断りを入れれば望む品が揃う倉。無断で入ると坊主が出る。
倉坊主とはどんな妖怪か
倉坊主は、江戸の随筆にある怪異です。
根岸鎮衛による江戸時代の随筆『耳嚢』巻之九にあります。
題は、別のものでした。
原題は「怪倉の事」であり、「倉坊主」の名は『妖怪お化け雑学事典』(講談社)によるものです。
場所は、本所です。
本所(現・東京都墨田区)の隅田川近くに数原宗徳という幕府の御用医師が住んでいました。
昔から彼の屋敷の倉には不思議な言い伝えがありました。
倉の中に奇妙なものが住んでおり、家人が倉から何か物を出したいときには、そのたびに断りを入れなければ凶事があるとのことだったといいます。
倉坊主の漢字表記と読み方
読みは「くらぼうず」です。
倉にいる坊主、という名です。
この名は、江戸の書物にはありません。
原題は「怪倉の事」です。
「倉坊主」の名は『妖怪お化け雑学事典』(講談社)によるものです。
同じ江戸の本所には、別の倉の話もあります。
倉ぼっこ(くらぼっこ)は、本所の梅原宗得という人物の土蔵に棲み付いていたとされます。
こちらは倉の守り神です。
名も、場所も近いものです。
倉坊主(くらぼうず)
『妖怪お化け雑学事典』による名。
怪倉の事(かいそうのこと)
『耳嚢』での原題。
倉坊主の姿と特徴
倉坊主の姿は、恐ろしい顔の坊主です。
恐ろしい顔つきの坊主が現れたといいます。
それだけが記されています。
ふだんは、姿を見せません。
倉の中に奇妙なものが住んでいるとだけ伝わっていました。
そして、願いを聞きます。
どの品物を明日欲しいと倉に願うと、翌朝にはその品物が倉の前に揃っているのだったといいます。
朝には、揃っています。
姿が出るのは、無断で入られたときだけです。
倉坊主の伝承物語
断りを入れれば揃う
この倉には、決まりごとがありました。
倉の中に奇妙なものが住んでおり、家人が倉から何か物を出したいときには、そのたびに断りを入れなければ凶事があるとのことだったといいます。
断りが要ります。
守れば、良いことがあります。
その代わり、どの品物を明日欲しいと倉に願うと、翌朝にはその品物が倉の前に揃っているのだったといいます。
願えば、出してくれます。
倉の中を探す必要がありません。
礼儀を守る限り、便利な倉でした。
幕府の御用医師の家の倉です。
薬や道具が納められていたのでしょう。
火事でも倉だけ残った
ある年、火事がありました。
数原邸が火事にあいましたが、なぜか件の倉だけは焼け残りました。
倉だけ残りました。
そこで、困った者が出ます。
寝床を焼かれた数原の家来の一人の書生が寝床を求めました。
寝る場所がありません。
この倉に何者かが住んでいても非常時ならば問題ないとして、倉の中を片付けてそこに寝ていました。
断りを入れませんでした。
そして、出ました。
すると恐ろしい顔つきの坊主が現れて、許可なく倉に立ち入ったこと、さらには無礼にも倉の中で寝たことを責めました。
二つを責めています。
非常時なので許された
坊主は、罰を与えませんでした。
本来ならば命を奪うところだが、非常時なので許し、今後は決して立ち入ることのないようにと言い残して姿を消しました。
非常時だから、です。
理由を認めています。
驚いた書生は、たちまち倉を逃げ出しました。
逃げました。
そして、家の側が改めます。
以来、数原家では毎年決まった日に、倉の前で祭礼を執り行うようになったといいます。
祭りを始めました。
怒らせた側が、祀るようになっています。
数原家代々の墓所は神奈川県伊勢原市の日蓮宗上行寺にあります。
もともと寺自体は江戸時代から白金にありましたが、戦後になり伊勢原に移転しました。
倉坊主の伝承地域
倉坊主は、本所(現・東京都墨田区)に伝わります。
隅田川近くに数原宗徳という幕府の御用医師が住んでいたとされます。
家の墓所は、今も残っています。
数原家代々の墓所は神奈川県伊勢原市の日蓮宗上行寺にあります。
もともと寺自体は江戸時代から白金(現在の明治学院大学の真正面)にありましたが、戦後になり伊勢原に移転しました。
屋敷と倉の跡は確かめられていません。この欄は空のままにしてあります。
倉坊主の正体と考えられているもの
倉坊主については、次のように整理できます。
一つめは、出どころです。根岸鎮衛による江戸時代の随筆『耳嚢』巻之九にあるもので、原題は「怪倉の事」、「倉坊主」の名は『妖怪お化け雑学事典』によるものです。
二つめは、決まりごとです。家人が倉から何か物を出したいときには、そのたびに断りを入れなければ凶事があるといいます。
三つめは、見返りです。どの品物を明日欲しいと倉に願うと、翌朝にはその品物が倉の前に揃っているのだったといいます。
四つめは、火事です。数原邸が火事にあいましたが、なぜか件の倉だけは焼け残りました。
五つめは、許しです。本来ならば命を奪うところだが、非常時なので許し、今後は決して立ち入ることのないようにと言い残し、以来、数原家では毎年決まった日に、倉の前で祭礼を執り行うようになりました。
この怪異は、筋を通せば害がありません。 断りを入れるかどうかだけが、境目になっています。
倉坊主をめぐる妖怪のつながり
倉坊主が登場する作品
倉坊主は、礼儀を求める怪異です。
断りを入れれば品を揃え、無断で入れば恐ろしい顔で現れます。
資料は江戸の随筆に集まります。
倉坊主が登場する古典
耳嚢
根岸鎮衛。巻之九に「怪倉の事」があります。
倉坊主が登場する漫画・アニメ
家に付く妖怪を扱う作品
倉ぼっこや座敷童子と並べて取り上げられます。
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倉坊主についてよくある質問
倉坊主とは何ですか。
根岸鎮衛による江戸時代の随筆『耳嚢』巻之九にある江戸の怪異で、原題は「怪倉の事」です。
どんな決まりがありましたか。
家人が倉から何か物を出したいときには、そのたびに断りを入れなければ凶事があるといいます。
良いこともあるのですか。
どの品物を明日欲しいと倉に願うと、翌朝にはその品物が倉の前に揃っているのだったといいます。
無断で入るとどうなりますか。
恐ろしい顔つきの坊主が現れて、許可なく倉に立ち入ったこと、さらには無礼にも倉の中で寝たことを責めました。ただし非常時なので許したといいます。
倉坊主と併せて覚えたい言葉・用語
耳嚢(みみぶくろ)
根岸鎮衛が書き集めた江戸の見聞録。
御用医師(ごようしし)
幕府に仕えた医者。
本所(ほんじょ)
現在の東京都墨田区のあたり。