高知県の怪火。草履を叩く、唾を吐くなどして招くと近寄ってくるといわれ、人の怨霊が変じたものとされた。

作者不明 「土佐お化け草紙 けち火」 1859年 / パブリックドメイン 出典
ケチビとはどんな妖怪か
ケチビはひとことで言えば、呼べば来る火です。高知県の話です。
国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースには、柳田國男「妖怪名彙(五)」(『民間伝承』、1938年)を典拠とする記録が三つ収められています。
一つめ。ケチビは竹の皮草履を三つ叩いて呼ぶと、近寄ってくる。
二つめ。草履の裏に唾を吐いて招くと、来る。
三つめ。ケチビは、だいたい人の怨霊が変化したものだと思われている。
呼び方が二通り、正体の見方が一つ。 これがケチビの記録の全部です。
いずれの記録にも、元々は人の無礼を許さないという意味だったらしいという説明が添えられています。
大きさ、色、出る時刻は書かれていません。
ケチビの漢字表記と読み方
読みは「けちび」です。
記録は、元々は人の無礼を許さないという意味だったらしいと説明を添えています。「けち」という語に、人を咎める意味合いが読み取られていたということです。
ケチビ(けちび)
日文研データベースが示す呼称。
怪火(けちび)
土佐で怪火にこの読みを当てる書き方。
ケチビの姿と特徴
ケチビの姿は、火です。記録に色や大きさの記述はありません。
呼び方1 … 竹の皮草履を三つ叩く。
呼び方2 … 草履の裏に唾を吐いて招く。
正体の見方 … 人の怨霊が変化したもの。
呼べば近寄ってくるという点が、ほかの怪火と大きく違います。多くの怪火は、見るだけ、逃げるだけの相手です。
近寄ってきたあとどうなるかは、記録されていません。
ケチビの伝承記録
草履を三つ叩いて呼ぶ
一つめの記録は、呼び方を具体的に伝えます。竹の皮草履を三つ叩く。
竹の皮草履は、竹の皮を編んだ履物です。数まで決まっていて、三つです。
二つめの記録は別の方法を挙げます。草履の裏に唾を吐いて招く。
どちらも草履を使います。 履物は地面と体の境にある道具で、各地の呪いや占いにも使われました。
なぜ草履なのかは書かれていません。
人の怨霊が変じたもの
三つめの記録は正体に触れます。ケチビは、だいたい人の怨霊が変化したものだと思われている。
「だいたい」「思われている」という言い方に注意が要ります。断定ではなく、土地での受け取られ方として書かれています。
怪火を死者の霊とみる考え方は各地にあります。人魂もその一つです。
ケチビの場合、そこに無礼を許さないという性格が重ねられています。呼べば来る火は、呼んだ者を試す火でもありました。
ケチビの伝承地域
公的データベースの地域欄は高知県を示します。
村や道の名は記録されていないため、地図で指せるのは県の範囲までです。
ケチビの正体と考えられているもの
ケチビの正体は、記録では人の怨霊が変化したものとされています。ただし「だいたいそう思われている」という書き方です。
火の玉を死者の霊とみる考え方は各地にあります。ケチビはその土佐での呼び名にあたります。
特徴的なのは、呼べば来るという点です。草履を叩く、唾を吐く。人の側から働きかける方法が伝わっています。
元々は人の無礼を許さないという意味だったらしいという説明と合わせると、呼んで来る火は、人の振る舞いを咎める火でもあったことになります。
ケチビが記録された資料
ケチビを単独で扱った本は見当たりません。読めるのは柳田國男の「妖怪名彙」です。
土佐の怪火としては知られた名で、高知の民俗をまとめた郷土資料にも現れます。「けちび」で索引を引くのが早道です。
ケチビが記録された民俗資料
妖怪名彙(五)
柳田國男が『民間伝承』(1938年)に載せた中心資料です。三つの記録が収められています。
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ケチビについてよくある質問
ケチビとはどんな妖怪ですか。
高知県の怪火です。草履を叩く、唾を吐くなどして招くと近寄ってくるといわれ、人の怨霊が変じたものとされました。
どうやって呼ぶのですか。
竹の皮草履を三つ叩く方法と、草履の裏に唾を吐いて招く方法が記録されています。
近寄ってきたらどうなりますか。
記録されていません。呼べば来るというところまでが伝えられています。
名前の意味は何ですか。
記録には、元々は人の無礼を許さないという意味だったらしい、と添えられています。
ケチビと併せて覚えたい言葉・用語
竹の皮草履(たけのかわぞうり)
竹の皮を編んだ履物。三つ叩くとケチビが来るとされました。
怨霊(おんりょう)
恨みを持つ死者の霊。ケチビの正体としてこの見方が記録されています。
妖怪名彙(ようかいめいい)
柳田國男が『民間伝承』に連載した、各地の妖怪の呼び名を集めた記事です。
ケチビの参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。