目を開けば昼、閉じれば夜になるという神。体長は千里におよぶ。

鳥山石燕 「今昔百鬼拾遺 燭陰」 1781年 / パブリックドメイン 出典
燭陰とはどんな妖怪か
燭陰はひとことで言えば、まばたきが昼と夜になる神です。
『山海経』の巻17「海外北経」に記載があります。
北海の鍾山(しょうざん)という山のふもとに住み、人間状の顔と赤い蛇のような体を持ちます。
体長は千里におよぶとされました。
そして、目を開けば昼となり、目を閉じれば夜となる。
吹けば冬となり、呼べば夏となる。飲まず食わず息せず、息すれば風となるといいます。
『山海経』は平安時代の日本に伝わっており、『今昔百鬼拾遺』『怪奇鳥獣図巻』などの妖怪画集にも記載があります。
燭陰の漢字表記と読み方
読みは「しょくいん」です。
文献によっては、『山海経』の「大荒北経」にある神・燭竜(しょくりゅう)と同一視されます。
その場合、章尾山(しょうびさん)に住むもので、目が縦に並んで付いているなどと解説されます。
この目の特徴は、原典に「直目正乗」とある記述を解釈したものです。近年では、目が前に飛び出した様子を表したものとの説もあります。
燭陰(しょくいん)
石燕の絵に添えられた表記。
燭竜(しょくりゅう)
『山海経』「大荒北経」の神。同一視されます。
燭陰の姿と特徴
石燕の絵の燭陰は、岩山に巻きついた巨体です。
顔 … 人間のよう。
体 … 赤い蛇のよう。
長さ … 千里におよぶ。
目 … 開けば昼、閉じれば夜。
息 … 吹けば冬、呼べば夏。
絵では、老人のような顔の巨大な蛇身が、松の生えた山を幾重にも巻いています。
燭陰が登場する古典の物語
目が昼と夜をつくる
燭陰の力は、まばたきにあります。
目を開けば昼となり、目を閉じれば夜となる。
息づかいも同じです。
吹けば冬となり、呼べば夏となる。
飲まず食わず息せず、息すれば風となる。
この神が動くたびに、季節と一日が入れ替わります。
北の果てに住む
中国の神話学者・何新は、燭陰の住むという鐘山を大地の最北極と論証しました。
そして、北極圏以北の夏と冬の昼夜の交代、またはオーロラが神格化されたものが燭陰だとしています。
中国の考古学者・徐明龍は、燭陰を中国神話の神である祝融と同一のものとし、太陽神、火神でもあると述べました。
遠い北の空の現象を、一体の神として語ったものという読み方です。
盤古の原型か
中国神話の研究者袁珂は、燭竜は人面竜身の盤古の原型だと考えました。
盤古は、天地を開いたとされる神です。
ただし、燭竜自体には天地開闢の神話がありません。
袁珂は、唐詩の中には、燭竜は後世では時間の神格化と見なされる可能性があるとも考えています。
この図鑑には、時刻に関わるものとして逢魔時も収めています。
燭陰の伝承地域
燭陰をまつる社として広く知られたものは見当たりません。
『山海経』が示す場所は、北海の鍾山です。大地の最北極とする論もあり、実際に行ける場所としては扱えません。
燭陰の正体と考えられているもの
燭陰は、天体の動きが形をとったものと読まれてきました。
目の開閉が昼夜、息が季節——時間そのものを担う神です。
何新の論では北極圏の白夜と極夜、あるいはオーロラ、徐明龍の論では太陽神・火神とされます。
日本では、妖怪画集の一枚として受け取られました。
この図鑑には、中国の書物から来たものとして白澤や魃も収めています。
燭陰が登場する作品
燭陰は、石燕の絵と『山海経』で読めます。
『山海経』は平安時代の日本に伝わっており、江戸の妖怪画集にその獣が並ぶ元になりました。この図鑑の白澤も同じ道をたどっています。
燭陰が登場する古典
山海経
中国の地理書。巻17「海外北経」に燭陰を記します。
怪奇鳥獣図巻
江戸期の彩色図巻。中国の書物にもとづく獣を集めています。
燭陰が登場する研究
山海経の研究
何新・徐明龍・袁珂らが、燭陰の正体をめぐって説を立てています。
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燭陰についてよくある質問
燭陰とは何ですか。
『山海経』に記される中国の神です。北海の鍾山のふもとに住み、体長は千里におよぶとされます。
どんな力がありますか。
目を開けば昼、閉じれば夜になり、吹けば冬、呼べば夏になるとされます。
燭竜とは何ですか。
『山海経』「大荒北経」の神です。燭陰と同一視されることがあります。
正体は何だと考えられていますか。
北極圏の昼夜の交代やオーロラの神格化とする説、太陽神・火神とする説があります。
燭陰と併せて覚えたい言葉・用語
鍾山(しょうざん)
北海にあるとされる山。燭陰が住むふもとです。
直目正乗(ちょくもくせいじょう)
原典の記述。目が縦に並ぶと解釈されてきました。
盤古(ばんこ)
天地を開いたとされる中国神話の神です。