南九州に伝わる河童の一種。手足が長く、春と秋に山と川を行き来する。

ガラッパとはどんな妖怪か
ガラッパの漢字表記と読み方
読みは「ガラッパ」です。
「河童」がこの地域の言葉として変わった形とみられます。「ガワッパ」という言い方も伝わります。
呼び方は土地によって細かく分かれます。
鹿児島県本土全体 … 河童のことをガラッパと呼ぶ。
熊本県八代・人吉球磨など県南部 … 河童も山童もガラッパと呼ぶ。
熊本県南の人吉球磨地方 … 「山ん太郎」「川ん太郎」と呼び分ける。
山にいるときと川にいるときで名を変える土地があることが、この妖怪の性質をよく表しています。
同じものが季節によって場所を変え、そのたびに名も変わる。呼び名そのものが、行き来する存在であることを示しています。
なお、ガラッパの伝わる地方では、ドクダミを「ガラッパ草」と呼びます。
ガラッパ(がらっぱ)
もっとも一般的な書き方。
ガワッパ(がわっぱ)
民話などで用いられる呼び方。
山ん太郎・川ん太郎(やまんたろう・かわんたろう)
熊本県南の人吉球磨地方での呼び分け。
ガラッパの姿と特徴
ガラッパの姿は、一般の河童と比べて語られます。
手足 … 一般の河童より長い。座ると膝が頭より高い位置に来る。
体毛 … 全身に毛がある。
歩き方 … 後ろ足で立って歩く。
皮膚 … 人間と同じ茶褐色。
頭 … 皿があり、水が入っている。
座ると膝が頭より高くなるという特徴は、奄美のケンムンと共通します。
さらに、相撲についての細かい決まりごとが伝わっています。
相撲を取るときには一本背負いをしない。
左右に引っ張ってはいけない。
手が伸びる。
頭を触られるのを嫌がる。
人間を見ると無性に相撲を取りたくなる。
声についても記録があります。「ヒョーヒョー」「キーキー」「ヒューヒュー」「ホイホイ」と鳴くとされます。
実際にはこの声の主はトラツグミという小鳥とされますが、一説によればガラッパの神秘性を保つため、あえてこのことは公にされていないともいいます。
ガラッパの伝承物語
悪戯好きで、恩を忘れない
ガラッパは悪戯が大好きです。
山中で驚いたり道に迷ったりするのは、すべてガラッパの仕業とされました。
そして、人間から理不尽な攻撃を受けた場合は必ず仕返しをしたと伝えられています。
山でガラッパの悪口を言うと必ず仕返しされます。特に悪口を言った者が靴を履かずに裸足だった際には、その悪口は数キロメートル離れたガラッパの耳にも届くといいます。
しかし、悪戯好きの反面、恩義を忘れない性格ともされます。
熊本県では、川で悪さをしたガラッパをある者が懲らしめ、もう悪さはしないよう言い聞かせた上で許して逃がしてあげたところ、その川では水難が起きなくなったといいます。
人間の仕事を手伝う話も多く残ります。
相撲を挑み、尻子玉を抜く
熊本県 … 薬売りに膏薬の作り方を教えた話や、魚採りを手伝ってくれる話があります。特に魚については、ガラッパと友達になることで面白いように魚が沢山取れるといいます。
鹿児島県薩摩川内市 … 田植えを手伝った話が残されています。
また、かつてガランデンドンというガラッパの神が、鹿児島の社でガラッパたちを集めて悪事を働かないよう説得し、戒めの文字を石に刻んだといいます。
その石がある限り、ガラッパは悪さができないとされています。
柳田国男は「故郷七十年」で、九州の呼び名を並べています。
中部地方では河童の系統でカワランベ、カラランベというのが多く、九州では少し発音を違えてガラッパ、またはカワッパ、カワトノなどと呼ぶ所が多い。
カワランベ、ガラッパ、カワッパ。 同じ音が、土地を移るごとに崩れていきます。
相撲と、その果ての病
ガラッパは人間を見ると無性に相撲を取りたくなるとされます。
しかし、これは楽しい遊びでは終わりません。
種子島の話
ガラッパに相撲を挑まれた子供の逸話があります。その子供はガラッパを投げ飛ばしたものの、次から次へとガラッパが現れ、何度投げ飛ばしてもきりがありません。
