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島根県

七尋女房(ななひろにょうぼう)とはどんな妖怪か|姿と伝承

七尋女房  / ナナヒロニョウボウ

人型の妖怪 各地の伝説

身長または首が七尋(約12.6メートル)もある巨大な女。斬られて石になったという。

七尋女房の姿を描いた図

松岡明芳 「鍵掛峠から望む大山(鳥取県江府町)」 2007年 / CC BY-SA 3.0 出典

七尋女房とはどんな妖怪か

七尋女房は、巨大な女の妖怪です。

島根県東部(出雲地方、隠岐地方)、鳥取県中西部(伯耆地方)に伝わります。

名が、大きさを表しています。

名称のとは尺貫法における長さの単位であり、身長または首が7尋(約12.6メートル)もあるといわれます。

十二メートル以上です。

土地によって、姿も振る舞いも違います。

島根町(現・松江市)では、浜地区の境の山から海岸の島にまたがって現れ、長い髪を垂らし、黒い歯をむき出し、道を行く人に笑いかけたといいます。

安来市の七尋女房はたいへん美しく、7尋もの長い衣を引きずって物乞いをして歩いていたといいます。

七尋女房の漢字表記と読み方

読みは「ななひろにょうぼう」です。「ななひろにょば」ともいいます。

は、尺貫法の長さの単位です。 一尋はおよそ1.8メートルにあたります。

七尋で、約12.6メートルです。

もとは、両手を広げた長さです。

縄や水深を測るときに使われた単位で、海と縁の深い数え方です。

そして、この妖怪は海辺に多く現れます。

隠岐、島根町の浜、安来。 どれも海に近い土地です。

「七丈女」と書けば、およそ21メートルになります。

七尋女房(ななひろにょうぼう)

もっとも一般的な表記。

七尋女房(ななひろにょうば)

海士町での言い方。七尋女婆とも書く。

七尋女(ななひろおんな)

鳥取の州川崎での呼び名。

七丈女(ななたけおんな)

丈で言い換えた形。

七尋女房の姿と特徴

七尋女房の姿は、土地によって違います。

隠岐郡海士町巨大な女。気味悪く笑う。斬られて石と化した
海士町(女婆)髪を振り乱して現れた。斬ると消え、石仏の首がなくなっていた
島根町(現・松江市) … 長い髪を垂らし、黒い歯をむき出し、道を行く人に笑いかける。
安来市たいへん美しく、7尋もの長い衣を引きずって物乞いをする。
鳥取・赤碕町青白い顔に長い髪を垂らし、悲しそうな声で歌いながら米を研ぐ。

