝わり、その伝説中に登場する虫の名でもあります。
始まりは、盗みです。
その昔、葛籠沢のある村で、金持ちの家の土蔵の宝物が盗まれたという騒ぎが起きました。
入口がわかりませんでした。
土蔵には、壁に小さな穴があったものの、子供でも入れないような小ささでした。
そこへ、口を出した男がいます。
平四郎という男が「そんな穴に入るのはわけない」と言い、
穴のふちにゴザをあてがって体をうまく滑らせ、中にもぐりこんで見せました。
平四郎虫の漢字表記と読み方
読みは「へいしろうむし」です。
人の名がそのまま虫の名になっています。
村人は、もう一つの名でも呼びました。
「オオガ虫」です。
この名には、正体の手がかりがあります。
オオガ虫とはカメムシの地方名の一つです。
そこから、平四郎虫の伝説はカメムシによる害が死者の転生と見なされたものとする説もあります。
カメムシは、悪臭を出します。
そして、作物につきます。
話に出る鼻がちぎれるほどの悪臭と、畑という畑の作物を次々に黒く枯らしたという害が、そのまま重なります。
平四郎虫(へいしろうむし)
もっとも一般的な表記。
オオガ虫(おおがむし)
村人たちが呼んだもう一つの名。
オオガ堂(おおがどう)
平四郎の霊を祀った堂の名。
平四郎虫の姿と特徴
平四郎虫の姿は、見たこともない虫とだけ伝わります。
村中に見たこともない虫が現れたといいます。
大きさや色は、記されていません。
わかっているのは、二つのことです。
鼻がちぎれるほどの悪臭を放つ。
畑という畑の作物を次々に黒く枯らしていく。
臭いと、枯らすことです。
さらに被害は近隣の村々にまで及んだといいます。
そして、正体には説があります。
オオガ虫とはカメムシの地方名の一つです。
平四郎虫の伝承物語
できることを見せてしまった
平四郎は、手際を見せました。
土蔵には、壁に小さな穴があったものの、子供でも入れないような小ささでした。
誰も入れないはずでした。
騒ぎを見物していた者たちの中で平四郎という男が「そんな穴に入るのはわけない」と言いました。
言って、やって見せました。
穴のふちにゴザをあてがって体をうまく滑らせ、中にもぐりこんで見せました。
村人たちは驚きました。
そして、噂が回ります。
平四郎は日が経つにつれて土蔵破りの犯人と噂されるようになり、ついに役人に捕らえられてしまいました。
できたことが、証拠にされました。
誰も嘆願しなかった
平四郎は、訴えました。
平四郎は必死に無実を訴えたものの、無実を証明することはできませんでした。
証明できませんでした。
そして、村も動きませんでした。
村人たちも嘆願することはなかったといいます。
誰も助けませんでした。
理由には、別説があります。
平四郎はかつては村人たちと共に働いて暮らしていたが、両親に死なれてから人が変わり、働くのが嫌になっていつも山で遊びほうけるようになったといいます。
そのため、彼が捕らえられた際、村人たちは遊んでばかりの彼に味方しようとしなかったとされます。
そして、言い残します。
役人や村人たちに「必ず怨みを晴らしてやる」と言い残しつつ、首をはねられました。
堂を建てたら鎮まった
翌年から、虫が出ました。
その翌年から、村中に見たこともない虫が現れ、鼻がちぎれるほどの悪臭を放ち、畑という畑の作物を次々に黒く枯らしていきました。
畑が全滅しました。
さらに被害は近隣の村々にまで及びました。
そこで、村は考えを改めます。
人々は平四郎の呪いと恐れ、怨霊を鎮めるために小さな堂を建てて平四郎の霊を祀ると、ようやく怪虫の害は鎮まりました。
祀ると、止まりました。
以来、祭りが続きます。
村人たちは、この怪虫を「平四郎虫」または「オオガ虫」と呼び、
件の堂を「オオガ堂」と名づけ、毎年2月13日に平四郎祭りを行うようになったといいます。
平四郎虫の伝承地域
平四郎虫は、山梨県西八代郡六郷町(現・市川三郷町)の葛籠沢に伝わります。
平四郎を祀ったオオガ堂は、後に住宅地となったために現存しません。
現在は、西八代郡市川三郷町葛籠沢の山際にある薬師堂の中に祠が一緒に祀られています。
平四郎祭りも1月15日に別の神の祭りとともに行われるよう変更されています。
訪ねる際は、現地の案内をご確認ください。
平四郎虫の正体と考えられているもの
平四郎虫については、次のように整理できます。
一つめは、疑われた理由です。穴のふちにゴザをあてがって体をうまく滑らせ、中にもぐりこんで見せたため、土蔵破りの犯人と噂されるようになり、ついに役人に捕らえられてしまいました。
二つめは、見放されたことです。平四郎は必死に無実を訴えたものの、無実を証明することはできず、村人たちも嘆願することはなかったといいます。
三つめは、虫の害です。村中に見たこともない虫が現れ、鼻がちぎれるほどの悪臭を放ち、畑という畑の作物を次々に黒く枯らしていきました。
四つめは、鎮め方です。怨霊を鎮めるために小さな堂を建てて平四郎の霊を祀ると、ようやく怪虫の害は鎮まりました。
五つめは、正体の説です。オオガ虫とはカメムシの地方名の一つであり、平四郎虫の伝説はカメムシによる害が死者の転生と見なされたものとする説もあります。
この話は、村が自分の落ち度を虫の形で覚えたものです。 祭りは今も続いています。
平四郎虫をめぐる妖怪のつながり
平四郎虫が登場する作品
平四郎虫は、村の後悔の記録です。
無実の罪で殺した男の怨みが虫になり、堂を建てて鎮めました。
資料は山梨の郷土の伝えが中心です。
平四郎虫が登場する研究
平四郎虫が登場する漫画・アニメ
怨霊を扱う作品
無実の罪で死んだ者の祟りとして取り上げられます。
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平四郎虫についてよくある質問
平四郎虫とは何ですか。
山梨県西八代郡六郷町(現・市川三郷町)に伝わる伝説で、その伝説中に登場する虫の名でもあります。
なぜ平四郎は捕らえられたのですか。
穴のふちにゴザをあてがって体をうまく滑らせ、中にもぐりこんで見せたため、土蔵破りの犯人と噂されるようになり、ついに役人に捕らえられてしまいました。
虫はどんな害を出しましたか。
鼻がちぎれるほどの悪臭を放ち、畑という畑の作物を次々に黒く枯らしていきました。
いまも祭りがありますか。
平四郎祭りは1月15日に別の神の祭りとともに行われるよう変更されています。オオガ堂は現存せず、薬師堂の中に祠が一緒に祀られています。
平四郎虫と併せて覚えたい言葉・用語
葛籠沢(つづらさわ)
山梨県市川三郷町の地名。
ゴザ(ござ)
藺草などで編んだ敷物。滑らせるのに使った。
カメムシ(かめむし)
悪臭を出す昆虫。作物につく。