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鹿児島県

ボゼとはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品・伝承地域

ボゼ  / ボゼ

人型の妖怪神になった妖怪 各地の伝説

鹿児島県トカラ列島の悪石島に伝わる来訪の行事。盆の終わりに現れる。

ボゼの姿を描いた図

Fred Cherrygarden 「悪石島のボゼ(鹿児島県立博物館)」 2025年 / CC BY 出典

ボゼとはどんな妖怪か

ボゼはひとことで言えば、盆の終わりに現れる異形の来訪者です。

鹿児島県トカラ列島の悪石島に伝わる行事であり、そこに現れるものの名でもあります。奇祭として知られています。

盆の終わりに現れる仮面装束で、その出現理由には諸説あります。

盆行事の幕を引くことで、人々を死霊臭の漂う盆から新たな生の世界へ蘇らせる役目を持つ、と指摘する研究者もいます。

また、盆の時期には先祖の霊とともに悪霊も現世にやって来るので、その悪霊を追い払うものとする説もあります。

かつてはトカラ列島の中之島にもボゼが現れたといいますが、現在この風習が伝わるのは悪石島だけです。

ボゼの漢字表記と読み方

読みは「ボゼ」です。

名の由来については、はっきりしたことが分かっていません。

ボゼマラ」は、ボゼが手に持つ男根を模した長い棒の名です。この棒の先についた赤い泥水を人に擦りつけることで、悪霊祓いの利益があるとされます。

日本には他にも男性器の形の物を持つ祭りがあり、奈良県の飛鳥座神社の行事や、茨城県の行事が知られています。

「悪石島」は、この島の名です。荒々しい名ですが、島の海が険しいことに由来するといわれます。

文化財としての指定名称は「悪石島のボゼ」です。

ボゼ(ぼぜ)

もっとも一般的な書き方。

ボゼマラ(ぼぜまら)

ボゼが手に持つ長い棒の名。

悪石島のボゼ(あくせきじまのぼぜ)

重要無形民俗文化財としての指定名称。

ボゼの姿と特徴

ボゼの姿は、行事のなかで人が身につけるものとして定まっています。

… 赤土と墨で塗られた異形の面。
装い … ビロウの葉の腰蓑を巻く。手首や足にシュロの皮をあてる。
持ち物 … ボゼマラという長い棒。先端に赤い泥水がついている。
演じる者 … 島の若者。
体数 … 三体。

顔を覆っていた面は、行事が終わるとその場で跡形もなく壊されます。

面が残らないという点が、この行事の大きな特徴です。

毎年新しく作られ、毎年壊される。同じ面が二度使われることはありません。

そのため、ボゼの顔は年ごとに違います。決まった一つの姿というものがありません。

赤土と墨という材料は、島で手に入るものです。装いのビロウの葉もシュロの皮も同じです。

すべてが島の中で作られ、島の中で終わります。

ボゼの伝承物語

  1. 旧暦七月十六日、テラから来る三体
  2. 子どもたちが悲鳴をあげて逃げる
  3. 面は壊され、跡形も残らない
  4. 恐ろしい時間が終わる合図
  5. 中之島から消え、悪石島に残った
  6. 国の重要無形民俗文化財になる

