茨城県でさまざまな怪火をいう名。蒟蒻玉が光って飛ぶことも、山鳥の光を見誤ることもあるとされた。
飛び物とはどんな妖怪か
飛び物はひとことで言えば、空を飛ぶ光の総称です。茨城県の話です。
国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースは、柳田國男「妖怪名彙(五)」(『民間伝承』、1938年)を典拠に、様々な怪火を飛び物というと記します。
そのうえで、二つの具体例を挙げています。
一つは、蒟蒻玉が飛び物になって光を放って飛ぶことがあるというもの。蒟蒻玉は、こんにゃくの地下茎です。
もう一つは、夜に山鳥が飛ぶと、光って飛び物と間違えることがあるというものです。
この記録の特徴は、怪異の名でありながら、見誤りの可能性まで一緒に語られている点にあります。
飛び物の漢字表記と読み方
読みは「とびもの」です。
飛ぶもの、という以上の意味はありません。特定の妖怪の名ではなく、空を飛ぶ怪しい光をまとめて呼ぶ言い方です。
同じような総称に、光り物があります。中世には、さまざまな怪火が光り物と呼ばれました。飛び物も、その仲間の言い方です。
飛び物(とびもの)
日文研データベースが示す表記。
トビモノ(とびもの)
同データベースの呼称読み。
飛び物の姿と特徴
飛び物に決まった姿はありません。記録にあるのは、飛ぶ光という形だけです。
基本 … さまざまな怪火の総称。
例1 … 蒟蒻玉が光を放って飛ぶ。
例2 … 夜の山鳥を見誤る。
大きさ、色、高さは記録されていません。
一つの妖怪の姿を描くことはできません。飛び物とは、姿ではなく「飛ぶ光」という括りの名です。
飛び物の伝承記録
蒟蒻玉が飛ぶ
記録が挙げる一つめの例は、蒟蒻玉が飛び物になって光を放って飛ぶというものです。
蒟蒻玉は、こんにゃくを作るもとになる地下茎です。畑で育て、掘り出して使います。畑の作物が光って飛ぶという話になります。
なぜ蒟蒻玉なのかは書かれていません。土から掘り出す丸いものが、光って飛ぶという取り合わせだけが記録されました。
山鳥の光を見誤る
二つめは、夜に山鳥が飛ぶと、光って飛び物と間違えることがあるというものです。
これは怪異の説明ではなく、見誤りの指摘です。 記録は、怪火とされたものの中に鳥の見誤りが混じっていることを書き添えています。
怪異の名を集めた「妖怪名彙」に、こうした注意が並んでいる点は見落とせません。土地の人が、すべてを怪異として受け取っていたわけではないことが分かります。
飛び物という名は、正体の分からない光と、分かる光の両方を含んでいました。
飛び物の伝承地域
公的データベースの地域欄は茨城県を示します。
村の名も道の名も記録されていないため、地図で指せるのは県の範囲までです。
茨城県内(いばらきけんない)
日文研データベースが示す伝承地域
茨城県内の所在地:茨城県
柳田國男「妖怪名彙(五)」の地域欄に対応します。
資料には、飛び物が見られたとされる村や道の名がありません。
飛び物の正体と考えられているもの
飛び物の正体は、記録の中でも一つに定まっていません。
そもそもこの名は、さまざまな怪火をまとめて呼ぶ言い方です。中身は幾通りもあります。
記録は二つの中身を挙げます。蒟蒻玉が光って飛ぶという話と、夜の山鳥を見誤るという指摘です。
つまり飛び物には、怪異として語られたものと、説明のつくものの両方が含まれます。その両方を同じ名で呼んでいたことが、この記録から分かります。
飛び物が記録された資料
飛び物を単独で扱った本は見当たりません。読めるのは柳田國男の「妖怪名彙」です。
怪火の総称としては光り物の名もあり、両方を並べて読むと、名の広がり方が見えてきます。
飛び物が記録された民俗資料
妖怪名彙(五)
柳田國男が『民間伝承』(1938年)に載せた中心資料です。
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飛び物についてよくある質問
飛び物とはどんな妖怪ですか。
茨城県で、さまざまな怪火をまとめて呼んだ名です。決まった一体を指す名としては使われていません。
蒟蒻玉が飛ぶとはどういうことですか。
記録に、蒟蒻玉が飛び物になって光を放って飛ぶことがあるとあります。理由は書かれていません。
山鳥との関係は何ですか。
夜に山鳥が飛ぶと光って見え、飛び物と間違えることがあると記録されています。見誤りの指摘です。
光り物とは違うものですか。
どちらも怪火の総称です。光り物は中世からの言い方として、別に記録されています。
飛び物と併せて覚えたい言葉・用語
蒟蒻玉(こんにゃくだま)
こんにゃくのもとになる地下茎。光って飛ぶことがあると記録されました。
光り物(ひかりもの)
中世からのさまざまな怪火の総称。飛び物と近い言い方です。
妖怪名彙(ようかいめいい)
柳田國男が『民間伝承』に連載した、各地の妖怪の呼び名を集めた記事です。
飛び物の参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。