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熊本県

アリエ(ありえ)とはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品

アリエ  / アリエ

予言獣 各地の伝説

明治の新聞に載った予言獣。海の鱗獣の頭領を名乗り、豊年と流行病を告げた。

アリエの姿を描いた図

作者不明 「アリエ」 1876年 / パブリックドメイン 出典

アリエとはどんな妖怪か

アリエは、予言獣です。

明治時代前期に話題が見られ、海中から出現をして吉凶にまつわる予言めいたことを言い残したとされます。

新聞に載っています。

明治9年(1876年)、「アリエと称する図を家々で信心する者が出た地方があるらしいが、このような行動は迷信である」という内容の新聞記事が、『山梨日日新聞』や、それを転載した『長野新聞』に見られます。

図に、由来の話が付いていました。

肥後国青鳥郡の海に、夜になると鱗を光らせる妖怪が出現しました。 旧熊本藩の柴田という士族が正体を探りに出たところ、妖怪は海にすむ鱗獣の首魁アリエであると語ったといいます。

アリエの漢字表記と読み方

読みは「ありえ」です。

同じ型の名が、いくつも並びます。

アマビコアマビエ尼彦入道海出人 アリエもその一つです。

湯本豪一は、登場する単語などの類似性から、アマビコ・アマビエに類するものであると指摘しています。

そして、これは繰り返し現れました。

明治時代前期に同様の瓦版の類が周期的に出まわっていた例の1つであると見られています。

名が少しずつ違い、話の骨は同じです。

海から出て、豊年と流行病を告げ、絵を写して信心せよという。

アリエ(ありえ)

もっとも一般的な表記。

ありえ(ありえ)

ひらがなで書くこともある。

アリエの姿と特徴

アリエの姿は、細かく伝わっていません。

わかっているのは、次のことです。

海中から出現する。
夜になると鱗を光らせる。
海にすむ鱗獣の首魁(かしら)である。

鱗を持つ生き物とされます。

そして、絵になりました。

アリエと称する図」を家々で信心する者が出たと新聞は伝えます。

姿より、絵として広まった点が要です。

アマビエやアマビコと同じく、図そのものが守りになるという形をとっています。

アリエの伝承物語

  1. 六分どおり死に失せる
  2. 船頭が新潟で語る
  3. 新聞が否定する

六分どおり死に失せる

アリエは、予言を残しました。

吉凶を見抜く術を持っていると語った上で、こう告げます。

「今年から6年間は豊年がつづく。」

「しかし6月からはコロリに似た病気が流行して、世の人々は六分どおり死に失せてしまう。」

コロリは、当時のコレラの呼び名です。

そして、逃れる手を示しました。

しかし身共を図にしてそれを朝な夕なに信心すればその難を避けることが出来る

そう告げると、消えました。

この形は、予言獣に共通します。

豊年と流行病を同時に告げ、絵を写せば助かるという。 良い知らせと悪い知らせが組になっています。

船頭が新潟で語る

この話には、伝わった経路が書かれています。

出雲国(現・島根県)の船頭たちが、このアリエの図についての話を新潟の地で語ったといいます。

島根から新潟です。

これは当時の物流を担っていた北前船の航路における往来を踏まえたものと見られます。

当時の人々が自然にイメージ可能な伝播経路です。

ところが、ここに注意点があります。

新聞記事にあるように、この箇所自体も「アリエの話」として一括に語られていたと見れば、アリエの絵を稼業もなげうって信心する人」が出たという話も、事実では無く噂の中でのものと考えられます。

