六甲山の池に主が棲み、池の端に行くと椀が浮かんできたという伝え。上唐櫃の村で語られた。
ショージワンとはどんな妖怪か
ショージワンはひとことで言えば、池から浮かんでくる椀です。兵庫県の六甲山の話です。
国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースは、辰井隆「妖怪名彙に寄す」(『民間伝承』、1940年)を典拠に、次のように記します。六甲山に瓢箪形をした池がある。六甲山でもっとも古い池で主が棲んでおり、上唐櫃の村人は「池の端に行くとショージワン(椀)が浮かんできた」と言う。
そして、同じ村の新池にもこの名の椀が浮くといいます。
椀が浮かぶという話は、各地に椀貸し伝説として伝わります。淵や池や塚に頼むと、膳椀を貸してくれるという筋です。
ショージワンの記録は短く、借りた話でも返さなかった話でもなく、「浮かんできた」という一点だけを伝えています。
ショージワンの漢字表記と読み方
読みは「しょーじわん」です。
記録は、この語に(椀)という注を添えています。ワンの部分が食器の椀であることは、記録者が確かめています。
「ショージ」が何を指すかは書かれていません。精進(しょうじん)に由来するのか、地名なのか、記録からは判断できません。
ショージワン(しょーじわん)
日文研データベースが示す呼称。
ショージ椀(しょーじわん)
記録が「椀」と注記している形。
ショージワンの姿と特徴
ショージワンの姿は、椀です。
もの … 椀。
場所 … 六甲山の瓢箪形をした池。同じ村の新池。
出来事 … 池の端に行くと浮かんできた。
主の姿は書かれていません。池に主が棲むと語られるだけで、その形は記録されていません。
椀の数、色、大きさも書かれていません。浮かんできた、という事実だけが残っています。
ショージワンの伝承記録
六甲山でもっとも古い池
記録は、池についてはっきり書いています。瓢箪形をした池で、六甲山でもっとも古い池である、と。
古い池には主が棲む、という考え方は各地にあります。池や淵の深いところに、姿の見えないものがいるとされました。
ショージワンの話では、その主が椀を浮かべるという形で気配を示します。
池の名は記録されていません。 分かるのは、瓢箪形であること、六甲山でもっとも古いとされたことです。
椀が浮かんでくる
村人の言葉として記録されているのは、池の端に行くとショージワンが浮かんできたという一文です。
各地の椀貸し伝説では、必要な数を頼むと膳椀が貸し出され、返さない者が出たために貸してもらえなくなったという結末が付きます。
ショージワンの記録には、その後日談がありません。浮かんできた、というところで話は終わります。
同じ村の新池にも同じ名の椀が浮くという一文が添えられ、一つの池だけの話ではなかったことが分かります。
ショージワンの伝承地域
公的データベースの地域欄は兵庫県を示し、記録は語り手を上唐櫃の村人とします。
池の名が書かれていないため、地図で指せるのは唐櫃と六甲山の範囲までです。
六甲山周辺(ろっこうさんしゅうへん)
記録が語り手の村として挙げる上唐櫃
六甲山周辺の所在地:兵庫県神戸市北区有野町唐櫃
記録は「上唐櫃の村人」と記します。唐櫃は六甲山北側の地域です。
池の名は記録されていません。瓢箪形の池と新池が挙げられています。
ショージワンの正体と考えられているもの
ショージワンの正体は確定していません。
記録が語るのは、池に主が棲むことと、椀が浮かんできたことの二つです。主と椀の関係も、椀がどこから来るのかも書かれていません。
各地の椀貸し伝説と同じ型に見えますが、貸す・返すという筋はこの記録にありません。
残ったのは、古い池と、そこに浮かぶ椀という光景です。
ショージワンが記録された資料
ショージワンを単独で扱った本は見当たりません。読めるのは辰井隆「妖怪名彙に寄す」です。
題のとおり、柳田國男の「妖怪名彙」に土地から寄せられた報告です。同じ号には各地の妖怪の呼び名が並んでいます。
ショージワンが記録された民俗資料
妖怪名彙に寄す
辰井隆が『民間伝承』(1940年)に載せた中心資料です。
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ショージワンについてよくある質問
ショージワンとはどんな妖怪ですか。
六甲山の池に伝わる話です。池の端に行くと椀が浮かんできたと、上唐櫃の村人が語りました。
主の姿は分かっていますか。
分かっていません。池に主が棲むと語られるだけで、姿は記録されていません。
椀貸し伝説と同じものですか。
型は似ていますが、この記録には貸す・返すという筋がありません。浮かんできたという一点だけが伝えられています。
どこの池ですか。
池の名は記録されていません。瓢箪形の池と、同じ村の新池が挙げられています。
ショージワンと併せて覚えたい言葉・用語
椀貸し伝説(わんかしでんせつ)
淵や池や塚に頼むと膳椀を貸してくれるという、各地に伝わる話の型です。
上唐櫃(かみからと)
記録が語り手として挙げる村。六甲山北側の地域です。
主(ぬし)
池や淵に棲むとされる存在。ショージワンの記録では姿が書かれていません。
ショージワンの参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。