旧暦七月十六日、テラから来る三体

ボゼが現れるのは、盆の最終日の翌日にあたる旧暦七月十六日です。

若者が赤土と墨で塗られた異形の面をかぶり、ビロウの葉の腰蓑を巻き、手首や足にシュロの皮をあててボゼに扮します。手にはボゼマラという長い棒を持ちます。

午後、島内の聖地とされるテラを出発します。テラは墓地に隣接する広場です。

三体のボゼは、島の古老の呼び出しと太鼓の音に導かれ、島民が盆踊りに集まっている公民館の前の広場を訪れます。

そして、主に女子供を追い回します。

子どもたちが悲鳴をあげて逃げる

子供たちは異様な姿に悲鳴をあげて逃げ惑い、辺りは笑い声と叫び声につつまれて騒然となります。あまりの恐怖に泣き出す子供すらいます。

ボゼはボゼマラを持ったまま人々に迫り、その先端についた赤い泥水を擦りつけます。

こうすることで悪霊祓いの利益があり、女性は子宝に恵まれるといわれます。

こうした騒ぎが十分から十五分続いた後、太鼓の音が六調のリズムに変わります。

すると、ボゼが広場の中央に集まり、踊り始めます。

そして再度の太鼓の合図で、再びボゼたちは子供たちを追い回しながら、その場を走り去ります。

面は壊され、跡形も残らない

ボゼがテラへと戻って来た後、大切な手順があります。

顔を覆っていた面は、そこで跡形もなく壊されます。

一年に一度だけ作られ、一度だけ使われ、その日のうちに壊される。

これがボゼという行事の核にあります。

面が残れば、それは物になります。飾ることも、見せることもできてしまいます。

壊すことで、ボゼはその日その場にしか存在しないものになります。

一方、残された公民館では、悪霊を祓われた人々が安堵と笑いに満ちています。酒や料理を楽しみながら夜が更けてゆきます。

恐ろしい時間が終わる合図

恐ろしい時間が終わり、安心な時間が始まる。 この切り替えこそが、ボゼの役目です。

出現理由については諸説あります。

盆の幕を引く役目とする説 … 死霊臭の漂う盆から、人々を新たな生の世界へ蘇らせるためというものです。

悪霊を追い払う役目とする説 … 盆の時期には先祖の霊とともに悪霊も現世に来るので、それを追い払うためというものです。

どちらの説も、盆の終わりに置かれていることを説明しようとしています。

中之島から消え、悪石島に残った

ボゼは、いま悪石島だけの行事です。

しかし、かつてはトカラ列島の中之島にもボゼが現れたといいます。

いつ、なぜ絶えたのかは分かっていません。

トカラ列島は、鹿児島と奄美のあいだに連なる島々です。人の数の少ない島が多く、行事を続けるには重い負担がかかります。

現在、ボゼの風習が伝わるのは悪石島だけになりました。

文化財としての歩みは、次のとおりです。

一九八九年三月二十二日 … 「十島村悪石島の盆踊り」の指定名称で、鹿児島県の無形民俗文化財に指定されました。

国の重要無形民俗文化財になる

二〇一七年三月三日 … 「悪石島のボゼ」として、国の重要無形民俗文化財に指定されました。

二〇一八年十一月二十九日 … 十件の来訪神行事からなる「来訪神 仮面・仮装の神々」のひとつとして、ユネスコの無形文化遺産への登録が決定しました。

この枠組みには、秋田県の男鹿のナマハゲ、石川県の能登のアマメハギ、鹿児島県の甑島のトシドン、沖縄県の宮古島のパーントゥなどが含まれます。

日本各地に散らばっていた同じ形の行事が、一つのまとまりとして世界に認められました。

ボゼはそのなかでも、面を壊すという点で際立っています。

ボゼの伝承地域

ボゼの伝承地は、鹿児島県鹿児島郡十島村の悪石島です。

トカラ列島の島の一つで、旧暦七月十六日に行事が行われます。

島内の聖地とされるテラ、墓地に隣接する広場を出発し、公民館前の広場へ向かいます。行事が終わるとテラへ戻り、そこで面が壊されます。

かつては中之島にもボゼが現れたといいますが、いつ絶えたかは分かっていません。

ボゼを祀る社は確かめられませんでした。行事そのものが行われる場所です。

悪石島(あくせきじま)

