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全国に伝わるもの

木の葉天狗(このはてんぐ)とはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品

木の葉天狗  / コノハテング

天狗山の妖怪鳥の妖怪 各地の伝説怪談・百物語

大きな鳥の姿や人面の鳥として記録される、天狗の一種。

木の葉天狗の姿を描いた図

林十江 「木の葉天狗」 江戸時代 / パブリックドメイン 出典

木の葉天狗とはどんな妖怪か

木の葉天狗は、江戸時代の随筆や各地の怪談に登場する天狗です。大井川では翼長六尺ほどの大鳥、天狗界の話では白狼、岩国では猟師をからかう小僧として現れます。

同じ名の下に、大天狗の下で働くもの、鳥獣に近いもの、人へ小さな怪異を起こすものという三つの像が並びます。場所と書物が変わるたび、木の葉天狗の姿と役目も変わります。

木の葉天狗の漢字表記と読み方

「このはてんぐ」と読みます。「木葉天狗」とも書きます。境鳥と重ねる用例もありますが、古い記述には大鳥・白狼・小僧という異なる像が並びます。

木の葉天狗(このはてんぐ)

鳥獣に近い下位の天狗を指す呼び名。

木葉天狗(このはてんぐ)

「の」を送らずに書く別表記。

白狼(はくろう)

『甲子夜話』の天狗界の説明で木の葉天狗に重ねられる名。

木の葉天狗の姿と特徴

大井川では鳶に似た翼を広げた大鳥、天狗界では老いた狼から生じた白狼、岩国では小僧へ化けます。鼻高の山伏姿だけに定まらず、鳥・獣・人の姿を取る天狗です。

木の葉天狗の伝承記録

  1. 夜の大井川へ大鳥の群れが降りる
  2. 魚を捕る姿が木の葉天狗と呼ばれる
  3. 天狗界では薪を売り、荷を運ぶ
  4. 岩国では小僧が猟師の弾を抜く
  5. 大天狗とは姿より役目が違う

夜の大井川へ大鳥の群れが降りる

『諸国里人談』は、駿河と遠江の境を流れる大井川で、夜になると大鳥のようなものが数多く飛来したと伝えます。翼のまわりは六尺ほどあり、鳶に似た羽を広げて川へ降りました。

群れは水辺で魚を捕ります。人が近づくと襲いかかるのではなく、気配を察して飛び去りました。昼の渡河が難所として知られた大井川に、夜だけ別の住人が集まる場面です。

魚を捕る姿が木の葉天狗と呼ばれる

この大鳥を土地の人は木の葉天狗と呼びました。鼻高の天狗が魚を釣るのではなく、鳥の身体で川へ入り、自ら餌を捕ります。天狗の名を持ちながら、暮らしぶりは猛禽に近いものです。

「木の葉」は、山野に属する下位の天狗を指す言葉です。大きな鳥の怪異を、山野に属する下位の天狗として捉えた呼び名です。大天狗のように寺社や山の主として君臨せず、人目を避けて群れで動きます

天狗界では薪を売り、荷を運ぶ

松浦静山の『甲子夜話』が載せる天狗界の話では、木の葉天狗は白狼とも呼ばれます。老いた狼が天狗になったもので、薪を売り、山へ登る人の荷を運ぶとされました。

ここでは木の葉天狗は大鳥ではなく、天狗社会の働き手です。大天狗の下で日々の仕事を担い、位は低いと語られます。姿の違いよりも、山の世界にも人間社会のような役割と上下があるという想像が前へ出ています。

喜田貞吉は「憑き物系統に関する民族的研究」で、鞍馬の天狗を位ごとに並べています。

所謂魔王大僧正を始めとして、霊山坊・帝金坊・多聞坊・日輪坊・月輪坊・天実坊・静弁坊・道恵坊・蓮知坊・行珍坊以下、名もない木の葉天狗・烏天狗の末に至るまで、御眷属の護法が甚だ多い

