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福岡県

川姫(かわひめ)とはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品・伝承地域

川姫  / カワヒメ

人型の妖怪水の妖怪 各地の伝説

水辺に現れる女の妖怪。心を惹かれた男は精気を吸い取られてしまうという。

川姫の姿を描いた図

そらみみ 「英彦山神宮 下津宮の参道(福岡県添田町)」 2016年 / CC BY-SA 出典

川姫とはどんな妖怪か

川姫はひとことで言えば、水辺に現れる女の妖怪です。

福岡県築上郡、大分県中津地方、高知県高岡郡に伝わります。

その名のとおり、川などの水辺に現れます。

福岡県では、若い男たちが水車小屋のそばなどに集まっていると、いつの間にか水車の陰などに現れるといいます。

男が心を惹かれてしまうと、たちまち川姫に精気を吸い取られてしまいます。

しかし、逃れる手立てが伝わっています。

川姫が現れた際は、その場にいる年寄りが戒めの合図をし、若者たちがすぐさま下を向いて息を殺すことで、この災いから逃れられるといいます。

大分県では、川上から水面を飛ぶように歩いてきたり、水の中から飛び上がって橋の上に立つ美女だとされます。

川姫の漢字表記と読み方

読みは「かわひめ」です。

名は「川の姫」であり、そのまま水辺に現れる女を指します。

「姫」と付く妖怪は、多くの場合、美しい姿で人を惹きつけるものです。 山に現れる山姫とは、名の付き方も性質もよく対応しています。

山姫が笑いかけて血を吸うのに対し、川姫は男の心を惹いて精気を吸います。

どちらも、こちらが応じてしまうことで害を受けるという形をとります。

なお、高知の伝えに出てくる「糸切り刀」とは、糸を切ったために切れ味が落ちた刀のことです。この刀では川姫を斬れないとされました。

川姫(かわひめ)

もっとも一般的な書き方。

カワヒメ(かわひめ)

仮名で書かれることもある。

糸切り刀(いとぎりがたな)

高知の伝えで、川姫を斬れない刀とされたもの。

川姫の姿と特徴

川姫の姿は、土地によって現れ方が違います。

福岡県での現れ方 … 若い男たちが水車小屋のそばに集まっていると、いつの間にか水車の陰などに現れる。
大分県での現れ方 … 川上から水面を飛ぶように歩いてくる。水の中から飛び上がって橋の上に立つ。
高知県での姿 … 雨の夜、谷で糸枠をまいている見知らぬ美女。
共通するもの … 美しい女の姿。水辺にいる。

いずれも「美しい」という以上の細かい描写は伝わっていません。

顔立ちも、髪も、着ているものも語られません。

かわりに詳しいのは、現れる場所です。水車の陰、川上の水面、橋の上、谷。どれも水と人の暮らしが接する場所です。

水車小屋は、若い男たちが集まる場所でもありました。

人が集まる水辺に、いつの間にか一人多い。 それがこの妖怪の現れ方です。

川姫の伝承物語

  1. 下を向いて息を殺す
  2. 年寄りだけが見分けられる
  3. 高知の谷で斬られた女
  4. 友人が語った続き
  5. 水辺の女たち
  6. 水車小屋という舞台

