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全国に伝わるもの

べとべとさんとはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品

べとべとさん  / ベトベトサン

人型の妖怪 各地の伝説

夜道で後をつけてくる足音。「お先にお越し」と唱えると離れる。

べとべとさんとはどんな妖怪か

べとべとさんは、日本の妖怪の一種です。夜道を歩く人間の後をつけてくるといわれます。

奈良県宇陀郡では暗い夜道で遭うといい、静岡県では小山を降りてくるときに遭うといいます。

足音がするのみで、人に危害を加えることはないとされます。

そして、対処法がはっきり伝わっています。足音を不気味に感じるときには、道の片側に寄って、こう唱えます。

べとべとさん、お先にお越し

奈良県ではこう唱え、静岡県では「お先にお越し」「お先にどうぞ」などと唱えます。そうすれば、ついてきた人間から離れるといいます。

本来は音だけで、姿の見えない存在です。

妖怪漫画家の水木しげるは、「この妖怪と思われるものと遭遇したことがある」と語っています。

べとべとさんの漢字表記と読み方

読みは「べとべとさん」です。

べとべとは、足音を表す言葉と考えられます。ぺたぺた、べたべたと同じく、裸足や草履で歩く音を写したものでしょう。

さんが付いていることが、この妖怪の性格をよく表しています。

呼びかけるときに敬称を使う。

べとべとさん、お先にお越し

恐ろしいものに、丁寧に道を譲る。これがべとべとさんへの接し方です。追い払うのでも、逃げるのでもありません。

先にお通りくださいと言うのです。

日本の妖怪への対処法には、こうした形が数多くあります。争わず、譲り、やり過ごす。

水木しげるの地元である鳥取県では、境線の米子空港駅の愛称が「べとべとさん」駅になっています。

べとべとさん(べとべとさん)

もっとも一般的な表記。

ベトベトサン(べとべとさん)

片仮名での表記。

べとべとさんの姿と特徴

べとべとさんは、姿が見えません。

本来は音だけの存在です。 足音がするのみで、振り返っても何もいません。

現在よく知られている姿は、水木しげるによるものです。

丸い頭部に足が生えた格好。
微笑んだような愛嬌のある口が、大きく開いている。

この図像化された姿は、伝承をもとに水木が想像したものです。

水木は、これを漫画の登場人物としてではなく、正式に妖怪画集でも図像化・解説しています。映像作品にも登場しました。

水木自身も少年時代に「べとべとさん」の体験をしています。怖くて後ろを振り返れなかったといいます。妖怪のことをいろいろ教えてくれた「のんのん婆」(本名・景山ふさ)から聞かされた対処法も、水木の著書や漫画に記されています。

水木の体験と、のんのん婆からの教えが、画集や漫画のイメージにつながりました。

消えるときの仕草や図像化された姿から、愛らしさを感じる人が多く、人気のある妖怪のひとつです。

べとべとさんの伝承物語

  1. お先にお越し ─ 譲るという対処法
  2. 水木しげるの体験
  3. 愛される妖怪

お先にお越し ─ 譲るという対処法

べとべとさんの対処法は、日本の妖怪のなかでもとりわけ穏やかです。

夜道を歩いていると、後ろから足音がついてきます。振り返っても誰もいません。

そんなとき、道の片側に寄って、こう唱えます。

べとべとさん、お先にお越し

静岡県では「お先にお越し」「お先にどうぞ」などと唱えます。

すると、ついてきた人間から離れるといいます。

追い払うのでも、逃げるのでもありません。道を譲るのです。

しかも、敬称を付けて呼びかけます。

この対処法には、日本の妖怪への向き合い方がよく出ています。争わない。譲る。やり過ごす。

海坊主に底を抜いた柄杓を渡すのも、船幽霊に握り飯を投げるのも、同じ発想です。何かを差し出して、その場を離れてもらう。

そして、べとべとさんは害をなしません。 足音がするだけです。

怖いのは、正体がわからないことだけです。

水木しげるの体験

べとべとさんについて語るとき、水木しげるを抜かすことはできません。

水木は、「この妖怪と思われるものと遭遇したことがある」と語っています。

少年時代の体験でした。怖くて後ろを振り返れなかったといいます。

水木に妖怪のことをいろいろ教えてくれたのが、「のんのん婆」(本名・景山ふさ)です。べとべとさんに出会ったときの対処法も、のんのん婆から聞かされました。

この体験と教えが、後に水木の妖怪画集や漫画のイメージにつながります。

水木が描いたべとべとさんは、丸い頭部に足が生えた格好で、微笑んだような愛嬌のある口が大きく開いている姿です。

伝承には姿がありません。 水木は自分の体験と、のんのん婆の話から、この姿を想像しました。

本人が体験した妖怪を、本人が絵にした。 これは珍しいことです。

水木の地元である鳥取県では、境線の米子空港駅の愛称が「べとべとさん」駅になっています。

愛される妖怪

べとべとさんは、日本の妖怪のなかでとりわけ好かれています。

理由は、いくつかあります。

一つめは、害がないことです。足音がするだけで、危害を加えません。

二つめは、対処法が丁寧なことです。「お先にお越し」と譲れば離れます。争いになりません。

三つめは、姿です。水木しげるが描いた、丸い頭に足が生えて、大きく開いた口が微笑んでいるような姿。消えるときの仕草も含めて、愛らしさを感じる人が多いといいます。

鳥取県境港市の水木しげるロードには、同じデザインのブロンズ像があります。「かわいい」と声をかける女性もおり、観光客がお参りに似た気分で口に賽銭を入れることも多いといいます。

