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広島県

三鬼大権現とはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品・伝承地域

三鬼大権現  / さんきだいごんげん

人型の妖怪天狗 各地の伝説

宮島の弥山にまつられる三体の鬼神。大小の天狗を従え、福徳・知恵・降伏を司る。

三鬼大権現の姿を描いた図

Daderot 「弥山 三鬼堂の鬼面」 2011年 / パブリックドメイン 出典

三鬼大権現とはどんな妖怪か

三鬼大権現は、まつられている鬼です。

広島県廿日市市宮島。厳島神社の背後にそびえる弥山(みせん)の山頂近く、三鬼堂に祀られています。地元では「三鬼さん」と呼ばれます。

大聖院の説明はこうです。

福徳、智恵、降伏の徳を備えた霊験あらたかな当山の守護神で、三鬼大権現という

(降伏=ごうぶく。悪しきものを屈服させること)

そして、従えているものが変わっています。

大小天狗を従えて威大な神通力で衆生を救われる

鬼が天狗を従えている。 討たれる側の鬼が、山の守り神として堂に座っています。

三体の名は、追帳鬼神時眉鬼神魔羅鬼神です。

三鬼大権現の漢字表記と読み方

さんきだいごんげん」と読みます。

権現」は、仏が仮に神の姿をとって現れたものを指す言葉です。鬼に「大権現」が付くのは、この妖怪がまつられる側にいることの表れです。

三体には、それぞれ本地仏があてられています。

追帳鬼神 … 福徳/大日如来
時眉鬼神 … 知恵/虚空蔵菩薩
魔羅鬼神 … 降伏/不動明王

鬼の正体が仏である、という組み立てです。神仏習合の考え方が、そのまま名に入っています。

三鬼大権現(さんきだいごんげん)

もっとも一般的な表記。

三鬼さん(さんきさん)

地元での呼び方。

追帳鬼神(ついちょうきしん)

福徳を司る。本地仏は大日如来。

時眉鬼神(じびきしん)

知恵を司る。本地仏は虚空蔵菩薩。

魔羅鬼神(まらきしん)

降伏を司る。本地仏は不動明王。

三鬼大権現の姿と特徴

三鬼大権現の姿は、堂の中にあります

三鬼堂に三体が並んで祀られ、それぞれ福徳・知恵・降伏を司ります。角のある忿怒の相で表されますが、退治される鬼の造形ではありません。 不動明王の系譜に連なる、守りの顔です。

従えているのが天狗であることも見落とせません。天狗は、山伏の姿をとる山の霊です。その天狗を大小あわせて配下に置く という位置づけになっています。

弥山には、弘法大師の修行以来燃え続けているとされる火があります。大聖院はこう記します。

大師御修行当時から燃えつづけている聖火

この火は不消霊火堂にあり、その湯は万病に効く とされてきました。三鬼堂は、この霊火堂のすぐ近くに建っています。

三鬼大権現の伝承物語

  1. 弥山の鎮守として勧請される
  2. 鬼が天狗を従える ─ 逆さまの序列
  3. 福徳・知恵・降伏 ─ 三つに分けて願う
  4. 猿が消えた島 ─ 弥山の獣

弥山の鎮守として勧請される

三鬼大権現は、山を開いたときに呼ばれた神です。

平安時代の初め、弘法大師(空海)が弥山で修行し、山を開いたと伝えられます。そのとき弥山の鎮守として勧請されたのが三鬼大権現だとされます。

もとは、いまの御山神社がある場所に建てられていました。

平安後期、平清盛が厳島神社の社殿を大規模に造営したとき、清盛自身が三鬼堂を「厳島神社の奥宮」と定めたと伝わります。

海に浮かぶ社殿と、山上の鬼堂。 表と奥で対になっています。

弥山では、大師の修行当時から燃え続けているという火が、いまも不消霊火堂で守られています。

鬼が天狗を従える ─ 逆さまの序列

この神で目を引くのは、序列です。

大聖院の説明は、はっきり書いています。

大小天狗を従えて威大な神通力で衆生を救われる

鬼が上で、天狗が下。 ふつうは逆です。

天狗は山伏の姿をとり、山ごとに名を持ち、大天狗が烏天狗を従えます。修験の山では、天狗が最上位に置かれるのがふつうです。

その天狗が、ここでは眷属にすぎません。

なぜ鬼が上に立つのか。 三体それぞれに本地仏があてられていることが答えになります。大日如来・虚空蔵菩薩・不動明王。 仏が鬼の姿で現れているのだから、天狗より上に立ちます。

福徳・知恵・降伏 ─ 三つに分けて願う

三鬼大権現は、三体で一組です。

追帳鬼神が福徳を、時眉鬼神が知恵を、魔羅鬼神が降伏を司ります。

願いごとを三つに分けてある、と考えると分かりやすくなります。暮らしの豊かさ、判断の力、災いを退ける力。 一体にまとめず、役を割ってあります。

とくに降伏は、悪しきものを屈服させる働きです。魔羅鬼神の本地仏が不動明王なのは、この役に合っています。

鬼に悪を退けさせる。 退治される側だったものが、退治する側に回っています。

弥山の参道を登ると、三鬼堂は霊火堂の近くにあります。ロープウェーの終点からさらに歩いた先です。

猿が消えた島 ─ 弥山の獣

宮島は、神の獣がいる島として知られてきました。

南方熊楠は、島の猿について報告を引いています。

厳島の神獣として猴多くいたがその屍を見た者なきに何処へ行ったか今は一疋も見えぬ

(猴=猿。一疋=一匹)

