埼玉県西部で語られた怪異。夕方の道で袖を引かれ、振り返っても誰もいない。
袖引小僧とはどんな妖怪か
袖引小僧はひとことで言えば、袖を引くだけの妖怪です。埼玉県西部の話です。
夕方、道を歩いていると、袖を引く者がいます。驚いて振り返っても、そこには誰もいません。そのまま歩き出すと、また袖を引かれます。
国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースは、柳田國男「妖怪名彙(四)」(『民間伝承』4巻1号・通巻37号、1938年)を典拠として、この怪異を収めています。地域欄は埼玉県です。
姿は語られません。小僧という名がついていながら、子どもの姿を見たという記録はありません。見えないまま袖だけが引かれる、という形です。
害を加えたという話もありません。 引かれて転ぶ、連れて行かれる、病むといった結末は記録されていません。
袖引小僧の漢字表記と読み方
読みは「そでひきこぞう」です。
「小僧」は、小さな坊主、または子どもを指す言い方です。姿を見た記録が無いにもかかわらず、名前だけが子どもの姿を思わせます。
袖を引くという動きは、子どもが大人の袖を引いて呼び止める仕草そのものです。名は、姿ではなくその動きから付いたと考えられます。
袖引小僧(そでひきこぞう)
日文研データベースが示す漢字表記。
ソデヒキコゾウ(そでひきこぞう)
同データベースの呼称読み。
袖引小僧の姿と特徴
袖引小僧に姿はありません。記録されているのは、引かれる袖だけです。
時 … 夕方。
場所 … 道。
出来事 … 袖を引かれる。振り返ると誰もいない。歩き出すとまた引かれる。
繰り返されるという点が、この怪異の芯です。一度きりではなく、何度も引かれます。
顔も声も足音もありません。触られている感覚だけが残ります。
袖引小僧の伝承記録
振り返っても誰もいない
話の形は単純です。夕方の道で袖を引かれ、振り返ると誰もいない。
それだけで終わりません。歩き出すと、また引かれます。
一度なら気のせいで済みます。二度、三度と続くところに、この怪異の居心地の悪さがあります。姿を見せないまま、そこにいることだけを知らせてきます。
埼玉県西部でよく語られた
日文研データベースは、柳田國男「妖怪名彙(四)」を典拠に、埼玉県西部の村でよく語られていると記します。
「よく語られている」という書き方は、一つの家や一本の道の話ではなく、土地に広く行きわたった話であることを示します。
『民間伝承』4巻1号・通巻37号は1938年9月20日の発行で、掲載は12頁です。具体的な村の名は記録されていません。
引くだけで、何もしない
妖怪の話の多くは、出会った人がどうなったかで終わります。連れ去られる、病む、命を落とす。袖引小僧にはそれがありません。
引かれる。振り返る。誰もいない。それだけが繰り返されて、話は終わります。
退ける方法も、してはいけないことも記録されていません。 夕方の道で袖を引かれるという体験そのものが、名を与えられて残りました。
袖引小僧の伝承地域
公的データベースの地域欄は埼玉県を示し、資料は西部の村でよく語られたと記します。
村の名も道の名も記録されていないため、地図で一点を指すことはできません。
埼玉県西部(さいたまけんせいぶ)
日文研データベースが示す伝承地域
埼玉県西部の所在地:埼玉県
柳田國男「妖怪名彙(四)」の地域欄に対応します。
資料は「西部の村」とのみ記し、村の名を挙げていません。
袖引小僧の正体と考えられているもの
袖引小僧の正体は確定していません。
狐や狸のしわざとも、亡霊とも語られていません。 記録にあるのは、袖が引かれるという体験だけです。
夕方は、人の輪郭がぼやける時刻です。その時刻に、後ろから軽く袖を引かれる感覚だけが残る——記録が伝えるのはそこまでです。
名に「小僧」が入りながら、子どもの姿は誰も見ていません。 姿の無いものに、いちばん小さな人の姿の名が与えられた例といえます。
袖引小僧が記録された資料
袖引小僧を扱った読み物は多くありません。中心にあるのは柳田國男の「妖怪名彙」です。
「妖怪名彙」は各地の妖怪の呼び名を短く並べた連載で、のちに単行本へまとめられました。図書館では民俗学の棚が探し先になります。
袖引小僧が記録された民俗資料
妖怪名彙(四)
柳田國男が『民間伝承』4巻1号(1938年)に載せた中心資料です。
Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。
袖引小僧についてよくある質問
袖引小僧とはどんな妖怪ですか。
埼玉県西部で語られた怪異です。夕方の道で袖を引かれ、振り返っても誰もいないというもので、歩き出すとまた引かれます。
姿を見た人はいますか。
確認した記録に姿の記述はありません。小僧という名がついていますが、子どもの姿を見たという話は残っていません。
袖を引かれるとどうなりますか。
記録では、引かれることが繰り返されるだけです。連れ去られる、病むといった結末は書かれていません。
どこに伝わりますか。
日文研データベースの地域欄は埼玉県を示し、資料は西部の村でよく語られたと記します。村の名は分かっていません。
袖引小僧と併せて覚えたい言葉・用語
妖怪名彙(ようかいめいい)
柳田國男が『民間伝承』に連載した、各地の妖怪の呼び名を集めた記事です。
民間伝承(みんかんでんしょう)
民間伝承の会が出していた雑誌。「妖怪名彙」が載りました。
小僧(こぞう)
小さな坊主、または子どもを指す言い方。姿ではなく仕草から付いた名と考えられます。
袖引小僧の参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。