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青森県

寝肥(ねぶとり)とはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品

寝肥  / ネブトリ

人型の妖怪 絵本百物語

寝床へ入ると身体が部屋いっぱいに膨れ、雷や車のようないびきを響かせる女性。

寝肥の姿を描いた図

竹原春泉 「絵本百物語 寝ぶとり」 1841年 / パブリックドメイン 出典

寝肥とはどんな妖怪か

寝肥は、『絵本百物語』にある女性の怪異です。昼は普通に見えても、夜に寝床へ入ると身体が部屋へ収まらないほど膨れ、雷や車にたとえられる大いびきを響かせます。

奥州の例では、夫婦が使う布団十枚のうち女性が七枚、夫が三枚を使ったと語られます。大きさと音と寝床の狭さを誇張し、女性の身体や生活態度を笑いと戒めへ変えた、江戸時代の厳しい視線も残る妖怪です。

寝肥の漢字表記と読み方

「ねぶとり」と読みます。「寝る」と「肥る」が一つになり、夜の寝床で身体が膨れる姿をそのまま表します。

寝肥(ねぶとり)

寝ることと、身体が肥え大きくなる姿を結びつけた名。

寝肥の姿と特徴

寝間着をはだけた女性が、布団からあふれる大きな身体を横たえます。昼の姿が化け物になるのではなく、眠った時だけ部屋を占めるほど膨れるのが特徴です。絵では頭よりも胴と腹が大きく、寝床の狭さが強調されます。

寝肥の伝承記録

  1. 夜になると身体が寝間を満たす
  2. 雷や車にたとえられるいびきが響く
  3. 布団十枚のうち七枚を一人で使う
  4. 女性の身体を笑いと戒めにした

夜になると身体が寝間を満たす

寝肥の女性は、眠り始めてから身体が膨らみます。夜になって寝床へ入り、眠り始めると身体が膨らみ、部屋の内へ収まりきらないほど大きくなります。

身近な寝室が、朝まで逃げ場のない場所へ変わります。外から襲って来る妖怪ではなく、同じ家で暮らす人の眠りの中に怪異が現れるため、夫婦の生活そのものが舞台になります。

雷や車にたとえられるいびきが響く

身体と同時に、音も大きくなります。いびきは雷鳴や、重い車が走る音にたとえられます。隣で休む者は、身体に寝床を奪われ、耳には夜通し大音響を受けます。

姿と音が同時に誇張されることで、寝肥は一目見ただけの妖怪画では終わりません。狭い室内を満たす身体と、家中へ広がる音が、眠っている一人を巨大な存在に変えます。

布団十枚のうち七枚を一人で使う

奥州の例では、家に布団が十枚ありました。そのうち寝肥の女性が七枚を使い、夫に残されたのは三枚です。数字が示されることで、寝床を占める大きさが具体的に見えてきます。

夫婦が横に並ぶはずの場所で、片方だけが二倍以上の布団を使います。怪異は山野で起こらず、布団の配分という暮らしの細部へ現れます。十枚、七枚、三枚という差が、この話を忘れにくいものにしています。

女性の身体を笑いと戒めにした

『絵本百物語』は寝肥を、寝坊やだらしなさと結びつけ、夫から疎まれる女性として語ります。大きな身体といびきは、本人の苦しみより、夫に迷惑をかける姿として誇張されました。

そこには、女性は小さく静かに眠るべきだという当時の価値観があります。寝肥を現代の病名へ置き換えることはできません。むしろ妖怪画の笑いが誰へ向けられ、どのような身体を外れたものとしたのかが、今読む時の大切な点です。

寝肥の伝承地域

原典が挙げる奥州は東北地方の広い歴史地域です。特定の家や町を示さないため、現在の一点へ絞った地図は表示しません。

寝肥の正体と考えられているもの

寝肥は、眠る身体の大きさ、いびき、夫婦の寝床を誇張して作られた生活の妖怪です。身体が部屋を満たす奇抜さの裏には、女性の見た目や生活態度を一方的に戒める視線があります。笑い話として読むだけでなく、何を「普通」から外れた姿としたのかまで見える一枚です。

寝肥をめぐる妖怪のつながり

同じ地域・原典 姿・性質が似る 対立・退治 混同・地域変異

寝肥が登場する作品

寝肥は、笑いの側にいる妖怪です。

絵本百物語』は、寝坊やだらしなさと結びつけ、夫から疎まれる女性として描きました。大きな身体といびきは、本人の苦しみより、夫に迷惑をかける姿として誇張されています。

そこには、女性は小さく静かに眠るべきだという当時の価値観があります。 妖怪画の笑いが誰へ向けられ、どのような身体を外れたものとしたのか。いま読むときの要点はそこにあります。

寝肥が登場する古典・奇談

絵本百物語

天保期の奇談集。挿絵と文章が対になっており、江戸の読者が読んだ妖怪像を伝えます。

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寝肥が登場する事典

日本妖怪大事典

村上健司による大部の事典。地方の小さな伝承まで、出典を添えて収めています。

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寝肥についてよくある質問

寝肥とはどんな妖怪ですか。

女性が眠ると身体が部屋いっぱいに膨れ、雷や車が走る音のような大いびきをかく怪異です。天保十二年刊の『絵本百物語』に姿と文章が描かれます。

寝肥は何と読みますか。

「ねぶとり」と読みます。寝ることと身体が肥え大きくなる姿を結びつけ、夜の寝床でだけ現れる身体の変化を名にしたものです。

寝肥の布団十枚の話とは何ですか。

奥州の例で、夫婦が使う布団十枚のうち、寝肥の女性が七枚、夫が三枚を使ったという話です。大きさを具体的な数で表します。

寝肥は病気の妖怪ですか。

古い本文は病や戒めのように扱います。現代の病名とは別のものです。女性の身体と寝坊を笑いへ変えた時代の表現です。

寝肥と併せて覚えたい言葉・用語

絵本百物語(えほんひゃくものがたり)

天保十二年に刊行された妖怪・怪異の画集。寝肥の姿と文章を収める。

奥州(おうしゅう)

現在の東北地方に関わる広い歴史地域名。布団十枚の例の舞台として挙がる。

風刺(ふうし)

人や社会の特徴を誇張し、笑いや批判として表すこと。寝肥の大きさと音にも表れる。

寝肥の参考資料

この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。

  1. 国立国会図書館サーチ『桃山人夜話 絵本百物語』
  2. 国立国会図書館サーチ『絵本百物語 桃山人夜話』
  3. 国立国会図書館サーチ『絵本百物語 5巻』