香川県綾川町で、夜にナワスジを通ると話し声が聞こえ、聞くと患うとされた怪異。よい声で唄うともいう。

ヒチニンドウジとはどんな妖怪か
ヒチニンドウジはひとことで言えば、聞くと病む声です。香川県綾歌郡綾川町の話です。
国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースは、水野一典「香川県綾上町妖怪名彙」(『四国民俗』、1981年)を典拠に、次のように記します。
夜にナワスジを通るとヒチニンドウジの話し声がうつうつと聞こえ、それを聞くと患う。
続けて、ヒチニンドウシャとも言い、夜中によい声で唄うとあります。そして、山伏さんみたいな神さんだという場合もあると書かれています。
害があるのに、声はよい。 この食い違いが、この怪異の特徴です。
「ナワスジ」が何を指すかは記録に説明がありません。
ヒチニンドウジの漢字表記と読み方
読みは「ひちにんどうじ」です。ヒチニンドウシャとも呼ばれます。
「ヒチ」は「七」の訛った言い方です。西日本では、七を「ひち」と読む言い方が広く使われました。
七人の集まりを指す名は、各地の怪異に見られます。四国には七人ミサキという、七人一組で現れるとされる霊の話が伝わります。ヒチニンドウジもその流れに置くことができますが、記録に両者を結び付ける記述はありません。
ヒチニンドウジ(ひちにんどうじ)
日文研データベースが示す呼称。
ヒチニンドウシャ(ひちにんどうしゃ)
記録が併記する別の呼び方。
七人同志(しちにんどうし)
「ヒチ」を七と読む形に沿って字を当てた書き方。
ヒチニンドウジの姿と特徴
ヒチニンドウジに姿はありません。記録にあるのは、声とその害です。
時 … 夜。
場所 … ナワスジ。
音1 … 話し声がうつうつと聞こえる。
音2 … 夜中によい声で唄う。
害 … 聞くと患う。
別の見方 … 山伏のような神だともいう。
姿を見たという記録はありません。聞こえるのは声だけです。
ヒチニンドウジの伝承記録
聞くと患う声
記録の中心は、聞くと患うという一点です。
見るのでも、触れるのでもありません。耳に入れただけで病む。
声は「うつうつと」聞こえるとされます。はっきりした言葉ではなく、こもった話し声です。
何を話しているのかは記録されていません。 患ったあとどうすればよいかも書かれていません。
よい声で唄い、神ともいわれる
同じ記録は、別の面も伝えます。夜中によい声で唄う。
そして、山伏さんみたいな神さんだという場合もある。
害をなすものであり、よい声で唄うものであり、神でもある。 一つの名に、三つの受け取り方が同時に記録されています。
山伏は山を巡って祈る修行者です。その姿を思わせる神とみる見方は、この怪異を怖いだけのものにしていません。
ヒチニンドウジの伝承地域
公的データベースの地域欄は香川県綾歌郡綾川町を示します。採録当時の綾上町は、合併により現在の綾川町の一部です。
集落や道の名は記録されていないため、地図で指せるのは町の範囲までです。
綾川町周辺(あやがわちょうしゅうへん)
日文研データベースが示す伝承地域
綾川町周辺の所在地:香川県綾歌郡綾川町
採録地の綾上町は、合併して現在の綾川町になりました。
資料には、ナワスジという語の説明も、その場所の位置もありません。
ヒチニンドウジの正体と考えられているもの
ヒチニンドウジの正体は確定していません。
記録には三つの見方が並びます。患わせるもの、よい声で唄うもの、山伏のような神です。
名の「ヒチニン」は七人を指すとみられます。 七人一組の霊を語る話は四国にもありますが、この記録は両者を結び付けていません。
分かっているのは、夜・ナワスジ・話し声・患い、という四つだけです。
ヒチニンドウジが記録された資料
ヒチニンドウジを単独で扱った本は見当たりません。読めるのは水野一典の報告です。
四国には七人ミサキをはじめ、群れで現れる霊の話が伝わります。併せて読むと、名の付き方の近さが見えてきます。
ヒチニンドウジが記録された民俗資料
香川県綾上町妖怪名彙
水野一典が『四国民俗』(1981年)に載せた中心資料です。
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ヒチニンドウジについてよくある質問
ヒチニンドウジとはどんな妖怪ですか。
香川県綾川町の怪異です。夜にナワスジを通ると話し声が聞こえ、それを聞くと患うとされました。
声はどんな声ですか。
うつうつとした話し声と記録され、夜中によい声で唄うともいわれました。
神だという話もあるのですか。
あります。山伏さんみたいな神さんだという場合もある、と記録されています。
ナワスジとはどこですか。
記録に説明がありません。場所を示す語とみられますが、位置は分かりません。
ヒチニンドウジと併せて覚えたい言葉・用語
七人ミサキ(しちにんみさき)
四国などに伝わる、七人一組で現れるとされる霊。名の形が近い例です。
山伏(やまぶし)
山を巡って修行する行者。この怪異を神とみる見方で引き合いに出されます。
四国民俗(しこくみんぞく)
ヒチニンドウジの報告が載った雑誌です。
ヒチニンドウジの参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。