香川県まんのう町の山中にあるオマンノイワで、「オマンの母でございます」と名乗って現れるという婆の妖怪。
オマンの母とはどんな妖怪か
オマンの母はひとことで言えば、名乗ってから現れる妖怪です。香川県仲多度郡まんのう町の話です。
山の中に「オマンノイワ」と呼ばれる岩があります。そこへ来ると、「オマンの母でございます」と言って、婆さんの妖怪が出てくると伝えられました。
記録は武田明「仲多度郡琴南町美合の妖怪と怪談」(『香川の民俗』通巻41号、香川民俗学会、1984年、4頁)です。琴南町美合は、のちに合併してまんのう町となった地域です。
この妖怪の特徴は、自分から名乗ることです。多くの怪異は無言か、意味の取れない声を発します。オマンの母は丁寧な言葉づかいで、自分が何者かを告げてから現れます。
一方で、肝心のオマンが誰なのかは記録されていません。 娘の名なのか、その岩にまつわる誰かなのかも分かりません。名乗りだけが残り、名乗られた側の物語は伝わっていません。
オマンの母の漢字表記と読み方
読みは「おまんのはは」です。
「オマン」は女の名前と考えられますが、その人物が誰であるかは記録にありません。娘なのか、村の女なのか、伝説上の人物なのかも書かれていません。
この妖怪の名は、「誰それの母」という関係の言い方でできています。本人の名ではなく、別の誰かとの関係で呼ばれている点が、ほかの妖怪の名と違います。
オマンの母(おまんのはは)
日文研データベースが示す呼称。
オマンノハハ(おまんのはは)
同データベースの呼称読み。
おまんの母(おまんのはは)
平仮名を交えた書き方。
オマンの母の姿と特徴
オマンの母の姿として記録されているのは、婆さんという一語だけです。
姿 … 婆さん。
場所 … 山中のオマンノイワ。
言葉 … 「オマンの母でございます」。
背丈、着ているもの、顔つきは書かれていません。害を加えたという記述もありません。
現れ方の手順だけがはっきりしています。 人が岩のところへ来る。すると名乗りがあり、姿が出てくる。この順序が記録の中心です。
オマンの母の伝承記録
武田明が採録した美合の妖怪
オマンの母を確認できる資料は、武田明の「仲多度郡琴南町美合の妖怪と怪談」です。『香川の民俗』通巻41号(香川民俗学会、1984年7月15日発行)の4頁にあります。
題のとおり、一つの地区の妖怪と怪談をまとめて拾った報告です。オマンの母もその一つとして、短く記録されました。
武田明は香川県の民俗を長く調べた研究者で、四国の伝承を数多く書き留めています。聞き書きの積み重ねによって、こうした小さな怪異が残りました。
オマンノイワという場所
話の中心にあるのは、オマンノイワという岩です。
記録は「山中にオマンノイワというのがある」と書き出します。岩に名が付いており、その名にもオマンが入っています。
岩の名が先か、妖怪の名が先かは分かりません。 オマンという女がいて、その岩に名が残り、そこに母が現れるという筋なのか、岩の名からあとで話ができたのかは、記録からは判断できません。
岩の大きさ、形、山の名も書かれていません。分かるのは、山の中にその岩がある、ということだけです。
名乗るという珍しい形
「オマンの母でございます」——この一言が、この怪異のすべてです。
ございますという丁寧な言い方で、妖怪が自分から素性を告げます。おどかす言葉でも、意味の取れない声でもありません。
丁寧であることが、かえって不気味に働きます。 名乗りが正しければ、そこには「オマン」という人がいたことになります。しかしその人のことは何も伝わっていません。
記録が残したのは、名乗りだけがあって、名乗られた相手の物語が失われているという形です。話の半分が欠けたまま、名乗りの言葉だけが土地に残りました。
オマンの母の伝承地域
公的データベースの地域欄は、香川県仲多度郡まんのう町を示します。武田明が採録した琴南町美合は、合併によって現在のまんのう町に含まれます。
オマンノイワの位置を示す記述はありません。山中とだけ記されており、地図で一点を指すことはできません。
まんのう町周辺(まんのうちょうしゅうへん)
日文研データベースが示す伝承地域
まんのう町周辺の所在地:香川県仲多度郡まんのう町
採録地の琴南町美合は、合併してまんのう町となりました。
資料には、オマンノイワの所在地や山の名が書かれていません。
オマンの母の正体と考えられているもの
オマンの母の正体は確定していません。
記録が語るのは、岩の名と名乗りと婆さんの姿の三つだけです。オマンが誰か、母が何を求めて現れるのかは書かれていません。
名乗りの形からは、もとになる物語があったはずだと考えられます。オマンという娘なり女なりの話があり、その母が岩に現れるという筋です。しかし、その物語は伝わっていません。
残ったのは、岩の名と、丁寧な名乗りだけです。 話の中心が失われても、名乗りの言葉が土地の記憶として残った例といえます。
オマンの母が記録された資料
オマンの母を扱った読み物は、民俗の報告のほかに見当たりません。
『香川の民俗』は香川民俗学会が出している雑誌です。一般の書店には並ばないため、県立図書館などの郷土資料が探し先になります。武田明の名と通巻41号が手がかりになります。
オマンの母が記録された民俗資料
仲多度郡琴南町美合の妖怪と怪談
武田明が『香川の民俗』通巻41号(1984年)に載せた中心資料です。
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オマンの母についてよくある質問
オマンの母とはどんな妖怪ですか。
香川県まんのう町の山中にあるオマンノイワで、「オマンの母でございます」と名乗って現れるという婆の妖怪です。
オマンとは誰ですか。
記録されていません。娘の名か、その岩にまつわる人物かも書かれておらず、名乗りだけが伝わっています。
人に害はありますか。
害を加えたという記録はありません。現れたあとどうなるかも書かれていません。
オマンノイワはどこにありますか。
資料は山中とだけ記します。日文研データベースの地域欄は香川県仲多度郡まんのう町を示しますが、岩の位置は分かりません。
オマンの母と併せて覚えたい言葉・用語
オマンノイワ(おまんのいわ)
妖怪が現れるとされる山中の岩。名にオマンが入っています。
武田明(たけだあきら)
香川県の民俗を調べた研究者。この妖怪の記録を残しました。
琴南町美合(ことなみちょうみあい)
採録地。合併により現在は香川県仲多度郡まんのう町の一部です。
オマンの母の参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。