鳥の妖怪一覧|鵺・以津真天・陰摩羅鬼と、怪鳥の伝え
鳥の妖怪とは
鳥の姿、または鳥の性質を持つ妖怪です。
数が少ないぶん、性格がはっきりしています。
① 声で語られる ─ 姿より鳴き声が話の中心になる
② 死者と結びつく ─ 葬られなかった者のそばに現れる
③ 夜に現れる ─ 昼の鳥ではない
天狗を鳥の妖怪に数える見方もあります。 烏天狗は嘴を持ち翼で飛びますが、この図鑑では天狗を人型として扱っています。姿の中心が人であるためです。
射落とされた怪鳥|鵺 1体
鵺(ぬえ)は、頭が猿、胴が狸、尾が蛇、手足が虎という姿で語られます。
鳥の妖怪でありながら、体に鳥がありません。 それでも鳥に数えられるのは、
名前が、鳴き声から来ているためである。
「鵺」はもともとトラツグミという鳥を指す言葉でした。この鳥の夜の鳴き声が不気味だとされ、その声を出すものとして怪異の名になりました。
『平家物語』では、近衛天皇を悩ませた黒雲の中の物の怪を源頼政が射落とし、それが鵺だったと語られます。
姿がわからないから、いくつもの獣を継ぎ合わせた。
射落とされた鵺は舟に乗せて流されたとされ、流れ着いた先と伝える土地が各地にあります。
「いつまで」と鳴く鳥|以津真天 1体
以津真天(いつまで)は、名前がそのまま鳴き声です。
いつまで、いつまで。
『太平記』に、疫病と飢饉で死者が野に放置されたころ、宮中に怪鳥が現れて鳴き続けたという話があります。放置された死者が「いつまで捨てておくのか」と訴える声と読まれてきました。
鳥山石燕がこの話に姿を与え、人の顔を持つ大きな鳥として描きました。
ここは順序に注意が要ります。 話が先にあり、姿は後から描かれました。石燕以前に、この鳥の絵はありません。
鳴き声だけが伝わり、姿は絵師が決めた。
弓の名手が射落として鳴き止んだ、と結ばれます。鵺と同じく、射落とされて終わる話です。
死体から生じる鳥|陰摩羅鬼 1体
陰摩羅鬼(おんもらき)は、新しい死体から生じた気が化けた怪鳥です。
供養を怠る僧のもとに現れる。
中国の書物に見える話がもとで、夜に経を読まずにいた僧の前に現れ、羽ばたいて叫んだと伝わります。黒い鶴のような姿で、目が灯火のように光るとされます。
三体を通して見ると、共通するものがはっきりします。
鳥の妖怪は、死者を葬る側の落ち度を突く。
以津真天は放置された死体のそばで鳴き、陰摩羅鬼は供養を怠った僧を責めます。鵺も、正体のわからないまま射落とされ、流されたという点で、始末のつかない死につながります。
鳥は空と地の両方に触れるため、死者と生者のあいだを行き来する役を負いやすい、という読み方が示されています。
鳥の妖怪を並べる
三体は、どれも声と死に結びついています。
| 妖怪 | 姿 | 声 | 結びつく死 |
|---|---|---|---|
| 鵺 | 猿・狸・蛇・虎の合成 | トラツグミの声 | 射落とされ、流される |
| 以津真天 | 人の顔を持つ大鳥 | 「いつまで」 | 野に放置された死者 |
| 陰摩羅鬼 | 黒い鶴のような鳥 | 羽ばたいて叫ぶ | 供養されない死者 |
並べると、鳥の妖怪は姿より声で語られてきたとわかります。
鵺も以津真天も、名前が鳴き声から来ている。
夜に聞こえる鳥の声が、そのまま怪異の名になりました。姿を見た者がいないのに名前だけがある、という状態が長く続きます。
姿を与えたのは、多くの場合江戸時代の絵師です。以津真天の姿は鳥山石燕が決めました。
声が先、姿が後。
もうひとつ。三体とも死者の始末に関わります。放置された遺体、供養されない死者、正体のわからないまま流された物の怪。
疫病や飢饉で人が死に、葬りきれない時代が実際にありました。鳥の妖怪は、その時代の記録として読めます。
鳥の妖怪についてよくある質問
鳥の妖怪にはどんなものがいますか。
源頼政に射落とされた鵺、「いつまで」と鳴いた以津真天、死体から生じた陰摩羅鬼が挙げられます。三体とも、葬られなかった死者と結びついて語られます。
「いつまで」と鳴く妖怪は何ですか。
以津真天です。『太平記』に、疫病と飢饉で死者が野に放置されたころ、宮中に現れて鳴き続けたという話があります。放置された死者が「いつまで捨てておくのか」と訴える声と読まれてきました。
鵺は鳥なのですか。
姿に鳥はありません。頭が猿、胴が狸、尾が蛇、手足が虎とされます。「鵺」がもともとトラツグミという鳥を指す言葉で、その夜の鳴き声から怪異の名になったため、鳥として扱われます。
天狗は鳥の妖怪ですか。
烏天狗は嘴を持ち翼で飛ぶため、鳥に数える見方もあります。この図鑑では姿の中心が人であることから、天狗を人型の妖怪として扱っています。
陰摩羅鬼はどんな妖怪ですか。
新しい死体から生じた気が化けた怪鳥です。黒い鶴のような姿で目が灯火のように光るとされ、供養を怠る僧のもとに現れて羽ばたき叫ぶと伝わります。
鳥の妖怪の一覧(収録しているすべての妖怪) 36体
本文で取り上げなかったものも含めて、この種別に属する妖怪をすべて並べています。名前を押すと個別ページへ移ります。