下を向いて息を殺す

福岡県に伝わる川姫の話は、男たちの集まりを舞台にしています。

若い男たちが水車小屋のそばなどに集まっていると、いつの間にか水車の陰などに川姫が現れます。

男が心を惹かれてしまうと、たちまち精気を吸い取られてしまいます。

しかし、逃れる手立てがあります。

川姫が現れた際は、その場にいる年寄りが戒めの合図をし、若者たちがすぐさま下を向いて息を殺すことで、この災いから逃れられるといいます。

この手立てには、注目すべき点が二つあります。

年寄りだけが見分けられる

一つは、年寄りが気づくという点です。若者には見分けがつきません。経験のある者だけが、それが川姫だと分かります。

もう一つは、下を向くという点です。見なければよい、応じなければよい、という形です。

山姫の伝えでは「笑い返すな」とされ、笑い女の伝えでは「つられて笑うな」とされました。

川姫では「見るな」です。

いずれも、こちらから関わりを結ばないことが身を守る方法になっています。

そして、その作法を伝えるのが年長者の役目でした。

高知の谷で斬られた女

高知県では、檮原町の白王神社そばの谷に川姫が現れたという話が残ります。

雨の夜のことです。

ある男が友人を訪ねて谷を歩いていたところ、見知らぬ美女が糸枠をまいていました。

男は女を怪しんで凄んでみせましたが、女は笑いかけるだけです。

男は女を化け物と直感し、刀を抜いて糸枠を斬りました

すると女は笑いながら水辺に飛び込んで姿を消しました。

やがて男は友人のもとに辿り着き、この話をします。

友人が語った続き

すると友人はこう言いました。

刀は糸を切ると斬れ味が落ちる。家の刀を使え

後に男が帰り道を歩いていると、谷で再びあの女に出会いました。

女は「糸切り刀では私を斬れません」と言います。

しかし男は、友人から借りた刀を抜き、女を斬り捨てました。

この女が川姫だったといいます。

福岡や大分の話が「逃れる」ことで終わるのに対し、高知の話は「斬る」ことで終わります。同じ名でも、話の形が違います。

水辺の女たち

水辺に現れる女の妖怪は、各地にいます。

濡女は、水辺に現れる長い髪の女で、蛇の体を持つとも語られます。

磯女は、九州の海辺に現れて船人の血を吸うといわれます。

山姫は山に現れ、笑いかけて血を吸います。

場所は違っても、「美しい女の姿で現れ、応じた者から何かを奪う」という形は共通しています。

奪われるものは、血であったり、精気であったりします。

川姫が奪うのは精気です。命そのものではなく、生きる力にあたります。

水車小屋という舞台

若い男たちが集まる水車小屋という舞台も、この話の性質をよく表しています。

川姫の話は、若者への戒めとして働いていたとみることができます。

もっとも、これは一つの読み方にすぎません。伝えのなかで川姫の由来が語られることはなく、なぜ精気を吸うのかも説明されていません。

正体を説明する伝えは確かめられませんでした。福岡、大分、高知という離れた土地に、同じ名の妖怪が伝わっている理由も分かっていません。

川姫の伝承地域

川姫の伝承地は、福岡県築上郡大分県中津地方高知県高岡郡です。

福岡県では水車小屋のそばに現れ、大分県では川上から水面を飛ぶように歩いてきたり橋の上に立ったりするとされます。

高知県では、檮原町の白王神社そばの谷に現れたという具体的な話が残ります。

三つの土地は離れており、なぜ同じ名の妖怪が伝わっているのかは分かっていません。

川姫を祀る祠は確かめられませんでした。恐れられる相手であって、信仰の対象ではなかったとみられます。

築上郡(ちくじょうぐん)

水車小屋に現れると伝わる地

地図で開く

築上郡の所在地:福岡県築上郡

川姫の伝承地の一つです。

若い男たちが水車小屋のそばなどに集まっていると、いつの間にか水車の陰などに現れるといいます。

心を惹かれると精気を吸い取られますが、年寄りが戒めの合図をし、若者たちがすぐさま下を向いて息を殺せば逃れられるとされました。

若者の集まる場所を舞台とする点が特徴です。

現れたとされる水車小屋を特定する記述は確かめられませんでした。

白王神社そばの谷(はくおうじんじゃそばのたに)

