神奈川県の怪火。狐が口にあぶくを立てると光り、提灯のように二尋ほど燃えるとされた。
キツネッピとはどんな妖怪か
キツネッピはひとことで言えば、狐の口から出る火です。神奈川県の話です。
国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースは、伊藤最子「妖怪名彙」(『民間伝承』、1939年)を典拠に、次のように記します。狐が口にあぶくを立てるとキツネッピが光る。
見え方も具体的です。提灯をつけたように見え、2尋(約3.6m)ほどに燃えている。
そして、対処が伝わっています。キツネッピが出たときは指を組み、その隙間から火を見ながら唱えごとをすると良い。
火の出どころ(狐の口のあぶく)、見え方(提灯・二尋)、対処(指の隙間から見る) ——三つがそろって記録された、細かい記録です。
キツネッピの漢字表記と読み方
読みは「きつねっぴ」です。
狐火(きつねび)が、話し言葉の中で詰まった形です。「きつねび」→「きつねっぴ」と変わります。
同じ火を指す名でも、土地ごとに言い方が違います。高知のケチビ、京都のワタリビシャク、茨城の飛び物。キツネッピは、狐と結び付けて呼ぶ形です。
キツネッピ(きつねっぴ)
日文研データベースが示す呼称。
狐っ火(きつねっぴ)
語の成り立ちに沿って漢字を当てた書き方。
キツネッピの姿と特徴
キツネッピの見え方は、記録にはっきり書かれています。
出どころ … 狐が口にあぶくを立てる。
見え方 … 提灯をつけたよう。
大きさ … 二尋(約3.6メートル)ほどに燃える。
対処 … 指を組み、その隙間から火を見ながら唱えごとをする。
二尋という具体的な数字が残っている点が珍しいところです。
狐そのものの姿については書かれていません。あぶくを立てる狐を見た、という形では記録されていません。
キツネッピの伝承記録
口のあぶくが光る
記録が伝える出どころは具体的です。狐が口にあぶくを立てると光る。
火が口から吹き出すのではなく、あぶく(泡)が光るという書き方です。狐の口元にできた泡が、提灯のように見えるということになります。
なぜ泡が光るのかは書かれていません。
狐火の由来を語る話は各地にあり、狐が骨をくわえて光らせる、尾を打ち合わせて火を出すなどの形があります。神奈川のこの記録は、あぶくという形を伝えています。
指の隙間から見る
この記録には、対処の作法が残っています。
指を組み、その隙間から火を見ながら唱えごとをすると良い。
伝わっているのは、逃げる作法ではなく見る作法です。見方を変えて見るという方法です。
指を組んで隙間から覗くという所作は、各地の呪いにも見られます。唱えごとの中身は書かれていません。
逃げずに、作法どおりに向き合う。 怪火に対する土地のやり方が、ここに残りました。
キツネッピの伝承地域
公的データベースの地域欄は神奈川県を示します。
村や道の名は記録されていないため、地図で指せるのは県の範囲までです。
キツネッピの正体と考えられているもの
キツネッピの正体は、記録では狐とされています。口に立てたあぶくが光るという説明まで付いています。
ただし、狐がなぜ光るあぶくを立てるのかは書かれていません。
狐火は全国に伝わる怪火で、土地ごとに出どころの説明が違います。神奈川のこの記録は、あぶくという形を伝える一例です。
二尋(約3.6メートル)という大きさと、指の隙間から見るという作法。 この二つが、キツネッピをほかの狐火の記録から区別しています。
キツネッピが記録された資料
キツネッピを単独で扱った本は見当たりません。読めるのは『民間伝承』に載った報告です。
狐火は各地に伝わり、まとめて扱った本が数多くあります。神奈川の呼び名として「きつねっぴ」で索引を引くと見つかります。
キツネッピが記録された民俗資料
妖怪名彙
伊藤最子が『民間伝承』(1939年)に載せた中心資料です。
Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。
キツネッピについてよくある質問
キツネッピとはどんな妖怪ですか。
神奈川県の怪火です。狐が口にあぶくを立てると光り、提灯のように二尋ほど燃えると記録されています。
二尋とはどのくらいですか。
約3.6メートルです。記録に具体的な数字が残っている珍しい例です。
出会ったらどうすればよいのですか。
記録では、指を組み、その隙間から火を見ながら唱えごとをすると良いとされます。唱えごとの中身は書かれていません。
狐火とは違うものですか。
同じ狐の火を指す呼び名です。キツネッピは、神奈川で使われた言い方にあたります。
キツネッピと併せて覚えたい言葉・用語
尋(ひろ)
両手を広げた長さの単位。二尋は約3.6メートルです。
狐火(きつねび)
狐のしわざとされる怪火。キツネッピはその神奈川での呼び名です。
唱えごと(となえごと)
怪異に向かって唱える言葉。中身は記録されていません。
キツネッピの参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。