顔には目がなく、開いた両手のひらに一つずつ目を持つ、白髪の座頭姿の妖怪。

鳥山石燕 「画図百鬼夜行 手の目」 1776年 / パブリックドメイン 出典
手の目とはどんな妖怪か
手の目は、両手のひらに目を持つ妖怪です。顔には目がありません。鳥山石燕は、白髪の座頭姿が薄の野に立ち、手の目を前へ向ける姿を描きました。
石燕より前の『諸国百物語』には、京都七条河原で手の内に目を持つ老いた怪物に追われた男が、寺の長持へ逃げ込む話があります。夜が明ける前、長持から骨を噛む音が響き、男は皮だけになって発見されます。
手の目の漢字表記と読み方
「てのめ」と読みます。目が顔ではなく手にあるという、最も目立つ特徴が名前になっています。
手の目(てのめ)
両手のひらに目を持つ姿をそのまま表す名。
手目坊主(てめぼうず)
手の目と似た図像へ付けられた別名。
手の目の姿と特徴
白髪の老人または座頭の姿で、顔の目がある場所は暗く落ち込み、左右の掌に一つずつ眼球があります。石燕の図では薄と月のある野に立ち、両手を胸の前へ開きます。見るための器官が、顔から手へ移された異形です。
手の目の伝承物語
七条河原の怪物を見に男が墓所へ向かう
京都の七条河原には、夜の墓所へ化け物が出るという噂がありました。ある男は人から話を聞くだけで終わらせず、自分の目で確かめようと現地へ向かいます。
暗い河原と墓所は、町の灯りや人の助けから離れた場所です。怪物を探しに来た男は、やがて自分の方が見つけられる立場になります。
白髪の巨体が手の内の目を向ける
現れたのは、八十歳ほどに見える白髪の老人でした。しかし背丈はおよそ二・四メートルに達します。さらに顔ではなく、「手のうちにひとつ」の目を持っていました。
老人の姿に近いほど、手の目だけが強く浮かびます。男は観察するつもりで来ましたが、怪物の掌から見返され、追われる側へ変わります。
男は寺へ逃げ、長持の中へ隠れる
男は墓所を離れ、近くの寺へ駆け込みました。助けを求められた僧は、衣類や道具を納める大きな長持の中へ男を隠し、蓋を閉じます。
木の箱が、怪物の目から男を遮る最後の壁になりました。ところが怪物は寺の外で止まらず、そのまま境内へ入り、長持のすぐそばまで近づきます。
骨を噛む音が長持のそばから響く
僧は姿を伏せ、暗がりの音を聞きます。長持の近くから響いたのは、犬が骨を噛み砕くような音と、低いうめき声でした。中にいる男の声は聞こえません。
やがて音が止まり、怪物が去ったように思えました。逃げ切ったと確かめるため、僧は恐る恐る長持の蓋を開けます。
蓋を開けると男は皮だけになっていた
長持の中に残っていた男は、骨をすべて抜かれ、皮ばかりの姿になっていました。閉じた箱は怪物の手から守る場所ではなく、外から中が見えないまま襲われる場所になっていたのです。
後に石燕が描いた「手の目」は、この怪物と同じく掌に目を持ちます。ただし『諸国百物語』の話では手の目という固有名は使われません。名前のある妖怪画と、骨を抜く古い怪談は、共通する掌の目によって結びつきます。
手の目の伝承地域
地図は『諸国百物語』の舞台となる京都七条河原の地域を示します。石燕の絵は、この怪談とは別に描かれたものです。
京都・七条河原(きょうと・しちじょうがわら)
手の内に目を持つ怪物の物語が置かれた地域
京都・七条河原の所在地:京都府京都市下京区七条
『諸国百物語』で、男が白髪の怪物に追われる墓所の舞台です。
示しているのは七条河原の一帯です。
手の目の正体と考えられているもの
手の目は、見る器官を顔から掌へ移した異形です。『諸国百物語』では、その姿が七条河原から寺まで男を追い、骨を抜く怪談を動かします。石燕の一枚絵では、行動を語る詞書を持たず、月夜の野で両手を開きます。古い怪談の恐怖と、名を得た妖怪画の静けさが、掌の目でつながっています。
手の目をめぐる妖怪のつながり
手の目が登場する作品
手の目は、怪談と妖怪画が別々に伝わった例です。
『諸国百物語』の話に「手の目」という名は出てきません。掌に目を持つ怪物が、男の骨を抜くという筋だけがあります。
石燕は、その掌の目に名と姿を与えました。 名前のある妖怪画と、骨を抜く古い怪談が、共通する掌の目によって結び付いています。
手の目が登場する古典・怪談
手の目が登場する妖怪画
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手の目についてよくある質問
手の目とはどんな妖怪ですか。
顔には目がなく、左右の手のひらに一つずつ目を持つ白髪の妖怪です。鳥山石燕は、薄と月のある野に立って両手を開く座頭姿で描きました。
手の目は何と読みますか。
「てのめ」と読みます。見るための目が顔ではなく左右の手にあるという、最も強い姿の特徴がそのまま名前になっています。
手の目は人の骨を抜きますか。
『諸国百物語』には、手の内に目を持つ怪物が男を皮だけにする話があります。ただし、その怪物は本文で「手の目」と名乗りません。
手の目はどこに現れますか。
関連する古い怪談の舞台は京都七条河原の墓所です。石燕の手の目は薄と月のある野に描かれますが、特定の出現住所は示されません。
手の目と併せて覚えたい言葉・用語
諸国百物語(しょこくひゃくものがたり)
延宝五年刊の怪談集。手の内に目を持つ怪物の話を巻之三に収める。
七条河原(しちじょうがわら)
京都の七条付近を流れる鴨川の河原。怪物が出る墓所の舞台として語られる。
長持(ながもち)
衣類や道具を納める大きな木箱。男が怪物から逃れて隠れる。
手の目の参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。