斬られたと伝わる地

地図で開く

白王神社そばの谷の所在地:高知県高岡郡檮原町

高知県檮原町にある白王神社のそばの谷です。

雨の夜、ここで糸枠をまいていた美女が川姫だったと伝えられます。

男が糸枠を斬ったため刀の切れ味が落ち、女に「糸切り刀では私を斬れません」と言われましたが、友人から借りた刀で斬り捨てたといいます。

福岡や大分の話とは結末が違います。

谷の正確な位置を示すものは確かめられませんでした。

川姫の正体と考えられているもの

川姫の正体については、次のように考えられています。

水辺の女の妖怪の一つとする見方があります。濡女、磯女、山姫など、美しい女の姿で現れて応じた者から何かを奪うものは各地にあり、川姫もその一つに数えられます。

若者への戒めとする見方も有力です。舞台が水車小屋という若い男たちの集まる場所であること、年寄りが合図をして若者を守ることは、この話が世代を越えて伝えられる作法であったことを示しています。

水難への戒めとする見方もあります。水辺で気を取られると危ないという教えが、美しい女の姿で語られたとみることができます。

土地ごとに別の話が同じ名を得たとする見方も無視できません。福岡では逃れる話、高知では斬る話と、結末がまったく違います。

由来は語られていません。 なぜ精気を吸うのか、どこから来たのかを説明する伝えは確かめられませんでした。分かっていないことのほうが多い妖怪です。

同じ川辺には、川男もいます。背が高く肌の色が黒く、二人並んで物語を話していたと『和訓栞』にあります。

川姫をめぐる妖怪のつながり

川姫が登場する作品

川姫は、絵として伝わってこなかった妖怪です。

江戸時代の絵師が描いた例は確かめられませんでした。姿の描写も「美女」という以上のものがありません。

かわりに、現れる場所と逃れ方が具体的に伝わっています。水車の陰、橋の上、谷。下を向いて息を殺す。

土地の暮らしの中で語られてきた話であることが、そこから読み取れます。

川姫が登場する伝え

福岡県築上郡の言い伝え

水車小屋に現れ、年寄りの合図で逃れるという形を伝えます。

高知県檮原町の言い伝え

糸枠をまく美女を、糸切り刀ではない刀で斬ったという話です。

川姫が登場する書物

妖怪を扱う各種の事典

水辺の女の妖怪として、濡女や磯女と並べて紹介されます。

川姫が登場するそのほか

水辺の妖怪を扱う各種の作品

美しい女の姿で現れ、精気を吸うものとして描かれます。

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川姫についてよくある質問

川姫とは何ですか。

福岡県築上郡、大分県中津地方、高知県高岡郡に伝わる妖怪です。その名のとおり川などの水辺に現れる女の妖怪とされ、男が心を惹かれると精気を吸い取られるといわれます。

どうすれば逃れられますか。

福岡県では、川姫が現れた際にその場にいる年寄りが戒めの合図をし、若者たちがすぐさま下を向いて息を殺すことで災いから逃れられるとされました。

どんな姿で現れますか。

福岡県では水車小屋のそばの水車の陰などに、大分県では川上から水面を飛ぶように歩いてきたり水の中から飛び上がって橋の上に立つ美女として現れます。

高知県の話はどんなものですか。

檮原町の白王神社そばの谷で、雨の夜に糸枠をまく美女に出会った男が糸枠を斬ったところ、女は水辺に飛び込んで消えました。後日、女は「糸切り刀では私を斬れません」と言いましたが、男は借りた刀で斬り捨てたといいます。

山姫と関係がありますか。

直接の関係を示す伝えは確かめられませんでした。ただし、美しい女の姿で現れ、応じた者から何かを奪うという形はよく似ています。山姫は血を、川姫は精気を吸うとされます。

川姫と併せて覚えたい言葉・用語

水車小屋(すいしゃごや)

福岡県で川姫が現れるとされた場所。若い男たちの集まる所でもあった。

糸切り刀(いとぎりがたな)

糸を切って切れ味の落ちた刀。これでは川姫を斬れないとされた。

糸枠(いとわく)

糸を巻き取る道具。高知の話で川姫がまいていたもの。

精気(せいき)

生きる力のこと。川姫が男から吸い取るとされるもの。