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全国に伝わるもの

小豆婆(あずきばばあ)とはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品

小豆婆  / アズキババ

人型の妖怪 各地の伝説

小豆をとぐ音を立てる老婆。子を脅かす妖怪として語られた。

小豆婆とはどんな妖怪か

小豆婆は、小豆をとぐ音を立てる老婆です。小豆磨ぎ婆(あずきとぎばばあ)ともいいます。

宮城県から関東地方にかけて伝わり、地域によって伝承が異なります。

小豆洗いと同じように、小豆をとぐ音をたてます。

そして、指摘があります。

小豆洗いとは別の妖怪ではなく、小豆洗いの正体を地域によっては婆として小豆婆と呼んだとする説です。

同じものかもしれません。

そして、この妖怪には役目がありました。

埼玉県川越市では、親が子に「小豆婆に襲われるぞ」と語っていたといいます。

子どもを叱るための妖怪です。

小豆婆の漢字表記と読み方

読みは「あずきばばあ」です。

小豆をとぐ婆。 動作と、姿が名前になっています。

磨ぐ」(とぐ)は、水の中でこすり洗いすることです。米を磨ぐ、小豆を磨ぐ。

その音が、ざあざあと聞こえます。

そして、地方によって呼び名が変わります。

小豆磨ぎ婆様(栃木県芳賀郡)、小豆磨ぎ婆さん(群馬県)、小豆そぎ婆(山梨県)、小豆洗い婆(宮城県)。

「婆」がつくのが共通しています。

小豆洗いのほうは、正体が定まっていません。 小豆婆は、老婆と決まっています。

小豆婆(あずきばばあ)

もっとも一般的な表記。

小豆磨ぎ婆(あずきとぎばばあ)

栃木県芳賀郡、群馬県などでの呼び名。

小豆そぎ婆(あずきそぎばば)

山梨県北巨摩郡での呼び名。

小豆洗い婆(あずきあらいばば)

宮城県富谷市西成田での呼び名。

小豆婆の姿と特徴

小豆婆は、地域によって現れ方が違います。

埼玉県川越市 … 下小坂村の廃寺で、雨の降りそうな夕方に小豆の音を立てる。
群馬県 … 高崎城跡の堀端で歌う。
東京都 … 秋の月夜、小川からかすれ声。夜明けに白装束姿でざるを抱えた老婆が霧の中へ消える。
山梨県北巨摩郡 … 諏訪神社近くのアマンドウの大木の上から呼びとめる。
宮城県富谷市西成田 … 日暮れの小川に老婆の姿で現れる。