死骸を見た者がいない。 そして、ある時から一匹もいなくなった。

南方は、これをインドで猿が死骸を隠すという説に近いとしました。同じ文で、『滑稽雑談』にある猿の口開きの神事も引いています。二月と十一月の申の日に祓を行い、この日を境に島の猿が声を出す、あるいは声を収める という行事です。

山に鬼と天狗、島に猿。 宮島は、人以外のものの居場所として語られてきました。

三鬼大権現の伝承地域

三鬼大権現は、二か所で参拝できます。

三鬼堂は弥山の山頂近くです。ロープウエーの獅子岩駅から徒歩で登ります。山道なので、靴と天候の確認が要ります。

大聖院の摩尼殿は、宮島桟橋から徒歩圏です。山に登らなくても参拝できます。

いずれも大聖院の管理です。

三鬼堂(さんきどう)

三鬼大権現をまつる堂

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三鬼堂の所在地:広島県廿日市市宮島町 弥山

弥山の山頂近くに建つ堂です。三鬼大権現を祀り、地元では「三鬼さん」と呼ばれてきました。

すぐ近くに不消霊火堂があります。弘法大師の修行当時から燃え続けているとされる火が守られ、その湯は万病に効くと伝えられます。

宮島ロープウエーの獅子岩駅から、さらに徒歩で登ります。管理は大聖院です。

宮島桟橋からロープウエー、獅子岩駅から徒歩約30分。山道のため靴と天候の確認が要る。

大聖院(だいしょういん)

弥山を管理する真言宗の大本山

地図で開く

大聖院の所在地:広島県廿日市市宮島町210

宮島でもっとも古い歴史を持つ寺院で、弥山の堂宇を管理しています。境内の摩尼殿にも三鬼大権現が祀られています。

厳島神社から徒歩で行ける距離にあり、弥山まで登らなくても三鬼大権現に参拝できます。

宮島桟橋から徒歩約20分。厳島神社の南側。

三鬼大権現の正体と考えられているもの

三鬼大権現の正体は、山の力を仏に結びつけた形です。

一つめは、山岳信仰。弥山は宮島の中心にそびえる山で、島そのものが古くから神域とされてきました。山に住むものへの畏れが、この神の土台です。

二つめは、修験と天狗。大小の天狗を従えるという説明は、この神が修験道の側に立つことを示します。

三つめは、神仏習合。三体に本地仏をあて、「権現」の名を与える。仏が鬼の姿で現れている、という組み立てです。

鬼は、討たれるだけの存在ではありません。

酒呑童子は討たれ、茨木童子は腕を斬られました。一方で、三鬼大権現は堂に祀られ、天狗を従え、いまも参拝されています

同じ「鬼」という名の中に、討つ相手と拝む相手が並んでいます。

三鬼大権現をめぐる妖怪のつながり

三鬼大権現が登場する作品

三鬼大権現は、創作より現地の案内のほうが確かです。

弥山の三鬼堂は現に登れる場所にあり、大聖院が由緒を公表しています。 江戸期の『芸州厳島図会』と現在の社の説明を突き合わせると、まつり方の変わらなさが見えます。

鬼を退治せず、権現として位を与えて鎮める。 その形そのものが、この土地の資料です。

三鬼大権現が登場する古典・記録

芸州厳島図会

江戸後期の宮島の絵入り案内。弥山の堂社を一つずつ図と文で示しており、三鬼堂もその中に置かれています。

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三鬼大権現が登場する研究

民間信仰辞典

権現・本地仏・勧請といった語を引ける辞典。鬼を権現としてまつる形を理解する手がかりになります。

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三鬼大権現が登場する漫画・アニメ

妖怪をまとめて扱う作品

鬼が天狗を従えるという珍しい序列から、鬼の項で取り上げられることがあります。

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三鬼大権現についてよくある質問

三鬼大権現とはどんな妖怪ですか。

広島県宮島の弥山にまつられる三体の鬼神です。大聖院の説明では、福徳・知恵・降伏の徳を備えた弥山の守護神で、大小の天狗を従えて衆生を救うとされます。

三体の鬼の名前は何ですか。

追帳鬼神・時眉鬼神・魔羅鬼神です。それぞれ福徳・知恵・降伏を司り、本地仏は大日如来・虚空蔵菩薩・不動明王とされます。

なぜ鬼が天狗を従えているのですか。

三体に本地仏があてられているためです。仏が鬼の姿で現れたものとされ、山の霊である天狗より上に置かれます。修験の山では天狗が最上位に立つことが多く、この序列は珍しいものです。

三鬼大権現はどこで参拝できますか。

弥山の三鬼堂と、宮島桟橋から徒歩圏の大聖院摩尼殿の二か所です。いずれも大聖院の管理で、山に登らなくても参拝できます。

弥山の消えない火とは何ですか。

不消霊火堂に守られている火です。大聖院は「大師御修行当時から燃えつづけている聖火」と説明し、その湯は万病に効くと伝えられます。

三鬼大権現と併せて覚えたい言葉・用語

権現(ごんげん)

仏が仮に神の姿をとって現れたもの。

本地仏(ほんじぶつ)

神の正体とされる仏。三鬼にはそれぞれ別の仏があてられる。

降伏(ごうぶく)

悪しきものを屈服させること。魔羅鬼神が司る。

不消霊火堂(きえずのれいかどう)

弥山にある堂。弘法大師の修行以来燃え続けるとされる火を守る。

三鬼大権現の参考資料

この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。

  1. 宮島弥山 大本山 大聖院「弥山とは」
  2. 青空文庫 南方熊楠『十二支考』「猴に関する伝説」