三歳の小児のような姿で、亡者の肝を食うとされる。日本では火車と同じものとされた。

鳥山石燕 「今昔画図続百鬼 魍魎」 1779年 / パブリックドメイン 出典
魍魎とはどんな妖怪か
魍魎はひとことで言えば、亡骸をねらうものです。
漢籍には、総称としての用法とは別に、具体的な姿や振る舞いを描写された魍魎が現れます。
『淮南子』には「罔両は状は三歳の小児の如し、色は赤黒し、目は赤く耳は長く、美しい髪をもつ」と記されます。
『本草綱目』には「罔両は好んで亡者の肝を食べる」とあり、『周礼』に、戈を執って壙に入り、方良(罔両)を駆逐する、とあると続きます。
罔両は虎と柏とを怖れるとも記されました。
日本では、亡者の肝を食べるという点から、火車と同一視されました。
魍魎の漢字表記と読み方
読みは「もうりょう」です。
日本では水神を意味する「みずは」と訓じられました。この語は「水波」「美豆波」「弥都波」などとも書かれます。
『史記』によれば、孔子は水の怪は龍や罔象であるとしました。
この意味は、山川の怪を意味する「魑魅」と対をなすようになります。 合わせて「魑魅魍魎」です。
魍魎(もうりょう)
石燕の絵に添えられた表記。
罔両(もうりょう)
漢籍での表記。「罔象」とも書かれます。
みずは(みずは)
日本での訓。水神を意味します。
魍魎の姿と特徴
石燕の絵の魍魎は、松の根方から這い出す姿です。
背丈 … 三歳の小児のよう。
色 … 赤黒い。
目 … 赤い。
耳 … 長い。
髪 … 美しい。
好むもの … 亡者の肝。
絵の手前には、投げ出されたような人の腕と脚が描かれています。
魍魎が登場する古典の物語
戈を執って墓穴に入る
『本草綱目』は『周礼』を引きます。 戈(ほこ)を執って壙(つかあな)に入り、方良(罔両)を駆逐する==。
墓を守る役目が、古くから定められていたことになります。
この図鑑の方相氏が、まさにその役をつとめる者です。
『本草綱目』はさらに、弗述(ふつじゆつ)というのがいて、地下にあり死人の脳を食べる==とも記します。
虎と柏を怖れる
罔両には、苦手なものがあります。
虎と柏です。
『本草綱目』は、弗述の首に柏を挿すと死ぬと記します。
墓のそばに柏を植える習わしは、この言い伝えと結び付けて語られます。
恐れる相手が分かっていることが、この妖怪の特徴です。
火車と同じものとされる
日本では、魍魎は死者の亡骸を奪う妖怪・火車と同一視されました。
江戸時代の根岸鎮衛『耳袋』に、次の話があります。
柴田という役人のもとに忠義者の家来がいたが、ある晩に「自分は人間ではなく魍魎」と言って暇乞いをした。
人間の亡骸を奪う役目が回ってきたので、ある村へ行かなければならないという。
翌日、家来の姿は消え、その村では葬儀の場が黒雲に覆われ、雲が消えると棺の中の亡骸が消えていた。
魍魎の伝承地域
魍魎をまつる社として広く知られたものは見当たりません。
語られてきたのは、墓場です。『周礼』の「壙に入る」という一句が、この妖怪の居場所を示しています。
魍魎の正体と考えられているもの
魍魎は、総称であると同時に、姿を持つ一体でもあるという二重の使われ方をしてきました。
総称としては、山川木石の精や、河童などさまざまな妖怪を指します。
姿を持つものとしては、三歳の小児のような赤黒いものです。
日本ではさらに、火車と結び付きました。 この図鑑には火車も収めています。
「みずは」の訓をたどると、ミヅハノメという水の神にゆき当たります。
魍魎が登場する作品
魍魎は、石燕の絵と『耳袋』で読めます。
「魑魅魍魎」という言い回しは、山の怪と水の怪を並べた語です。元をたどると、この妖怪に行き着きます。
魍魎が登場する古典
淮南子
前漢の書。三歳の小児のような姿を記します。
魍魎が登場する研究
本草綱目
李時珍、1596年。亡者の肝を食べる性質と、虎と柏を怖れることを記します。
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魍魎についてよくある質問
魍魎とは何ですか。
山や川、木や石などの精や、墓などに住む物の怪の総称です。姿を持つ一体としても語られます。
どんな姿ですか。
『淮南子』は三歳の小児のようで、赤黒く、目は赤く耳は長く、美しい髪を持つと記します。
何を食べるのですか。
『本草綱目』は、好んで亡者の肝を食べると記します。
火車と同じですか。
日本では亡骸を奪う点から同一視され、火車に類する話が魍魎の名で語られた例があります。
魍魎と併せて覚えたい言葉・用語
罔両(もうりょう)
漢籍での表記。「罔象」とも書かれます。
壙(つかあな)
墓穴のこと。『周礼』に戈を執って入ると記されます。
火車(かしゃ)
死者の亡骸を奪う妖怪。日本では魍魎と同一視されました。