ボゼが現れる島

地図で開く

悪石島の所在地:鹿児島県鹿児島郡十島村

ボゼの行事が伝わる、トカラ列島の島です。

旧暦七月十六日、島内の聖地とされるテラを出発した三体のボゼが、公民館前の広場を訪れます。

かつてはトカラ列島の中之島にもボゼが現れたといいますが、現在この風習が伝わるのはこの島だけです。

二〇一七年に「悪石島のボゼ」として国の重要無形民俗文化財に指定されました。

行事は旧暦にもとづくため、日取りは年によって変わります。

ボゼの正体と考えられているもの

ボゼの正体については、次のように考えられています。

盆の幕を引く役目とする見方があります。盆行事の幕を引くことで、人々を死霊臭の漂う盆から新たな生の世界へ蘇らせる役目を持つ、と指摘する研究者もいます。

悪霊を追い払う役目とする見方もあります。盆の時期には先祖の霊とともに悪霊も現世にやって来るので、その悪霊を追い払うためというものです。

来訪神とする見方が、現在では広く行われています。定まった時期に外から訪れ、家々や人々のもとを回るものを指す言い方です。二〇一八年のユネスコの無形文化遺産への登録も、この枠組みによります。

子宝を願う行事とする見方も成り立ちます。ボゼマラの先についた赤い泥水を擦りつけられると、女性は子宝に恵まれるとされます。

面を壊すことに意味があるとする見方もあります。物として残さないことで、ボゼはその日その場にしか存在しないものになります。

演じるのは島の若者です。 恐ろしいものでありながら、島の内側から生まれるという構造を持っています。

ボゼをめぐる妖怪のつながり

ボゼが登場する作品

ボゼは、面の写真によって知られる行事です。

赤土と墨で塗られた異形の面は、一度見れば忘れられない強さを持っています。

しかし、その面は毎年壊されます。 同じ面が二度使われることはなく、ボゼの顔は年ごとに違います。

作品で描かれるボゼは、ある年の一体の姿にすぎません。決まった一つの姿というものが、この行事にはありません。

ボゼが登場するそのほか

悪石島のボゼ

二〇一七年に国の重要無形民俗文化財に指定された行事の名称です。

来訪神 仮面・仮装の神々

十件の行事からなる枠組み。二〇一八年にユネスコの無形文化遺産となりました。

ボゼが登場する漫画・アニメ

来訪の行事を扱う各種の作品

ナマハゲやアマメハギと並べて紹介されることがあります。

ボゼが登場するゲーム

日本の妖怪を扱う各種の作品

赤土と墨で塗られた異形の面の姿で登場することがあります。

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ボゼについてよくある質問

ボゼとは何ですか。

鹿児島県トカラ列島の悪石島に伝わる来訪の行事であり、そこに現れるものの名です。盆の終わりに現れる仮面装束で、奇祭として知られています。

いつ行われますか。

盆の最終日の翌日にあたる旧暦七月十六日です。午後に島内の聖地とされるテラを出発した三体のボゼが、島民が盆踊りに集まっている公民館前の広場を訪れます。

何をするのですか。

主に女子供を追い回します。ボゼマラという長い棒を持ったまま人々に迫り、その先端についた赤い泥水を擦りつけます。こうすることで悪霊祓いの利益があり、女性は子宝に恵まれるといいます。

面はどうなるのですか。

ボゼがテラへ戻って来た後、顔を覆っていた面はそこで跡形もなく壊されます。同じ面が二度使われることはなく、ボゼの顔は年ごとに違います。

文化財に指定されていますか。

されています。一九八九年に鹿児島県の無形民俗文化財、二〇一七年に国の重要無形民俗文化財に指定され、二〇一八年には「来訪神 仮面・仮装の神々」の一つとしてユネスコの無形文化遺産となりました。

ボゼと併せて覚えたい言葉・用語

テラ(てら)

悪石島の聖地とされる、墓地に隣接する広場。ボゼの出発点であり終着点。

ボゼマラ(ぼぜまら)

ボゼが手に持つ長い棒。先端の赤い泥水を人に擦りつける。

ビロウ(びろう)

南方に生えるヤシの一種。その葉でボゼの腰蓑を作る。

六調(ろくちょう)

奄美やトカラで踊られる調子。太鼓がこれに変わるとボゼが踊り始める。