恐ろしいものと、美しいものがあります。

鳥取の州川崎では首が7尋も伸びるとされ、背丈ではなく首が伸びます。

七尋女房の伝承物語

  1. 斬られて石になる
  2. 石仏の首がなくなる
  3. 小豆三升に米三合

斬られて石になる

隠岐の海士町に、織田信長の時代の伝説があります。

ある男が馬に乗って道を行く途中、何者かが石を投げつけてきました

刀を手にしてそちらへ向かいます。

すると、巨大な七尋女房が立ち塞がっていました

七尋女房は気味悪く笑い、川下で洗濯をしようとします。

そこで男はやり過ごすと見せかけ、刀で斬りつけました

七尋女房は顔に傷を負って飛び上がり、そのまま石と化しました。

この男の子孫とされる海士町西地区の中畑という家では、その伝説にまつわる刀と馬具が家宝とされていたといいます。

そして、石が残りました。

海士町日ノ津の山道にある奇石・女房ヶ石は、この七尋女房が石化したものといわれ、高さ6メートル、幅3メートルもあり、しかも少しずつ大きくなっているといいます。

石仏の首がなくなる

海士町には、もう一つの話があります。

七尋女房は「七尋女婆」とも呼ばれていました。

あるとき、こういうことがありました。

布施村に住む庄屋が馬に乗って石仏道を進んでいたところ、七尋女婆が髪を振り乱して現れたので、刀で斬りつけました。

すると、七尋女婆は消えます。

そばにあった石仏の首がなくなっており、肩口に斬られた跡があったといいます。

斬ったのは石仏でした。

この形の話は、各地にあります。

夜道で化け物を斬ったつもりが、翌朝そこにあったのは石であったり、木であったりする。

暗さと、恐怖と、刀の重さが重なると、こうなります。

小豆三升に米三合

鳥取の七尋女房は、歌います。

東伯郡赤碕町(現・琴浦町)梅田に現れ、青白い顔に長い髪を垂らし、悲しそうな声でこう歌いながら米を研いでいたといいます。

「小豆三升に米三合、御れい様には米がない」

小豆を研ぐ音をたてたという説もあります。

小豆洗いに近い形です。

鳥取の州川崎では、また違います。

七尋女といい、桜の古木の下に、首が7尋も伸びる妖怪が現れたといいます。

戦国時代の伝説では、正体が語られます。

おみさという女性がある男性と愛し合っていましたが、彼には親が決めた婚約者がいたことから、それを悲嘆して日野川の淵に身を投げて蛇身の淵の主となりました。

洪水で住処の淵が埋まったため、陸に上がってカシの木に姿を変えます。

これが日野郡江府町にある県指定天然記念物・七色樫で、七尋女の正体はこのおみさとも噂されました。

七尋女房の伝承地域

七尋女房は、島根県東部(出雲地方、隠岐地方)と鳥取県中西部(伯耆地方)に伝わります。

島根県隠岐郡海士町日ノ津の山道にある奇石・女房ヶ石は、七尋女房が石化したものといわれます。高さ6メートル、幅3メートルもあり、少しずつ大きくなっているといいます。
島根県松江市(旧・島根町) … 浜地区の境の山から海岸の島にまたがって現れたといいます。
島根県安来市市内の本田藪付近乙御前の塚という塚があり、七尋女房にまつわるものといわれます。
鳥取県琴浦町(旧・赤碕町)梅田 … 米を研ぎながら歌ったといいます。
鳥取県日野郡江府町県指定天然記念物・七色樫があり、七尋女の正体とされるおみさが姿を変えたものと噂されました。

訪ねる際は、現地の案内に従ってください。

七色樫(なないろがし)

七尋女の正体とされたシラカシの古木

地図で開く

七色樫の所在地:鳥取県日野郡江府町大字武庫

戦国時代の悲恋の伝説にまつわるシラガシの古木です。

季節によって葉の色がさまざまに変わることから、この名がついたとも伝えられます。

七尋女の正体とされる「おみさ」が姿を変えたものと噂されました。

七尋女房の正体と考えられているもの

七尋女房については、次のように整理できます。

一つめは、大きさです。は尺貫法の長さの単位で、身長または首が7尋(約12.6メートル)もあるとされます。

二つめは、石です。隠岐では斬られて石と化したといい、女房ヶ石が残ります。 別の話では斬ったのは石仏で、その首がなくなっていました。

三つめは、美しい女です。安来市の七尋女房はたいへん美しく、長い衣を引きずって物乞いをして歩いたといいます。

四つめは、恋の恨みです。鳥取のおみさは、婚約者のいる男を愛して日野川の淵に身を投げ、蛇身の淵の主となり、やがて七色樫になったと噂されました。

七尋女房が何であったかは、わかっていません。 ただ、大きさだけが名になっているという点は、どの土地でも変わりません。

七尋女房をめぐる妖怪のつながり

七尋女房が登場する作品

七尋女房は、土地に石を残した妖怪です。

隠岐の女房ヶ石、安来の乙御前の塚、江府町の七色樫。 話のあとに、見に行けるものが残っています。

資料は島根・鳥取の郷土の記録が中心です。

七尋女房が登場する研究

妖怪事典

村上健司編著、2000年。出雲・隠岐・伯耆の伝承を整理しています。

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綜合日本民俗語彙

各地の民俗語を集めた辞典。七尋・尋の語が引けます。

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七尋女房が登場する古典

三州奇談

江戸時代の奇談集。顔が一丈もある大女「長面妖女」の話があり、七尋女房と比べられます。

七尋女房が登場する漫画・アニメ

妖怪をまとめて扱う作品

巨大な女の妖怪として、大女や高女と並べて取り上げられます。

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七尋女房についてよくある質問

七尋とはどれくらいですか。

は尺貫法における長さの単位で、一尋はおよそ1.8メートルです。七尋で約12.6メートルになります。

女房ヶ石とは何ですか。

海士町日ノ津の山道にある奇石で、七尋女房が石化したものといわれます。高さ6メートル、幅3メートルもあり、少しずつ大きくなっているといいます。

石仏の話とは何ですか。

布施村の庄屋が石仏道で七尋女婆に斬りつけると、七尋女婆は消え、そばにあった石仏の首がなくなっており、肩口に斬られた跡があったというものです。

鳥取の七尋女房は何をしますか。

青白い顔に長い髪を垂らし、悲しそうな声で「小豆三升に米三合、御れい様には米がない」と歌いながら米を研いでいたといいます。小豆を研ぐ音をたてたという説もあります。

七尋女房と併せて覚えたい言葉・用語

(ひろ)

尺貫法の長さの単位。両手を広げた長さで、およそ1.8メートル。

女房ヶ石(にょうぼうがいし)

海士町日ノ津の奇石。七尋女房が石化したものという。

七色樫(なないろかし)

鳥取県日野郡江府町の県指定天然記念物のカシ。