蛇の妖怪一覧|濡女・野槌と、蛇の姿をとる妖怪
蛇の妖怪とは
蛇の姿、または蛇の性質を持つ妖怪です。
蛇には、他の動物にない扱われ方があります。
祀られる側にも、祟る側にも回る。
水をつかさどるものとして敬われる一方、恨みを抱いた女が蛇になるという筋立てが繰り返し語られてきました。安珍と清姫の話がよく知られています。
この図鑑の「蛇と竜」には、いま竜が入っていません。 収録している三体はすべて蛇です。無いものを在るように書かないため、ここに明記しておきます。
女の姿をとる蛇|濡女 1体
転がる蛇|野槌 1体
野槌(のづち)は、柄のない槌のような形の蛇です。
転がって坂を下り、人に噛みつく。
頭も尾も区別がつかない太い胴だけの姿で、坂の上から転がり落ちてくるとされます。足がないのに速い、という点が恐れられました。
『和漢三才図会』などに記述があり、山中で見たという記録が江戸時代を通じて残っています。
近代には、この妖怪と「ツチノコ」を結びつける見方が広まりました。 昭和後期のツチノコ探しの流行は、古い野槌の記録を下敷きにしています。
古い妖怪の名が、現代の未確認生物の話に使われた。
妖怪の伝えが、時代を越えて別の形で生き延びた例です。
掲示板から生まれた蛇|姦姦蛇螺 1体
姦姦蛇螺(かんかんだら)は、祠に封じられていたとされる、女の体を継ぎ合わせた蛇形のものです。
古い伝えではありません。 掲示板に書かれた文章から広まった、現代の怪談です。
書かれた日付が残っている妖怪。
興味深いのは、古い蛇の妖怪の型をそのまま使っている点です。
女の体、蛇の形、封じられた祠。
濡女も女と蛇の組み合わせであり、蛇を祠に封じる話は各地にあります。新しく作られた怪談が、古い型を借りているとわかります。
作り話として片づけることもできますが、どの型が今も効くのかを示しているとも読めます。女と蛇の組み合わせは、現代でも通じたということです。
蛇の妖怪を並べる
三体は、生まれた時代も姿も違います。
| 妖怪 | 姿 | すること | いつからの話 |
|---|---|---|---|
| 濡女 | 上半身が女、下が蛇 | 子を抱かせて離れなくする | 江戸時代の絵と伝え |
| 野槌 | 柄のない槌のような胴 | 転がって噛みつく | 江戸時代の書物 |
| 姦姦蛇螺 | 女の体を継ぎ合わせた蛇形 | 祠から出て祟る | 掲示板。現代 |
並べると、女と蛇の組み合わせが時代を越えて残っているとわかります。
江戸の濡女と、現代の姦姦蛇螺が、同じ形をしている。
三百年離れた二つの怪異が、上が女で下が蛇という同じ姿を選んでいます。新しく作った怪談が、結局は古い型に戻ったということです。
もうひとつ、野槌は別の道をたどりました。江戸の書物にあった記録が、昭和のツチノコ探しに引き継がれます。
妖怪から未確認生物へ。
名前と姿は残り、扱われる枠だけが変わりました。
蛇そのものは、日本の各地で水と結びついて敬われてきました。恐れと敬いが同じ生き物に向くという点で、蛇は他の動物と違う位置にいます。
蛇の妖怪についてよくある質問
蛇の妖怪にはどんなものがいますか。
髪の濡れた濡女、柄のない槌のような姿の野槌、掲示板から広まった姦姦蛇螺を収録しています。竜はまだ収めていません。
なぜ蛇の妖怪は女の姿をとるのですか。
蛇が脱皮して生まれ変わる性質から、死んで蘇るものとして見られ、出産や執着の話に重ねられたという読み方が示されています。ただし確かめられた説明ではありません。
野槌とツチノコは同じものですか。
別のものですが、つながりがあります。昭和後期のツチノコ探しの流行は、江戸時代の書物に残る野槌の記録を下敷きにしています。
姦姦蛇螺は古い妖怪ですか。
古くありません。掲示板に書かれた文章から広まった現代の怪談です。ただし、女の体と蛇の形、封じられた祠という古い型をそのまま使っています。
濡女はどんな妖怪ですか。
髪の濡れた女の妖怪で、上半身が女、下半身が蛇の姿で描かれます。子を抱いてくれと頼み、抱いた子が石のように重くなって離れないという話が伝わります。
蛇と竜の一覧(収録しているすべての妖怪) 57体
本文で取り上げなかったものも含めて、この種別に属する妖怪をすべて並べています。名前を押すと個別ページへ移ります。