愛知県北設楽郡で、夜通る人を提灯のような火が送ったという。古い榎を切ると出なくなった。
送り火とはどんな妖怪か
送り火はひとことで言えば、人を送る火です。愛知県北設楽郡の話です。
国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースは、柳田國男「妖怪名彙(五)」(『民間伝承』4巻2号・通巻38号、1938年、16頁)を典拠に、夜、人が通ると提灯のような火が出て送ってくるという所があったと記します。
火は、決まったところで消えました。 ある村の古い榎の木の下まで来ると消えるといいます。
そして結末があります。その古木を切ってしまったら、出なくなった。
怪異が終わった理由まで記録されている点が、この話の特徴です。
火の色や大きさは書かれていません。
送り火の漢字表記と読み方
読みは「おくりび」です。
盆に焚く送り火と同じ言葉ですが、この記録の送り火は、夜道で人の後ろに付く火です。
「送り」の付く怪異は各地にあります。送り犬、送り狼、静岡のオクリイタチ。いずれも夜道で人に付いてくるものです。この記録では、それが火の形をとります。
送り火(おくりび)
日文研データベースが示す表記。括弧つきで記録されています。
オクリビ(おくりび)
同データベースの呼称読み。
送り火の姿と特徴
送り火の姿は、提灯のような火です。
時 … 夜。
きっかけ … 人が通る。
動き … 出てきて送ってくる。
終わり … 古い榎の木の下まで来ると消える。
火の色、大きさ、高さは記録されていません。
害を加えたという記述もありません。送って、消えます。
送り火の伝承記録
榎の木の下で消える
この火には、決まった終点があります。ある村の古い榎の木の下です。
そこまで来ると消えます。 火が出る場所も、消える場所も決まっていました。
榎は、村境や道の辻に植えられることの多い木です。一里塚に植えられた例も知られます。
火は、その木までの道のりを送っていました。
古木を切ったら出なくなった
記録は結末まで伝えます。その古木を切ってしまったら、出なくなった。
怪異が終わった理由が書かれている記録は多くありません。
木を切ったことで火が出なくなった、という筋は、木そのものが火の元だったと土地の人が考えていたことを示します。
なぜ切ったのかは書かれていません。 火を止めるためだったのか、別の理由だったのかは分かりません。
残ったのは、切った後に出なくなった、という事実です。
送り火の伝承地域
公的データベースの地域欄は愛知県北設楽郡を示します。
村の名も道の名も記録されていないため、地図で指せるのは郡の範囲までです。同じ郡には火を貸せの話も伝わります。
北設楽郡周辺(きたしたらぐんしゅうへん)
日文研データベースが示す伝承地域
北設楽郡周辺の所在地:愛知県北設楽郡
柳田國男「妖怪名彙(五)」の地域欄に対応します。
資料には、榎があったとされる村の名がありません。
送り火の正体と考えられているもの
送り火の正体は確定していません。
狐や狸のしわざとも書かれていません。 記録が示すのは、古い榎と火が結び付いていたということだけです。
木を切ったら出なくなったという結末は、木に何かが宿っていたという考え方を示します。
送るという振る舞いは、害というより見送りに近い形です。 人に付いて、木のところで消える。それだけが伝わっています。
送り火が記録された資料
送り火を単独で扱った本は見当たりません。読めるのは柳田國男の「妖怪名彙」です。
「送り」の付く怪異をまとめた記述では、送り犬や送り狼と並べて扱われます。火の形をとる例として拾えます。
送り火が記録された民俗資料
妖怪名彙(五)
柳田國男が『民間伝承』4巻2号(1938年)に載せた中心資料です。
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送り火についてよくある質問
送り火とはどんな妖怪ですか。
愛知県北設楽郡の怪火です。夜に人が通ると提灯のような火が出て送ってきたと記録されています。
火はどこで消えるのですか。
ある村の古い榎の木の下まで来ると消えたと伝えられます。
なぜ出なくなったのですか。
その古木を切ってしまったら出なくなったと記録されています。
盆の送り火とは違うのですか。
言葉は同じですが、この記録の送り火は夜道で人に付いてくる火です。
送り火と併せて覚えたい言葉・用語
榎(えのき)
村境や道の辻に植えられることの多い木。火の終点とされました。
送り(おくり)
夜道で人の後ろに付いて行くことを指す言い方です。
火を貸せ(ひをかせ)
同じ北設楽郡に伝わる、夜道で火をねだる童女の怪異です。
送り火の参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。