ついに相撲に負けた子供は、妙な色を口に塗られて家に帰り、長い間目を覚まさなかったといいます。
薩摩川内市五代町の話
何日もガラッパの相撲につきあっていた者が、やがて病気になって死んでしまったとも伝えられています。
手を引き抜かれた話
相撲は終わりません。 これがガラッパの相撲の恐ろしさです。
一体を倒しても次が現れる。付き合い続ければ体が持たない。
嗜好についても伝えがあります。
一般の河童に増して女好きであり、鹿児島の伊佐郡などでは、ガラッパが人間の色気に惑わされて川に落ちたという「ガラッパの川流れ」の伝承があります。
熊毛郡屋久島町では、ガラッパに犯されて妊娠した女の話が伝わっています。その女は胎内のガラッパに肝を食べられたため、やがて死んでしまったといいます。産まれた子は焼き殺されそうになっていたところ、どこかへ消えたそうです。
仏飯と光り物 ─ ガラッパの弱点
ガラッパには、はっきりした弱点があります。
仏飯
仏壇に供えるご飯のことです。
熊本では、仏飯を口にしたガラッパが力を失ってしまったという伝承があります。
また伊佐郡や薩摩川内市では、仏飯を食べた人間や動物に対しては、ガラッパは恐れて近寄らないと言われています。
光り物の金属類
大の弱点のひとつです。ガラッパの難を避けるにはこれを身に付けると良いとされます。
そのほか
伊佐郡では、人間の歯を恐れているとも言われています。
鹿児島の大島郡では網が嫌いとされ、網をかぶることでガラッパの難を逃れた者の話が伝わっています。
ガラッパにまつわる行事や場所も残っています。
カワゴという別の呼び名
ヨッカブイ … 鹿児島県南さつま市金峰町高橋に伝承されてきた民俗行事です。水神を祀って水難除けと豊作を祈願するもので、青年がオオガラッパに、少年がコガラッパに扮していました。
ガワッパ神社 … 旧田浦町、現在の芦北町の樋ノ口水源にある樋ノ口神社の別名です。
このほか、大島郡の瀬戸内町では、善行を行わなかった人間が海で死ぬと、その霊魂がガラッパになると伝えられています。
川内市では、赤ちゃんの歯が生え始める際に下より上の方が先に生えると、川でガラッパに引きずり込まれるとされ、赤ちゃんの名前を改名するとともに、人形を作って川に流すという習わしがありました。
同じ文は、名の成り立ちにも踏み込んでいます。
カワゴは河童と同じで、童が児になっただけの違いである。
河の童か、河の児か。 ガラッパの「ッパ」も、この「童(わっぱ)」の系列にあたります。
ガラッパの伝承地域
ガラッパの伝承地は、鹿児島県と熊本県を中心とする南九州です。
もっともよく知られるのは鹿児島県薩摩川内市の川内川です。
熊本県葦北郡芦北町の樋ノ口神社は「ガワッパ神社」とも呼ばれます。
鹿児島県南さつま市金峰町高橋には、青年がオオガラッパに、少年がコガラッパに扮する「ヨッカブイ」という行事が伝わります。
種子島、屋久島、伊佐郡、大島郡瀬戸内町にも、それぞれ異なる伝えがあります。
奄美大島やトカラ列島などの南の島々に住むともされます。
川内川(せんだいがわ)
ガラッパが生息するとされる川
川内川の所在地:鹿児島県薩摩川内市
ガラッパがいるというのが全国的に知られている川です。
鹿児島県を流れる大きな川で、ガラッパの伝承のもっとも代表的な場所とされます。
薩摩川内市には、ガラッパが田植えを手伝った話も残されています。
川内市では、赤ちゃんの歯が下より上の方が先に生えると、この川でガラッパに引きずり込まれるとされました。
川筋の全体に伝わります。
樋ノ口神社(ひのくちじんじゃ)
ガワッパ神社とも呼ばれる社
樋ノ口神社の所在地:熊本県葦北郡芦北町
旧田浦町の樋ノ口水源にある社です。
別名を「ガワッパ神社」といいます。
ガラッパの名を冠する数少ない場所です。 水源に建てられていることが、この妖怪と水との結び付きを示しています。
社の由緒とガラッパの関係を示す記録は確かめられませんでした。
ガラッパの正体と考えられているもの
