全身を無数の目で覆われた姿で、昭和期の作品から定着した近現代の妖怪。
百目とはどんな妖怪か
百目は、全身が目に覆われた妖怪です。
頭から足まで、大小の目がびっしり並びます。顔の位置にも一つあることも、顔の区別がつかないほど目だらけのこともあります。
人に会うと体の目が飛び出して追うという説明もありますが、古い民俗資料による裏づけは乏しいとされます。後世の創作や潤色を、昔から全国にあった伝承とは書きません。
百目の漢字表記と読み方
読みは「ひゃくめ」です。文字どおりなら百個の目。ただし絵の目を数えると、百でないことがほとんどです。
似た名に百々目鬼があります。こちらは「どどめき」と読み、鳥山石燕が腕に多数の目を持つ女を描いたものです。
宇都宮の百目鬼は「どうめき」と読み、百の目を持つ鬼の退治譚です。三つは字と目の意匠が似ますが、読み、姿、成立資料が違います。
百目(ひゃくめ)
現在広く使われる表記。
百目妖怪(ひゃくめようかい)
作品や紹介記事で姿を説明する呼び方。
眼魔(がんま)
水木しげる原作の特撮作品に登場する関連する名。百目に近い名。
百目の姿と特徴
百目は、頭から足まで目に覆われた人型として描かれます。
顔の位置にも一つの目がある場合と、顔の区別がつかず全身が目の塊に見える場合があります。体色や手足の形は作品ごとに変わります。
目の一つが体から離れて追ってくるという説明もあります。見られた者は隠れても追跡され、秘密を持てません。
一つ目のバックベアードが一つの強い視線を向けるのに対し、百目はどこからでも見られる圧迫を作ります。
百目の伝承物語
昭和期に形を得た妖怪
百目の成立を考えるとき、水木しげるの作品と妖怪画を外すことはできません。
昭和四十年代前後、漫画や特撮、雑誌の妖怪特集が多くの子どもへ同じ姿を届けました。体中に目を持つ図像は一目で特徴が伝わり、名前も覚えやすいものでした。
それ以前の民俗資料に「百目」という同じ妖怪が全国で語られた証拠は乏しいと指摘されています。
百目は古さを装って価値を得る必要がありません。 出版と映像が新しい妖怪を共有財産へ変えた過程を示す、重要な近現代の例です。
百々目鬼と取り違えられる
目が多い妖怪には、百々目鬼と百目鬼がいます。
鳥山石燕の百々目鬼は、女の腕に鳥の目が多数現れる図です。銭を「鳥目」と呼ぶ言葉遊びが詞書に関わり、全身が目で覆われた百目とは構図が違います。
宇都宮の百目鬼は、藤原秀郷が弓で退治したという土地の鬼です。体に百の目を持つ点は百目に近く見えますが、地名由来譚と退治の筋を持ちます。
似た名前を同じ一体の成長段階としてつなぐ資料はありません。 自動リンクのためにも表示名と読みを分けます。
無数の視線が生む怖さ
一つ目のバックベアードとの対照
バックベアードと百目は、昭和期の作品で強い像を得た点が似ています。
バックベアードは巨大な一つの目を中央に置き、首領や支配者の視線を作ります。百目は小さな目を全身へ分散し、どこにも死角がない感覚を作ります。
一つと多数という正反対の構図ですが、どちらも目以外の顔の情報を減らし、見る働きそのものを妖怪にしています。
形が似るから同じ出典だとは言えませんが、同時代の視覚文化が目の怪異をどう強めたかは比較できます。
百目の伝承地域
百目には、古い伝承として確認できる固定の出現地がありません。
宇都宮には百目鬼の地名伝説がありますが、それは「どうめき」と読む別項です。百目の場所として宇都宮を載せると、二つの成立を混同します。
作品資料の展示地は会期により変わるため、常に会える住所としては扱いません。場所欄は空にします。
百目の正体と考えられているもの
百目の正体は、昭和期の創作と出版で定着した妖怪像と考えられます。
古い伝承に直接対応するものを探す試みはあります。百々目鬼、百目鬼、目目連など、多くの目を持つ先行妖怪との似姿は確かです。しかし、作者がどれを直接の材料にしたかを示す資料なしに断定はできません。
また、全身の目は監視される不安を直感的に表します。学校、会社、町の中で人の視線を意識する近代の生活にも響く図像です。
見られることそのものを形にした妖怪です。伝承が見つからない部分は見つからないと書き、創作が社会へ根付いた事実を中心に見るのが適切です。
百目をめぐる妖怪のつながり
百目が登場する作品
百目は作品で生まれ、作品によって育った妖怪です。そのため登場作品の違いは付け足しではなく、成立史そのものに含まれます。
ただし、特定作品の能力をすべての百目へ共通させません。
初出をたどる作業では、「百目」という見出しだけでなく、眼魔、百目妖怪など関連する表記も確認します。雑誌の予告、番組本編、漫画の連載、後年の妖怪図鑑で呼び方が変わる可能性があるからです。
また、百々目鬼や宇都宮の百目鬼を「百目のモデル」と断定するには、作者や編集資料による裏づけが要ります。形が似るという観察と、制作上の直接資料が示す系譜を分けることで、近現代妖怪の成立を過不足なく説明できます。
名前だけが先に知られ、後から姿や能力が補われた可能性もあるため、名称・図像・物語の初出は別々に調べます。
作品の放送年や掲載年は推測で書かず、出版社、放送局、所蔵館の目録で照合します。再放送や復刻版の日付が初出として広まることがあるためです。確認できない能力は「後世に語られる」と範囲を限定します。
百目が登場する特撮・漫画
悪魔くん
全身に目を持つ眼魔が登場し、百目の像が定着する過程と関わります。
水木しげるの妖怪図鑑・漫画
百目の名と姿を広く紹介し、近現代の妖怪として知られる土台になりました。
百目が登場する後続作品
妖怪を扱うゲーム
多数の目で索敵する、相手を見張るなどの能力へ発展しています。
怪異を扱う漫画・アニメ
目の集合体として、監視や視線への恐れを表す役で登場します。
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百目についてよくある質問
百目は昔から伝わる妖怪ですか。
古い全国的な口承の裏づけは乏しく、水木しげるの作品周辺で昭和期に姿が定着したと考えられます。
本当に目が百個ありますか。
名は百目ですが、絵の目を数えると百に届きません。数より、どこからでも見られていることのほうが要点です。多数の目を表す名です。
百々目鬼と同じですか。
違います。百々目鬼は鳥山石燕が腕に多数の目を持つ女として描き、読みも「どどめき」です。
どこに出る妖怪ですか。
固定の伝承地は確認できません。宇都宮の百目鬼とは別の妖怪です。
百目と併せて覚えたい言葉・用語
百々目鬼(どどめき)
鳥山石燕が、腕に多くの目を持つ女として描いた妖怪。
百目鬼(どうめき)
宇都宮に伝わる、百の目を持つ大きな鬼。
目目連(もくもくれん)
古い障子の多数の穴に目が現れる妖怪。