噂の中に、伝わり方まで書き込まれています。

もっともらしくするための仕掛けとして読めます。

新聞が否定する

アリエの記事には、新聞側の姿勢が表れています。

長野新聞』は、先立つ同年6月21日の紙面に、肥後国青沼郡に出た尼彦入道という妖怪の図を既に報じていました。

そして、6月30日の紙面でこう指摘します。

青鳥郡」も「青沼郡」も共に肥後国・熊本県に実在しない郡である。

地名が存在しません。

その点を強調して、内容そのものが妄説であるとして、どちらについても否定しました。

江戸の瓦版とは、扱いが違います。

文明開化の時代・新聞の読者層には合わないものであるとしめくくるかたちの文章は、明治時代の新聞記事の特徴でもあります。

怪異を載せながら、同時に否定しています。

アリエの伝承地域

アリエは、肥後国(現・熊本県)の海に現れたとされます。

ただし、新聞が指摘したとおり「青鳥郡」も、同じ紙が報じた尼彦入道の「青沼郡」も、共に肥後国・熊本県に実在しない郡です。

実在しない地名が書かれています。

記事そのものは『山梨日日新聞』(当時の紙名は『甲府日日新聞』)と、それを転載した『長野新聞』(明治9年)にあります。

出雲国(現・島根県)の船頭たちが新潟で語った、という伝播の話も、噂の一部と考えられています。

確かめられていない土地を、伝承地として挙げることはしません。この欄は空のままにしてあります。

アリエの正体と考えられているもの

アリエについては、次のように整理できます。

一つめは、予言獣です。海中から出現をして吉凶にまつわる予言めいたことを言い残したとされ、海にすむ鱗獣の首魁を名乗りました。

二つめは、絵の信心です。身共を図にしてそれを朝な夕なに信心すればその難を避けることが出来る」と告げ、図を家々で信心する者が出たと新聞は伝えます。

三つめは、アマビコの類です。湯本豪一は、登場する単語などの類似性からアマビコ・アマビエに類するものと指摘しています。 明治時代前期に同様の瓦版の類が周期的に出まわっていた例の1つとみられます。

四つめは、実在しない地名です。青鳥郡」は肥後国・熊本県に実在しない郡であり、新聞はその点を強調して内容そのものが妄説であるとしました。

アリエは、新聞が否定するために載せた妖怪です。 怪異と、それを打ち消す言葉が、同じ紙面に並んでいます。

アリエをめぐる妖怪のつながり

アリエが登場する作品

アリエは、新聞に残った妖怪です。

明治9年の紙面に、図と、それを迷信として否定する文章が一緒に載りました。 そのおかげで、いつどこで話題になったかがはっきりしています。

資料は明治の新聞と、予言獣の研究に分かれます。

アリエが登場する研究

湯本豪一・高橋典子『日本の幻獣』

予言獣の瓦版や図を集めた書。アリエをアマビコの類として位置づけています。

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妖怪事典

村上健司編著、2000年。明治の予言獣を整理しています。

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アリエが登場する漫画・アニメ

妖怪をまとめて扱う作品

予言獣として、アマビエやアマビコと並べて取り上げられます。

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アリエについてよくある質問

アリエは何を予言したのですか。

今年から6年間は豊年がつづくが、6月からはコロリに似た病気が流行して、世の人々は六分どおり死に失せてしまうと告げました。コロリは当時のコレラの呼び名です。

助かる方法は示されましたか。

身共を図にしてそれを朝な夕なに信心すればその難を避けることが出来ると告げました。絵を写して信心するという形です。

アマビエと関係がありますか。

湯本豪一は、登場する単語などの類似性からアマビコ・アマビエに類するものであると指摘しています。明治時代前期に同様の瓦版の類が周期的に出まわっていた例の1つとみられます。

新聞はどう扱いましたか。

否定しました。 青鳥郡」も、同じ紙が報じた尼彦入道の「青沼郡」も共に肥後国・熊本県に実在しない郡である点を強調し、内容そのものが妄説であるとしています。

アリエと併せて覚えたい言葉・用語

コロリ(ころり)

幕末から明治にかけてのコレラの呼び名。

鱗獣(りんじゅう)

鱗を持つ獣。アリエはその首魁を名乗った。

北前船(きたまえぶね)

日本海を回った江戸期の商船。話の伝播経路とされる。