中国の魑魅に連なる、山林の悪気が人へ害をなすものとして描かれた妖怪。

鳥山石燕 「今昔画図続百鬼 邪魅」 1779年 / パブリックドメイン 出典
邪魅とはどんな妖怪か
邪魅は、鳥山石燕の『今昔画図続百鬼』に登場する妖怪です。岩の間から、毛深い獣のような姿で身を起こしています。絵に添えられた説明は「魑魅の類」「妖邪の悪気」と短く、個人名や土地、退治の物語を持ちません。
山野に満ちる不穏な気配や、人を害する邪なものを一体の姿にした妖怪です。
邪魅の漢字表記と読み方
邪魅は「じゃみ」と読みます。「じゃみ」だけでなく「邪魅(じゃみ)」までを一つの名称として扱います。
邪魅(じゃみ)
「邪」はよこしま、「魅」は人を惑わすものを表します。
邪魅の姿と特徴
石燕の絵では、長い毛に覆われた獣のような体で、岩の陰から上半身を起こしています。顔は人にも獣にも見え、角や武器はありません。山林のどの動物かを示す図ではなく、正体のつかみにくい悪気の姿です。
邪魅の伝承物語
岩陰から邪魅が姿を起こす
暗い岩の間に、毛むくじゃらのものが潜んでいます。邪魅は四つ足の獣のように地面へ体を伏せながら、顔を上げて外を見ています。
誰かを追う場面も、村を襲う場面も描かれません。岩の奥に何かがいる。その一瞬だけで、山野へ踏み込む者が感じる不安を形にしています。
「魑魅の類、妖邪の悪気」と名づけられる
絵の脇には、邪魅は魑魅の仲間であり、妖しく邪な悪気だという意味の言葉が添えられています。魑魅は山や林にいる怪しいものを広く指します。邪魅も、その気配へ付けられた名です。
物語より先に「人を害する気配」という意味があり、石燕はその見えないものへ、岩陰に潜む獣の姿を与えました。
中国の言葉が日本の妖怪画になる
名称の背景には中国の怪異語彙があります。一方、現在知られる邪魅の姿は、江戸時代の日本で刊行された石燕の妖怪画によって広まりました。
言葉として伝わったものが、日本の絵の中で姿を得ました。言葉として伝わった邪なるものが、日本の絵本の中で初めて目に見える一体になったのです。
邪魅の伝承地域
邪魅には特定の日本の伝承地がありません。石燕の画集に描かれた山野の怪異であり、現実の山や住所へ結び付ける地図は表示しません。
邪魅の正体と考えられているもの
邪魅の正体は、固有の経歴を持つ一匹の獣ではなく、山野の「悪気」です。だからこそ姿は獣に近くても種名を決められず、行動も岩陰からうかがうところに留まります。説明の少なさそのものが、正体の見えない害意を表しています。
邪魅をめぐる妖怪のつながり
邪魅が登場する作品
邪魅は、言葉が先にあった妖怪です。
詞書は「魑魅の類」「妖邪の悪気」と短く書くだけで、個人名も土地も退治の物語もありません。
中国から言葉として伝わった「邪なるもの」に、石燕が岩陰の獣という姿を与えました。 山野へ踏み込む者が感じる不安が、そのまま一体の姿になっています。
邪魅が登場する妖怪画
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邪魅についてよくある質問
邪魅とはどんな妖怪ですか。
山野の邪な気配や人を害するものを、鳥山石燕が毛深い獣のような姿で描いた妖怪です。
邪魅は何と読みますか。
「じゃみ」と読みます。「邪」はよこしま、「魅」は人を惑わすものを表す字です。
邪魅と魑魅は同じですか。
石燕は邪魅を「魑魅の類」と説明します。まったく同じ固有名ではなく、魑魅という広い範囲に属するものです。
邪魅にはどんな物語がありますか。
石燕の絵に長い物語はありません。岩陰の姿と短い説明によって、山野の悪気を表しています。
邪魅と併せて覚えたい言葉・用語
魑魅(ちみ)
山や林にいる怪しいものを広く指す語。
悪気(あっき)
人へ害を及ぼす邪な気配。
今昔画図続百鬼(こんじゃくがずぞくひゃっき)
鳥山石燕が安永8年(1779)に刊行した妖怪画集。
邪魅の参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。