ガラッパの正体については、次のように考えられています。
河童の一種とする見方が基本です。頭に皿があり、相撲好きで、水にまつわるという性質は河童と共通します。鹿児島県本土全体で、河童のことをガラッパと呼びます。
山と川を行き来するものとする見方が、この妖怪の特徴です。春と秋に山と川を行き来するとされ、熊本県南の人吉球磨地方では「山ん太郎」「川ん太郎」と呼び分けられます。
山童と同じものとする見方もあります。熊本県の八代・人吉球磨などでは、河童も山童もガラッパと呼ばれます。
水死者の霊とする見方もあります。大島郡の瀬戸内町では、善行を行わなかった人間が海で死ぬと、その霊魂がガラッパになると伝えられています。
鳥の声を正体とする見方もあります。「ヒョーヒョー」という鳴き声の主は、実際にはトラツグミという小鳥とされます。
姿が見えないとする伝えもあります。 目に見えずに声や音だけが聞こえる正体不明の化け物とも言われ、特定の人にしか見えないともいいます。
ガラッパをめぐる妖怪のつながり
ガラッパが登場する作品
ガラッパは、民話の相手役としてよく登場します。
とんち話の主人公である彦一とガワッパの逸話は数多く残り、その一つでは彦一が十五匹のガワッパを仕留め、「でっかいやつが釣れた」と魚と偽って殿様に差し上げたと語られます。
恐ろしい相手でありながら、知恵くらべの相手にもなる。 この幅の広さが、ガラッパの話の豊かさを支えています。
行事としても残っており、南さつま市の「ヨッカブイ」では青年と少年がガラッパに扮します。
ガラッパが登場するそのほか
彦一とガワッパの民話
彦一が十五匹のガワッパを仕留め、魚と偽って殿様に差し上げたという逸話などが数多く残ります。
ヨッカブイ
南さつま市金峰町高橋の民俗行事。青年と少年がガラッパに扮します。
ガラッパが登場する漫画・アニメ
河童を扱う各種の作品
南九州の河童として、手足の長い姿で描かれます。
ガラッパが登場するゲーム
日本の妖怪を扱う各種の作品
河童の地域ごとの呼び名の一つとして扱われることがあります。
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ガラッパについてよくある質問
ガラッパとは何ですか。
南九州に伝わる河童の一種です。鹿児島県薩摩川内市の川内川にいるというのが全国的によく知られています。川辺に住み、頭に皿があり、春と秋に山と川を行き来するといわれます。
普通の河童とどう違いますか。
一般の河童より手足が長いのが特徴で、座ると膝が頭より高い位置に来ます。全身に毛があり、後ろ足で立って歩き、皮膚の色は人間と同じ茶褐色です。
弱点はありますか。
あります。仏壇に供えるご飯である仏飯が弱点で、これを口にしたガラッパは力を失うといいます。光り物の金属類も大の弱点で、身に付けると難を避けられるとされます。ほかに人間の歯や網を恐れるという伝えもあります。
相撲を取るとどうなりますか。
種子島の話では、投げ飛ばしても次から次へとガラッパが現れ、ついに負けた子供は妙な色を口に塗られて長い間目を覚まさなかったといいます。薩摩川内市五代町では、何日も相撲につきあった者が病気になって死んだとも伝えられます。
人を助けることもありますか。
あります。悪戯好きの反面、恩義を忘れない性格とされ、熊本では薬売りに膏薬の作り方を教えた話や魚採りを手伝う話が、薩摩川内市では田植えを手伝った話が残されています。
ガラッパと併せて覚えたい言葉・用語
川内川(せんだいがわ)
鹿児島県を流れる川。ガラッパの伝承でもっともよく知られる場所。
仏飯(ぶっぱん)
仏壇に供えるご飯。ガラッパの弱点とされる。
ガランデンドン(がらんでんどん)
ガラッパの神とされるもの。戒めの文字を石に刻んだと伝えられる。
ヨッカブイ(よっかぶい)
南さつま市金峰町高橋の民俗行事。水難除けと豊作を祈願する。
ガラッパの参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。