白装束にざる。

東京都の話では、夜明けには白装束姿でざるを抱えた老婆が霧の中へ消えていったといいます。

ざるは、小豆を磨ぐ道具です。

そして、山梨では木の上にいます。

小豆婆の伝承物語

  1. しょきしょき
  2. 子を叱る妖怪
  3. 小豆おあんなすって
  4. ひとつぶ、ふたつぶ

しょきしょき

群馬県では、小豆婆は歌います。

高崎城跡の堀端で小豆を磨ぐ音をたてて、こう歌ったといいます。

「小豆磨ぎやしょか、人取って食いやしょか、しょきしょき」

小豆を磨ごうか、人を取って食おうか。

選ばせています。

そして「しょきしょき」は、小豆を磨ぐ音です。

歌の途中に、実際の音が混ざります。

そこを通ろうとすると、周りが明るい光に包まれてしまうといいます。

しかし、防ぎ方があります。

親指を握って気を静めると、その光は消えるとされます。

親指を握る。 呪いを避ける所作として、各地にあります。

子を叱る妖怪

小豆婆には、はっきりした役目がありました。

子どもを叱ることです。

埼玉県川越市では、親のいいつけを守らない子供に対して、親が「小豆婆に襲われるぞ」と語っていたといいます。

神奈川県横浜市都筑区川和町でも、埼玉県同様に子脅しの妖怪として、小豆磨き婆の名で語られています。

栃木県には、変わった例があります。

佐野市の龍江院所有の木造エラスムス像(貨狄尊者)が、この妖怪に準えられ、親が悪童を窘めていた伝承が遺ります。

エラスムス像は、オランダ船の船尾像でした。

日本人の見慣れない顔立ちの木像が、小豆婆に見立てられました。

実物があると、脅しは効きます。

小豆おあんなすって

山梨県北巨摩郡清春村中丸柿木平(現・北杜市)の話は、独特です。

小豆そぎ婆といいます。

諏訪神社の近くにあるアマンドウの大木の上にいて、毎晩ザアザアと音をたてます。

そして、通行人にこう話しかけて呼びとめます。

「小豆おあんなすって」

小豆を食べて行け、という意味です。

丁寧です。

しかし、その者が驚いてうろたえていると、大きなざるですくい上げられてしまうといいます。

上から、すくわれます。

妖怪研究家・村上健司は、同様に木の上から人をすくい上げるとされる妖怪・釣瓶落としと関連性があるものとみています。

木の上にいる、という一点が同じです。

ひとつぶ、ふたつぶ

東京都の話は、静かです。

秋の月夜。

小川から、こんなかすれ声が聞こえます。

「小豆 ひとつぶ、小豆 ふたつぶ ささ なむ……」

数えています。

そして、夜明けには白装束姿でざるを抱えた老婆が、霧の中へと消えていったといいます。

姿を見たのは、明け方です。

弘法大師伝説の残る青梅市の男井戸女井戸にも、小豆婆が現れたといわれます。

宮城県富谷市西成田では、小豆洗いと同様の妖怪です。

小豆洗い婆と呼ばれ、日暮れの小川に老婆の姿で現れます。狐が正体だといわれます。

群馬県利根郡昭和村では、正体はムジナやイタチとされます。

小豆婆の伝承地域

小豆婆は、宮城県から関東地方にかけて伝わります。

埼玉県川越市 … 下小坂村の廃寺で音を立てたといいます。
栃木県佐野市龍江院所有の木造エラスムス像(貨狄尊者)が、この妖怪に準えられました。
群馬県高崎城跡の堀端で歌ったといいます。
東京都青梅市 … 弘法大師伝説の残る男井戸女井戸にも現れたといわれます。
山梨県北杜市(旧・北巨摩郡清春村中丸柿木平) … 諏訪神社の近くのアマンドウの大木の上にいたといいます。
宮城県富谷市西成田 … 日暮れの小川に現れるといいます。

いずれも広い範囲にわたる伝えであり、小豆婆そのものを祀った碑や祠は確かめられていません。 この欄は空のままにしてあります。

小豆婆の正体と考えられているもの

小豆婆の正体については、次のように整理できます。

一つめは、小豆洗いと同じものです。小豆洗いとは別の妖怪ではなく、小豆洗いの正体を地域によっては婆として小豆婆と呼んだとする説があります。

二つめは、獣です。宮城県富谷市西成田では、群馬県利根郡昭和村ではムジナやイタチが正体といわれます。

三つめは、子脅しです。埼玉県川越市や神奈川県横浜市都筑区川和町では、親のいいつけを守らない子供に対して親が「小豆婆に襲われるぞ」と語っていたといいます。

四つめは、釣瓶落としの類です。山梨県では木の上から大きなざるですくい上げるとされ、村上健司は釣瓶落としとの関連性を見ています。

五つめは、木像です。栃木県佐野市では、龍江院所有の木造エラスムス像がこの妖怪に準えられ、親が悪童を窘めていました。

小豆婆が何であったかは、わかっていません。 ただ、小豆を磨ぐ音という日常の音が、この妖怪の出発点にあります。

小豆婆をめぐる妖怪のつながり

小豆婆が登場する作品

小豆婆は、土地ごとに話の違う妖怪です。

宮城、栃木、群馬、埼玉、東京、神奈川、山梨。それぞれに別の話があります。 呼び名も、小豆磨ぎ婆、小豆そぎ婆、小豆洗い婆と分かれます。

資料は各地の民俗の記録が中心です。

小豆婆が登場する研究

妖怪事典

村上健司編著、2000年。各地の伝承を整理し、釣瓶落としとの関連を指摘しています。

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綜合日本民俗語彙

民俗学研究所。小豆磨ぎ婆を収めています。

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小豆婆が登場する漫画・アニメ

ゲゲゲの鬼太郎

小豆婆が登場します。小豆を磨ぐ老婆として描かれます。

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妖怪をまとめて扱う作品

小豆洗いと並べて取り上げられます。

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小豆婆についてよくある質問

小豆洗いとは違うのですか。

小豆洗いとは別の妖怪ではなく、小豆洗いの正体を地域によっては婆として小豆婆と呼んだとする説があります。 音を立てるという点は共通します。

どんな歌を歌うのですか。

群馬県では、高崎城跡の堀端で小豆磨ぎやしょか、人取って食いやしょか、しょきしょきと歌ったといいます。そこを通ろうとすると周りが明るい光に包まれますが、親指を握って気を静めるとその光は消えるとされます。

子どもを脅かす妖怪ですか。

そうです。 埼玉県川越市では、親のいいつけを守らない子供に対して、親が「小豆婆に襲われるぞ」と語っていたといいます。神奈川県横浜市都筑区川和町でも子脅しの妖怪として語られました。

山梨の話はどんなものですか。

諏訪神社近くのアマンドウの大木の上にいて、通行人に「小豆おあんなすって」と話しかけて呼びとめ、驚いてうろたえていると大きなざるですくい上げられてしまうといいます。

小豆婆と併せて覚えたい言葉・用語

磨ぐ(とぐ)

水の中でこすり洗いすること。米や小豆を磨ぐ。

エラスムス像(えらすむすぞう)

栃木県佐野市の龍江院にある木像。オランダ船の船尾像で、貨狄尊者とも呼ばれる。

子脅し(こおどし)

子どもを叱るために持ち出される妖怪や言い伝え。