「名もない」と書かれています。 坊号を持つ天狗の下、末端に置かれるのが木の葉天狗です。

岩国では小僧が猟師の弾を抜く

岩国地方の『岩邑怪談録』では、木の葉天狗が小僧の姿で猟師の前へ現れます。小僧は自分を撃ってみろと挑み、猟師が銃を構えても恐れません。

猟師が撃つと、小僧は倒れず、抜き取った弾を返して消えました。位が低くとも、人の武器を軽々と無効にします。人の武器を軽々と無効にし、猟師の自信をからかう怪異です。

大天狗とは姿より役目が違う

大天狗は高い山の名を背負い、山伏姿や高い鼻で描かれる首領格です。木の葉天狗は群れで魚を捕り、荷を運び、小僧に化けて猟師へいたずらします。

鳥の顔を持つ烏天狗と外見が重なる場合もあり、呼び分けは資料ごとに変わります。大天狗の下で動く山野の働き手という役目が、木の葉天狗を首領格から分けています。

喜田はさらに、天狗そのものの出どころにも踏み込みます。

これらはやはりその地の地主神すなわち先住民の現れと見るべきものであろうと解せられる

(地主神=その土地にもとからいた神)山の主が、後から来た側に天狗と呼ばれた。 木の葉天狗が群れで山野に暮らす姿は、この見方に沿っています。

木の葉天狗の伝承地域

木の葉天狗は、大井川では大鳥、岩国では小僧として伝わります。二地域は異なる話の舞台です。

木の葉天狗の正体と考えられているもの

木の葉天狗は、鳥や狼に近い山の異類を天狗の世界へ組み入れた呼び名です。大井川の魚捕り、天狗界の荷運び、岩国の小僧という三つの記録は、大天狗の下でも独自の暮らしと力を持つ存在を描いています。

木の葉天狗をめぐる妖怪のつながり

木の葉天狗が登場する作品

木の葉天狗は、天狗の末端に置かれた存在です。

喜田貞吉は、鞍馬の天狗を坊号を持つものから並べ、「名もない木の葉天狗・烏天狗の末に至るまで」 と書きました。

大天狗のように山の主として君臨せず、群れで魚を捕り、荷を運びます。 『甲子夜話』では白狼とされ、天狗社会の働き手として描かれました。 位は低くとも、猟師の弾を抜き取るだけの力は持っています。

木の葉天狗が登場する古典・記録

諸国里人談

江戸中期の見聞集。大井川に夜ごと降りて魚を捕る、翼六尺ほどの大鳥として伝えます。

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甲子夜話

松浦静山の随筆。天狗界の話のなかで、木の葉天狗を白狼とし、薪を売り荷を運ぶ働き手として記します。

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木の葉天狗についてよくある質問

木の葉天狗とはどんな妖怪ですか。

大井川では魚を捕る大鳥、天狗界では薪売りや荷運びをする白狼、岩国では猟師をからかう小僧として現れます。大天狗の下で働く、鳥獣に近い天狗です。

木の葉天狗と烏天狗は同じですか。

鳥に近い姿で重なることがあり、呼び分けは資料ごとに変わります。木の葉天狗は下位の働き手としての役割が目立ちます。

木の葉天狗はどこに現れますか。

静岡の大井川では夜に群れて魚を捕る大鳥、山口県の岩国では銃弾を抜いて猟師へ返す小僧として現れます。一つの県に限らず、土地ごとに姿も話も変わります。

木の葉天狗は弱い天狗ですか。

位が低いという話はありますが、岩国の怪談では銃弾を抜いて猟師へ返します。地位と怪異の力は別のものです。

木の葉天狗と併せて覚えたい言葉・用語

諸国里人談(しょこくりじんだん)

大井川で魚を捕る木の葉天狗を収める江戸時代の奇談集。

甲子夜話(かっしやわ)

松浦静山の随筆。木の葉天狗を白狼とする天狗界の話を収める。

岩邑怪談録(がんゆうかいだんろく)

岩国地方の怪談集。小僧に化けて猟師の弾を返す話を収める。

木の葉天狗の参考資料

この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。

  1. 国際日本文化研究センター「木の葉天狗」
  2. 国立歴史民俗博物館 khirin「諸国里人談」
  3. 国立国会図書館デジタルコレクション『甲子夜話:他五篇』
  4. 国立国会図書館サーチ『岩邑怪談録』
  5. 青空文庫 喜田貞吉「憑き物系統に関する民族的研究」