本文へ移動

全国に伝わるもの

生霊(いきりょう)とはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品

生霊  / イキリョウ

幽霊と霊 鳥山石燕の絵

生きている人の魂が体を離れて動き回るもの。恨みだけでなく恋でも憑く。

生霊の姿を描いた図

鳥山石燕 「画図百鬼夜行 生霊」 1776年 / パブリックドメイン 出典

生霊とはどんな妖怪か

生霊はひとことで言えば、体を抜け出した魂です。

人間の霊(魂)が自由に体から抜け出すという事象は古来人々の間で信じられており多くの生霊の話が文学作品や伝承資料に残されています

『広辞苑』は生きている人の怨霊で祟りをするものとします。

ただし実際には、恨み以外の理由で他者に憑く話もあります。

死の間際の人間の霊が生霊となって動き回ったり、親しい者に逢いに行ったりする事例も見られます。

代表は『源氏物語』の六条御息所です。 源氏の愛人である六条御息所が生霊となって、源氏の子を身籠った葵の上を呪い殺します。

生霊の漢字表記と読み方

読みは「いきりょう」です。「しょうりょう」「せいれい」「いきすだま」とも読みます

『源氏物語』では「いきすだま」と読まれました。

生霊(いきりょう)

石燕の絵に添えられた表記と読み。

生霊(いきすだま)

『源氏物語』での読み。

生霊(しょうりょう)

「しょうりょう」「せいれい」とも読まれます。

生霊の姿と特徴

石燕の絵の生霊は、行灯のそばに立つ女です。

姿 … 生きている人と変わらない。
… 書き付けを持つ。
足もと … 灯りを入れた行灯。
そば … 香炉、硯箱、書物。
背後 … 屏風。

恐ろしい姿では描かれていません。 見た目では、生きた人と見分けがつきません。

生霊が登場する古典の物語

  1. 六条御息所の場合
  2. 近江から京へ来る
  3. 恋しさで憑く
  4. 抜け首になって歩く

六条御息所の場合

古典文学では、『源氏物語』(平安時代中期成立)の話が有名です。

源氏の愛人である六条御息所が生霊となって、源氏の子を身籠った葵の上を呪い殺します。

能楽の『葵上』も、その題材の翻案です。

本人は、自分が抜け出していることを知りません

衣に焚きしめた香の匂いが残っていて気づく——その場面がよく知られます。

近江から京へ来る

『今昔物語集』(平安末期成立)「近江国の生霊が京に来りて人を殺す話」があります。

ある身分の低い者が四つ辻で女に会い、某民部大夫の邸までの道案内を頼まれます。

じつは、その女がその大夫に捨てられた妻の生霊でした。

邸につくと、門が閉ざされているのに女は消え、しばらくすると中で泣き騒ぐ音が聞こえました。

翌朝尋ねると、家の主人は近江の妻の生霊がとうとう現れたとわめきたて、まもなく死んだといいます。

恋しさで憑く

憎らしい相手に憑く話と比べると数は少ないものの、恋する相手に取りつく話もあります。

江戸中期の随筆集『翁草』56巻「松任屋幽霊」によれば、享保14か15年(1729〜30年)、京都に松任屋徳兵衛の14、5歳の息子・松之助に、近所の二人の少女が恋をし、その霊が取りつきました。==

松之助は宙に浮くなど体が激しく動き、霊の姿は見えないまま会話する様子がくりかえされました。

高名な僧の折伏で回復しましたが、噂が広まり、好奇の見物人がたかるようになったといいます。

抜け首になって歩く

寛文時代の奇談集『曽呂利物語』にある一篇では、女の生霊が抜け首となってさまよい歩きます

ある夜、上方への道中の男が、越前国北の庄(現福井市)の沢谷というところで、石塔の元から鶏が道に舞い降りたのを見たと思いきや、それは女の生首でした。==

男が斬りつけて首を家まで追いつめると、中で女房が悪夢から目覚めて夫を起こし、「外で男に斬りつけられて逃げまどう夢を見た」と語ります。

かつては、夢とは生霊が遊び歩いている間に見ている光景という解釈があったことがうかがえます。

生霊の伝承地域

生霊をまつる社として広く知られたものは見当たりません。

死に瀕した人間の魂が生霊となる伝承は、日本全国に見られます。青森県西津軽郡ではアマビト、秋田県仙北郡では飛びだまと呼ばれました。

生霊の正体と考えられているもの

生霊が抜け出す理由は、恨みのほかにもあります

『広辞苑』は怨霊とします。 しかし別れの挨拶逢いたさ——さまざまな理由で抜け出します

青森県西津軽郡では、死の直前の魂が出歩いたり物音を立てるのを「アマビト(あま人)」といい、逢いたい人のもとを訪ねるとされました。

柳田國男によれば、秋田県仙北郡では自分の魂を遊離させてその光景を夢見できる能力を「飛びだまし」と称しました。

この図鑑には、対語として死霊も収めています。

生霊が登場する作品

生霊は、石燕の絵『源氏物語』で読めます。

能の『葵上』では、六条御息所の生霊が舞台に現れます姿を見せて語る点が、物語とは違うところです。

生霊が登場する古典

画図百鬼夜行

鳥山石燕、1776年。行灯のそばに立つ女として描いています。

Amazonで本・漫画を探す

源氏物語

紫式部。六条御息所が生霊となる場面が知られます。

Amazonで本・漫画を探す

曽呂利物語

寛文期の奇談集。抜け首となってさまよう生霊を載せます。

Amazonで本・漫画を探す

生霊が登場する能

葵上

『源氏物語』の生霊の場面を題材にした能です。

日本の妖怪の本を探す

Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。

生霊についてよくある質問

生霊とは何ですか。

生きている人の霊魂が体外に出て自由に動き回るとされるものです。対語は死霊です。

恨みがないと出ないのですか。

恋する相手に取りつく話や、死の間際に親しい者を訪ねる話もあります。

有名な例はありますか。

『源氏物語』の六条御息所が、葵の上を呪い殺す場面が知られます。

本人は気づいているのですか。

気づいていない話が多く、夢として見ていたという解釈も伝わります。

生霊と併せて覚えたい言葉・用語

六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)

『源氏物語』の登場人物。生霊となって葵の上を呪い殺します。

アマビト(あまびと)

青森県西津軽郡の呼び名。死の直前の魂が逢いたい人を訪ねます。

飛びだまし(とびだまし)

秋田県仙北郡の呼び名。魂を遊離させて夢見る能力を指します。