秋田県仙北地方で、生垣を激しく揺すり、小豆とぎのすぐそばにいると記録された音の怪異。

掬茶 「雪の武家屋敷通り(秋田県仙北市角館町)」 2012年 / CC BY-SA 3.0 出典
くねゆすりとはどんな妖怪か
くねゆすりは、生垣を激しく揺するものです。秋田県仙北地方の記録です。国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースでは、武藤鐵城「音と民俗(秋田県仙北郡角館附近)」を典拠とし、呼称を「クネユスリ」、漢字表記を「クネ揺すり」としています。
記録の核心は短く、姿や顔ではなく、生垣が揺れるという出来事で識別されます。しかも、ほかの怪異と並べて記されています。小豆をとぐような音を立てる「小豆とぎ」のすぐそばにいると整理されています。
したがって、くねゆすりと小豆洗いは別の名として扱います。資料上は、生垣を揺するものと、小豆をとぐ音を立てるものが隣り合う構図です。一方で、二体が会話する、協力して人を襲う、同じ姿を持つといった物語は確認できません。
姿・害・退け方は記録されていません。そのため、くねゆすりの正体を風、獣、幽霊のいずれかに特定する根拠はなく、伝承に残るのは生垣が激しく揺れる現象です。
くねゆすりの漢字表記と読み方
読みは「くねゆすり」です。「揺すり」は、生垣を揺するという記録上の動作に対応します。
日文研データベースの漢字表記は「クネ揺すり」で、要約にも「生垣を激しく揺する化物」とあります。ただし、「クネ」という語の意味や命名の由来は説明されておらず、呼称がいつ、どのように成立したかは分かっていません。
クネ揺すり(くねゆすり)
日文研データベースが示す漢字交じりの呼称。
クネユスリ(くねゆすり)
同データベースの呼称読み。
くねゆすり(くねゆすり)
一般的な平仮名表記。
くねゆすりの姿と特徴
くねゆすりの記録には、人や獣の姿が与えられていません。見えるのは揺れる生垣だけです。
顔、手足、体格、色、鳴き声に関する記述はなく、小豆とぎのそばにいるという位置関係から両者の姿が同じだとも判断できません。くねゆすりは、何者かの姿ではなく、生垣に起きた異変を通して語られます。
この「姿がない」点は欠落ではなく特徴です。家や畑の境にある生垣が、誰も触れていないのに激しく動くという現象そのものが、くねゆすりの姿に当たります。
くねゆすりの伝承記録
武藤鐵城「音と民俗」に記録されたくねゆすり
くねゆすりを確認できる中心資料は、武藤鐵城の「音と民俗(秋田県仙北郡角館附近)」です。日文研データベースによれば、『旅と伝説』11巻7号・通巻127号、1938年発行で、該当箇所は30頁です。
論文名が示すように、焦点は目撃された怪物の形ではなく、土地で意味づけられた音です。生垣が揺れる音を、単なる物音ではなく呼称を持つ存在として整理している点に価値があります。
記録は短いものの、発行年、掲載誌、頁が明らかなため、伝承の来歴をたどれます。そこから確認できるのは、生垣を揺すること、小豆とぎの近くにいること、角館周辺で採録されたことです。
小豆とぎの「すぐそば」にいる二つの音
日文研の要約は、くねゆすりが小豆とぎのすぐそばにいると明記します。この一文から分かるのは、二つの怪異が地理的に近く語られたことです。
小豆とぎは、小豆を水でとぐような音によって知られます。くねゆすりは、生垣を揺する動きと音で知られます。日文研の要約は、異なる二つの音を別々の呼称で記録しています。
ただし「そばにいる」という記述だけでは、主従、親子、仲間といった関係までは分かりません。近接して語られる一方、生垣を揺するものと小豆をとぐ音を立てるものは別々に呼ばれています。
くねゆすりは姿を見せず、生垣だけを揺らす
生垣は風でも揺れ、鳥や小動物が入り込んでも音を立てます。しかし、角館周辺で語られた体験が、どの現象から生まれたのかは分かっていません。
伝承では、くねゆすりが人を追う、傷つける、家へ入るとは語られません。対処法、禁句、出現時刻も伝わっておらず、怪異の存在は激しく揺れる生垣によって示されます。
生垣を揺する・小豆とぎのそばにいる・秋田県仙北地方に伝わる・1938年の記録に残るという四点が、くねゆすりをほかの音の怪異から見分ける手がかりです。
くねゆすりの伝承地域
公的データベースの地域欄は、秋田県仙北市角館町を示します。これは伝承を採録した地域の手がかりです。
資料には、旧村名より細かな採録地点や個人宅の記載はありません。地図が示すのは角館町周辺という伝承地域です。
角館町周辺(かくのだてまちしゅうへん)
日文研データベースが示す伝承地域
角館町周辺の所在地:秋田県仙北市角館町
武藤鐵城「音と民俗」の地域欄に対応する範囲です。
資料には特定の住宅、生垣、道路の記載はありません。
くねゆすりの正体と考えられているもの
くねゆすりの正体は確定していません。記録が扱うのは姿を持つ生物ではなく、生垣を揺する原因不明の動きです。
家と外、耕地と道を分ける生垣は、人の生活圏の境にあります。その境がひとりでに動けば、姿が見えなくても、すぐ向こう側に何者かがいるように感じられます。
小豆とぎと並べて記録されたことで、生垣を揺する音と小豆をとぐような音に別々の名が与えられていたことが分かります。二つの生活音を二つの怪異として聞き分けた伝承です。
くねゆすりをめぐる妖怪のつながり
くねゆすりが記録された資料
くねゆすりを記録した武藤鐵城「音と民俗(秋田県仙北郡角館附近)」は、『旅と伝説』11巻7号・通巻127号に掲載されました。
CiNii Researchでは、通巻127号から132号を収めた復刻版第22巻の書誌・所蔵情報を確認できます。くねゆすりの記述を探す際は、論文名と通巻127号が手がかりになります。
くねゆすりが記録された民俗資料
音と民俗(秋田県仙北郡角館附近)
武藤鐵城が『旅と伝説』11巻7号へ発表した中心資料です。
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くねゆすりについてよくある質問
くねゆすりとはどんな妖怪ですか。
秋田県仙北地方で、生垣を激しく揺するものとして記録された怪異です。姿ではなく生垣の動きと音によって知られ、小豆とぎのすぐそばにいると記されています。
くねゆすりと小豆洗いは同じ妖怪ですか。
同じものとは書かれていません。中心資料の要約では、小豆をとぐ音を立てる小豆とぎのすぐそばに、別に生垣を揺するくねゆすりがいるという関係です。
くねゆすりはどこに伝わりますか。
日文研データベースは秋田県仙北市角館町を地域欄に挙げます。ただし、特定の家や生垣まで示す記録ではないため、市街の一点を出現場所にはできません。
くねゆすりの姿や正体は分かっていますか。
確認した中心記録には姿、顔、手足、正体が書かれていません。風や動物で生垣が揺れた可能性は考えられても、一つの原因だったと断定する根拠はありません。
くねゆすりと併せて覚えたい言葉・用語
旅と伝説(たびとでんせつ)
くねゆすりの中心記録「音と民俗」が掲載された雑誌。
小豆とぎ(あずきとぎ)
小豆をとぐような音を立てるとされ、くねゆすりのすぐそばにいる別の怪異。
角館(かくのだて)
日文研データベースが伝承地域として示す秋田県仙北市の地域。
くねゆすりの参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。