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和歌山県

送り雀(おくりすずめ)とはどんな妖怪か|姿と伝承

送り雀  / オクリスズメ

鳥の妖怪 各地の伝説

夜の山道で鳴きながら人を送り、送り狼の出現を知らせる鳥の怪異。

送り雀の姿を描いた図

Nekosuki 「熊野古道中辺路 牛馬童子口〜近露(和歌山県田辺市中辺路町)」 2013年 / CC BY-SA 出典

送り雀とはどんな妖怪か

送り雀は、和歌山県の山道で人の前後を飛ぶように鳴く怪異です。声は「チチチチ」「チンチン」と表され、暗闇の中で鳴く位置だけが前後へ移ります。

声のあとに送り狼が現れる話、夜に飛ぶため普通の鳥ではないとする話があります。小鳥一羽の伝記ではなく、暗い道を歩く人の周りで、見えない声だけが位置を変える怪異です。

送り雀の漢字表記と読み方

「おくりすずめ」と読みます。「雀送り」と語順を替える例もあります。夜雀と重なる地域がありますが、呼び名と送り狼との関係は土地ごとに異なります。

送り雀(おくりすずめ)

紀伊地方で夜道について来る鳥の怪異の名。

送雀(おくりすずめ)

「送り」の仮名を省いた資料上の表記。

夜雀(よすずめ)

四国・紀伊で近い怪異に使われる名。地域により内容が異なる。

送り雀の姿と特徴

雀の名を持ちながら、目に映る鳥の身体は語られません。人が感じるのは、暗い道の前や後ろから続く小鳥の声です。羽色や大きさの代わりに、「どこまで歩いても声がついて来る」という体験が姿を作っています。

送り雀の伝承記録

  1. 提灯の火へ鳴き声がついて来る
  2. チチチチと前後を飛ぶように鳴く
  3. 誰もその姿を見たことがない
  4. 鳴き声のあとに送り狼が現れる
  5. 夜雀と呼ぶ土地では働きも変わる

提灯の火へ鳴き声がついて来る

紀伊の山奥では、夜道を提灯で照らして歩くと、送り雀が火について来ると語られました。人が進めば声も進み、立ち止まれば周囲の闇から鳴き続けます。

鳥が明かりへ寄るというより、旅人の小さな灯りだけが暗い山中に浮かび、その周りを見えない声が囲む場面です。送り雀は遠くで一度鳴いて終わらず、人の歩調に合わせて道を「送る」ため、この名で呼ばれます。

チチチチと前後を飛ぶように鳴く

古い妖怪名彙は、送り雀を夜の山道で「チチチチ」と鳴きながら、人の後先を飛ぶ小鳥と説明します。「チンチン」と聞こえる土地もあり、鳴き声の写し方には違いがあります。

どちらにも共通するのは、声が一方向から聞こえないことです。後ろだけでなく前にも回り込み、旅人が同じものに追われているのか、別の鳥が先にいるのか分からないまま道が続きます。

誰もその姿を見たことがない

熊野路の記録は、送り雀が夜の山道で鳴きながらあとをつける一方、誰も姿を見たことがないと伝えます。声は確かに近いのに、提灯を向けても鳥の身体は見つかりません。

また、夜に飛ぶので普通の鳥ではないとする説明も残ります。雀という名は姿を観察して付けた分類ではなく、小さく続く鳴き声を昼の身近な鳥へ重ねた呼び名です。

鳴き声のあとに送り狼が現れる

紀州では、送り雀が鳴くと送り狼がいる知らせだとされます。送り狼は山道で人の後をつけ、転んだり弱みを見せたりした時に襲うと恐れられました。

この組み合わせでは、送り雀は知らせ役に回ります。先に小さな声が現れ、その後ろから大きな獣の気配が迫ります。旅人は鳴き声を聞くと足元へ注意し、転ばないよう歩き続けました

夜雀と呼ぶ土地では働きも変わる

夜道で声を立てる怪異は、四国や紀伊の各地で夜雀とも呼ばれます。送り雀と同じものとする説明もあれば、声を聞くと送り狼が来る、憑かれる、ただ後をついて来るなど、土地によって続きが変わります。

紀伊の送り雀では、細い鳴き声のあとに送り狼が近づきます。夜雀が別の怪異を招く土地もあるため、鳴き声の先に何が現れるかまで見ると地域ごとの話を分けられます。

送り雀の伝承地域

和歌山県の熊野路や旧南部川村を含む紀伊の山間部に記録があります。地図は一つの道ではなく伝承地域を示します。

紀伊山地(きいさんち)

送り雀の伝承地域

地図で開く

紀伊山地の所在地:和歌山県

山道を夜に歩く人へ鳴き声がついて来る話が複数の土地に伝わります。

示しているのは紀伊の山中です。夜間の山道探索は勧めません。

送り雀の正体と考えられているもの

送り雀は、紀伊の夜道で人の前後から鳴き、送り狼の接近を知らせる怪異です。小さな鳥の声が、転べば襲われる山道の危険を先に告げ、歩く人へ足元を確かめさせました。

送り雀をめぐる妖怪のつながり

同じ地域・原典 姿・性質が似る 対立・退治 混同・地域変異

送り雀が登場する作品

送り雀は、姿を見た者がいない怪異です。

熊野路の記録は、夜の山道で鳴きながらあとをつける一方、誰も姿を見たことがないと伝えます。 提灯を向けても、鳥の身体は見つかりません。

雀という名は、姿を観察して付けた分類ではありません。小さく続く鳴き声を、昼の身近な鳥へ重ねた呼び名です。

送り雀が登場する民俗学

妖怪談義

柳田国男の妖怪論集。個々の妖怪を、全国の分布と名の変化のなかへ置いて論じています。

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綜合日本民俗語彙

全国の民俗語彙を集めた辞典。妖怪名だけでなく、土地ごとの言い回しごと記録されています。

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送り雀についてよくある質問

送り雀とはどんな妖怪ですか。

紀伊の夜道で「チチチチ」「チンチン」と鳴きながら、人の前後について来る鳥の怪異です。目に見える姿より、歩く人をどこまでも追う声が中心になります。

送り雀の姿は見えますか。

小鳥と説明されますが、熊野路では誰も鳥の身体を見ていないと語られます。暗い道の前後へ移る鳴き声が中心で、羽色や大きさを定めた姿は伝わっていません。

送り雀が鳴くと何が起こりますか。

紀州では、そのあとに送り狼が現れる知らせとされました。送り狼は人が転んだ時に襲うと恐れられたため、旅人は鳴き声を聞くと足元へ注意して歩き続けます。

送り雀と夜雀は同じですか。

重ねて呼ぶ地域があり、中身は土地ごとに変わります。紀州の送り雀は、夜道で人の前後から鳴き、その後に送り狼が現れる知らせになる点が特徴です。

送り雀と併せて覚えたい言葉・用語

送り狼(おくりおおかみ)

山道で人の後をつけ、転ぶと襲うと恐れられた狼の怪異。

夜雀(よすずめ)

夜道で鳴く鳥の怪異に用いられる地域名。送り雀との関係は土地ごとに違う。

熊野路(くまのじ)

熊野へ通じる紀伊の道。送り雀の話が伝わる山道の地域。

送り雀の参考資料

この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。

  1. 国際日本文化研究センター「送り雀」
  2. 国際日本文化研究センター「送り雀、狼」
  3. 国際日本文化研究センター「送雀、ヨスズメ」