火の妖怪一覧|煙々羅・火車・不知火・輪入道
日本の妖怪に、火そのものの妖怪は多くありません。
火は、恐れられたわりに妖怪になっていない。
収録しているのも四体だけです。しかも四体とも、火のあらわれ方が違います。煙、火の車、海の上の火、燃える車輪。
このページでは、収録している火の妖怪を横に並べて見わたします。
火の妖怪とは
煙の妖怪|煙々羅 1体
煙々羅(えんえんら)は、煙のなかに顔が浮かぶ妖怪です。
煙そのものが妖怪になった例は、ほかにない。
鳥山石燕の画集に描かれたもので、心の清らかな者にしか見えないとされます。害を加える話は伝わっていません。
伝えがほとんど残っていない妖怪です。 絵と短い説明だけがあり、どこの土地の話かも分かっていません。
石燕の描いた妖怪には、絵が先にあって話が後というものが少なくありません。煙々羅はその代表格です。
姿だけがあり、物語がない。
囲炉裏の煙を見ていて生まれた見立て、という読み方が示されていますが、確かめられてはいません。
死体を奪う火|火車 1体
火車(かしゃ)は、葬列や墓場から死体を奪うとされる妖怪です。
年を経た猫が化したものとされる。
火の妖怪でありながら、獣の妖怪でもあります。燃える車に乗って現れ、悪事を働いた者の死体を奪って去るとされました。
この妖怪には、暮らしの側の理由がはっきりあります。
猫を死者に近づけるな。
通夜の間、遺体のそばに刃物を置く、猫を締め出す。こうした慣習と、火車の話は一続きになっています。
仏教の「火の車」(罪人を地獄へ運ぶ車)と結びついて広まった、と説明されます。「家計が火の車」という言い方も、もとはここから来ています。
海に浮かぶ火と、燃える車輪 2体
火の妖怪を並べる
四体は、火のあらわれ方がそれぞれ違います。
| 妖怪 | 火のかたち | すること | もう一つの性格 |
|---|---|---|---|
| 煙々羅 | 煙 | 顔が浮かぶだけ | なし |
| 火車 | 燃える車 | 死体を奪う | 獣(年を経た猫) |
| 不知火 | 海上の火 | 見えるだけ | 水 |
| 輪入道 | 燃える車輪 | 魂を抜く | 器物 |
並べると、火だけの妖怪がほとんどいないとわかります。
火車は獣、不知火は水、輪入道は器物。火だけなのは煙々羅だけ。
火は単独で妖怪になりにくく、何かと組み合わさって現れます。水の妖怪が水そのものとして立つのとは対照的です。
理由として、火が人の手で起こすものだったことが挙げられます。川や海は人の手の外にありますが、火は毎日自分で焚くものでした。
毎日扱っているものは、得体が知れないままにならない。
もうひとつ、火にまつわる怪異の多くは霊の話になりました。人魂、鬼火、狐火。これらは死者や狐の側で語られ、火の妖怪として独立していません。
火は、日本の妖怪では脇に回ったと言えます。
火の妖怪についてよくある質問
火の妖怪にはどんなものがいますか。
煙のなかに顔が浮かぶ煙々羅、死体を奪う火車、海上に現れる不知火、炎の車輪の輪入道が挙げられます。数は多くありません。
なぜ火の妖怪は少ないのですか。
火にまつわる怪異の多くが霊の話として語られたためと説明されます。人魂や鬼火、狐火は死者や狐の側で扱われ、火の妖怪として独立していません。
火車とは何ですか。
葬列や墓場から死体を奪うとされる妖怪です。年を経た猫が化したものとされ、燃える車に乗って現れます。猫を死者に近づけるなという慣習と一続きになっています。
不知火の正体は何ですか。
漁火が大気の温度差で異常屈折して見える現象と分かっています。八代海や有明海で、旧暦八月一日前後の風のない夜に見えるとされます。
輪入道を避ける方法はありますか。
「この家に住むは勝母の里」と書いた札を戸口に貼れば来ないという対処法が伝わります。輪入道は見た者の魂を抜くとされる妖怪です。
火の妖怪の一覧(収録しているすべての妖怪) 97体
本文で取り上げなかったものも含めて、この種別に属する妖怪をすべて並べています。名前を押すと個別ページへ移ります。