幽霊と霊の一覧|幽霊と妖怪の違い、日本に伝わる霊のかたち
幽霊と妖怪は、どう違うのか。
この問いには、よく使われる説明があります。
妖怪は場所に出る。幽霊は人に出る。
もうひとつ、幽霊はもとが人であるという区別も広く使われます。ただし、どちらの線引きも例外だらけです。
このページでは、収録している幽霊と霊を横に並べて見わたします。
幽霊と妖怪の違い
よく挙げられる区別は二つです。
① 出る相手 ─ 妖怪はその場所を通る誰にでも、幽霊は特定の相手に出る
② もとの姿 ─ 幽霊はもとが人、妖怪はそうとは限らない
ただし、この線はきれいに引けません。
産女は難産で死んだ女の霊ですから、②では幽霊です。しかし橋のたもとを通る誰にでも現れるので、①では妖怪になります。
同じ一体が、基準を変えると別の側に落ちる。
この図鑑では「もとが人か、死者に由来するか」を目安に幽霊と霊へ入れていますが、それが唯一の正解というわけではありません。
もうひとつ加えるなら、幽霊には足がないという約束事があります。ただしこれは江戸時代の絵から広まった描き方で、それ以前の絵には足があります。
水に関わる霊|船幽霊と七人ミサキ 2体
死者の骨と、飢えの霊 3体
学校と噂の霊|現代に生まれた幽霊 3体
幽霊も、現代に新しく生まれています。
トイレの花子さんは学校のトイレに現れる少女の霊で、三番目の個室を三回叩くと返事をするという手順まで決まっています。
やり方が決まっている怪談は、子供のあいだで広がりやすい。
カシマさんも同じで、話を知った者に問いかけ、答えられないと体の一部を奪うとされます。知ってしまうと当事者になるという仕掛けが入っています。
古い幽霊との違いは、そこです。船幽霊は海に出なければ会いませんが、
花子さんとカシマさんは、話を聞いた時点で条件がそろう。
お菊虫は逆の方向を示します。皿を数えるお菊の霊が虫になって戻ったとされましたが、正体はジャコウアゲハの蛹でした。怪異として語られたものに、実物があった例です。
幽霊と霊を性格ごとに並べる
同じ霊でも、出方が違います。
| 種類 | 代表 | 誰に出るか | いつからの伝え |
|---|---|---|---|
| 水の霊 | 船幽霊・七人ミサキ | その海を通る者 | 江戸時代より前 |
| 飢えと骨 | 餓鬼・がしゃどくろ | 定まらない | 餓鬼は古い。がしゃどくろは昭和 |
| 産と死 | 産女 | 橋のたもとを通る者 | 中世 |
| 学校の霊 | 花子さん・カシマさん | 話を聞いた者 | 昭和後期以降 |
| 恨みの霊 | 鉄鼠・枕返し | 恨まれた側 | 中世 |
並べると、新しい霊ほど「聞いた人」に出るという変化が見えます。
場所に出る霊から、話を知った人に出る霊へ。
船幽霊も七人ミサキも、その海に行かなければ関係がありません。ところが花子さんとカシマさんは、話を聞いた時点で相手の側に入ってしまいます。
人の暮らしが海や山から離れ、怖い場所を共有しなくなったことと関わると読めます。共有できるのが学校と噂だけになれば、霊もそこへ移ります。
もうひとつ、成仏という考え方が日本の霊には強く働いています。七人ミサキは入れ替わりで人数を保ち、餓鬼は苦しみ続けます。
終わりが来ないことが、いちばん怖い。
幽霊と霊についてよくある質問
幽霊と妖怪の違いは何ですか。
よく使われる説明は二つあります。ひとつは出る相手の違いで、妖怪はその場所を通る誰にでも、幽霊は特定の相手に出るというもの。もうひとつは、幽霊はもとが人であるというものです。ただしどちらも例外が多く、産女のように基準を変えると別の側に落ちるものがあります。
幽霊に足がないのはなぜですか。
江戸時代の絵から広まった描き方とされます。それ以前の絵には足のある幽霊が描かれており、足がないことが古くからの決まりだったわけではありません。
七人ミサキはなぜ七人のままなのですか。
ひとり取り殺すと、そのぶんひとりが成仏して入れ替わるとされるためです。人数が減らないので、この霊には終わりが来ません。
がしゃどくろは古い妖怪ですか。
古くはありません。昭和中期に作られたもので、江戸時代の絵にも書物にも姿がありません。埋葬されなかった死者の骨が集まった巨大な骸骨とされます。
トイレの花子さんはいつから語られていますか。
昭和後期に学校で広まった怪談です。三番目の個室を三回叩くと返事をするという手順が決まっており、やり方が定まっている点が子供のあいだで広がりやすかった理由と説明されます。
幽霊と霊の一覧(収録しているすべての妖怪) 190体
本文で取り上げなかったものも含めて、この種別に属する妖怪をすべて並べています。名前を押すと個別ページへ移ります。