妖怪の口に賽銭を入れる。

境港市の観光協会による妖怪人気の調査でも、べとべとさんは上位に入ります。

恐ろしい伝承を持たない妖怪が、最も愛される。これは日本の妖怪の受け取られ方をよく示しています。

べとべとさんの伝承地域

べとべとさんには、訪ねられる伝承地がありません。

伝承のある土地としては、奈良県宇陀郡(暗い夜道で遭う)と静岡県(小山を降りてくるときに遭う)が挙げられます。

しかし、いずれも「夜道」です。 出るのは夜道そのものです。

べとべとさんは、道そのものについてくる妖怪です。 目印の残る場所はありません。

なお、鳥取県境港市の水木しげるロードには、水木しげるが描いたべとべとさんのブロンズ像があります。ただしこれは水木しげるの作品にもとづく像です。奈良県や静岡県の伝承とは別のものです。

また、境線の米子空港駅の愛称が「べとべとさん」駅になっています。これも水木しげるの地元だからです。

無い場所を、あるように書くことはしません。この欄は空のままにしてあります。

べとべとさんの正体と考えられているもの

べとべとさんの正体については、次の見方があります。

一つめは、自分の足音です。夜道では、自分の足音が反響して、後ろから聞こえることがあります。 静かな道ほど、はっきり聞こえます。振り返っても誰もいないのは、当然です。

二つめは、獣です。夜道で人の後をついてくる獣は、実際にいます。狸、狐、犬、猫。姿は見えなくても、足音はします。

三つめは、風や落ち葉です。風が落ち葉を動かす音は、足音によく似ています。

四つめは、後ろへの不安です。夜道で背後は見えません。振り返っても暗くて何も見えない。 その不安が、足音を生みます。

そして、この妖怪の伝承には実際的な意味もあります。

道の片側に寄って、先を譲る。

これは、夜道で人とすれ違うときの作法そのものです。暗い道で誰かの気配がしたら、道を譲る。そうすれば、争いも事故も起こりません。

べとべとさんが何であったかは、決められていません。 ただし、この妖怪が人に何をさせたかははっきりしています。夜道で、落ち着いて、道を譲らせました。

べとべとさんをめぐる妖怪のつながり

べとべとさんが登場する作品

べとべとさんは、水木しげるが姿を与え、そのまま愛された妖怪です。伝承には姿がなく、音だけの存在でした。

丸い頭に足が生え、大きく開いた口が微笑んでいるような姿。 この造形が、多くの人に好まれました。

恐ろしい伝承を持たないことが、そのまま人気につながっています。 鳥取県境港市の妖怪人気の調査でも上位に入ります。

べとべとさんが登場する記録

奈良県宇陀郡の伝承

暗い夜道で遭うとされ、「べとべとさん、お先にお越し」と唱える対処法が伝わります。

静岡県の伝承

小山を降りてくるときに遭うとされ、「お先にお越し」「お先にどうぞ」と唱えます。

べとべとさんが登場する漫画・アニメ

ゲゲゲの鬼太郎

べとべとさんが登場します。現在知られている姿はこの作品によるものです。

Amazonで本・漫画を探す

のんのんばあとオレ

水木しげるの自伝的作品です。妖怪を教えてくれたのんのん婆との日々が描かれます。

コミック昭和史

水木しげるの作品です。べとべとさんが登場します。

べとべとさんが登場する映像・その他

ゲゲゲの女房

テレビドラマです。べとべとさんが登場します。

水木しげるロード

鳥取県境港市の通りです。べとべとさんのブロンズ像があり、口に賽銭を入れる人も多いといいます。

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べとべとさんについてよくある質問

べとべとさんとは何ですか。

夜道を歩く人間の後をつけてくるとされる妖怪です。足音がするのみで、人に危害を加えることはありません。

べとべとさんに出会ったらどうすればよいのですか。

道の片側に寄って、「べとべとさん、お先にお越し」と唱えます。そうすれば、ついてきた人間から離れるといいます。

べとべとさんはどんな姿ですか。

本来は音だけで、姿の見えない存在です。丸い頭部に足が生えた姿は、水木しげるが伝承をもとに想像したものです。

なぜ「さん」が付いているのですか。

呼びかけるときに敬称を使うためです。追い払うのでも逃げるのでもなく、丁寧に道を譲るというのが、この妖怪への接し方です。

べとべとさんに会える場所はありますか。

伝承地はありません。奈良県宇陀郡や静岡県に伝承があります。いずれも出るのは「夜道」で、一つの地点には結びつきません。鳥取県境港市の水木しげるロードにはブロンズ像があります。

べとべとさんと併せて覚えたい言葉・用語

のんのん婆(のんのんばあ)

水木しげるに妖怪のことを教えた女性。本名は景山ふさ。

水木しげるロード(みずきしげるロード)

鳥取県境港市の通り。妖怪のブロンズ像が並ぶ。

お先にお越し(おさきにおこし)

べとべとさんに道を譲るときに唱える言葉。