秋田県湯沢市の阿白沢の主。大水害のとき白髪の老人の姿で流れ、近付くなと言ったという。

8-Forest 「小安峡(秋田県湯沢市皆瀬)」 2013年 / CC BY-SA 3.0 出典
阿白蛇とはどんな妖怪か
阿白蛇はひとことで言えば、人を遠ざけた沢の主です。秋田県湯沢市の話です。
国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースは、東京女子大学史学科民俗調査団『雄勝役内の民俗』(1977年、148頁)を典拠に、大水害のときに、阿白沢から白髪の老人が流れて来て、村人が助けようとしたら「危ないから近付くな」と言ったという。阿白沢の主の阿白蛇だったと記します。
姿は白髪の老人です。蛇の姿では現れません。
言葉は一つだけ。 危ないから近付くな。
助けようとした村人を、逆に遠ざけています。 害をなしたとは書かれていません。
その後どうなったかは記録されていません。
阿白蛇の漢字表記と読み方
読みは「あじろじゃ」です。
「阿白」は沢の名です。その沢の主だから阿白蛇、という名の付き方です。
「ジャ」は蛇の音読みです。大きな蛇を「じゃ」と呼ぶ言い方は各地にあります。主として敬う気持ちが混じった呼び方です。
阿白蛇(あじろじゃ)
日文研データベースが示す漢字表記。
アジロジャ(あじろじゃ)
同データベースの呼称読み。
阿白蛇の姿と特徴
阿白蛇が現れたときの姿は、白髪の老人です。
場面 … 大水害。
現れ方 … 阿白沢から流れて来た。
言葉 … 「危ないから近付くな」。
正体 … 阿白沢の主の阿白蛇。
蛇の姿は記録されていません。大きさも、色も書かれていません。
流されながら、人を気づかっています。
阿白蛇の伝承記録
大水害の日に流れてきた
出来事の背景は大水害です。沢が荒れ、水が村へ押し寄せました。
そこへ、阿白沢から白髪の老人が流れて来ました。
村人は助けようとします。 溺れている人を見れば当然の動きです。
ところが老人は、「危ないから近付くな」と言いました。
助けを拒む言葉が、この話の要です。
主が姿を変えて現れる
老人の正体は、阿白沢の主の阿白蛇でした。
沢や淵に主がいるという考え方は各地にあります。 兵庫のショージワンの池にも主がいました。
主が人の姿で現れるという形も珍しくありません。大水の日に姿を見せたのは、沢そのものが動いたとも読めます。
祟ったのでも、助けを求めたのでもありません。 近付くなと言い残しただけです。
阿白蛇の伝承地域
公的データベースの地域欄は秋田県湯沢市を示します。報告は雄勝郡役内の民俗を調べたものです。
阿白沢の位置は書かれていないため、地図で指せるのは市の範囲までです。
阿白蛇の正体と考えられているもの
阿白蛇の正体は、記録では阿白沢の主とされています。
沢の名を負った蛇が、大水の日に白髪の老人の姿で現れました。
なぜ流れてきたのか、どこへ行ったのかは書かれていません。
「危ないから近付くな」という一言だけが残りました。 主が人を遠ざける形は、水の恐ろしさを伝える語りでもあります。
阿白蛇が記録された資料
阿白蛇を単独で扱った本は見当たりません。読めるのは『雄勝役内の民俗』です。
大学の調査団がまとめた地域の民俗報告書で、聞き書きがそのまま収められています。県内の図書館の郷土資料が探し先です。
阿白蛇が記録された民俗資料
雄勝役内の民俗
東京女子大学史学科民俗調査団が1977年にまとめた報告書です。
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阿白蛇についてよくある質問
阿白蛇とは何ですか。
秋田県湯沢市の阿白沢の主とされる蛇です。大水害のとき白髪の老人の姿で流れてきたと記録されています。
老人は何と言ったのですか。
助けようとした村人に「危ないから近付くな」と言ったと記録されています。
蛇の姿は見えたのですか。
記録に蛇の姿の記述はありません。現れたのは白髪の老人の姿です。
阿白沢はどこですか。
位置は記録されていません。日文研データベースの地域欄は秋田県湯沢市を示します。
阿白蛇と併せて覚えたい言葉・用語
主(ぬし)
沢や淵に棲むとされる存在。阿白蛇は阿白沢の主とされます。
雄勝(おがち)
秋田県南部の旧郡名。報告書の調査地域です。
ショージワン(しょーじわん)
兵庫県六甲山の池の話。同じく主が棲むとされます。
阿白蛇の参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。