頭に燭台を載せられた人間燭台。その正体は行方不明の父だった。

鳥山石燕 「今昔百鬼拾遺 燈台鬼」 1781年 / パブリックドメイン 出典
灯台鬼とはどんな妖怪か
灯台鬼はひとことで言えば、父が変わり果てた姿です。
昔、「軽大臣」(迦留大臣、かるのおとど)という日本人が、遣唐使として中国にわたったきり、行方不明になりました。
息子の「弼宰相」(ひつのさいしょう)は、父の消息を探すため、中国へ渡ります。
彼は中国のとある場所で、「灯台鬼」を見ました。これは「人間燭台」のことです。
頭に大きなロウソクを載せる台をしつらえ、体中にびっしり入れ墨をほどこされ、薬で喉をつぶされていました。
灯台鬼は、弼宰相の姿を見るとポタポタと涙を流し、声を出せないので指先を歯で噛み切り、漢詩を書きました。
灯台鬼の漢字表記と読み方
灯台鬼(とうだいき)
一般に使われる表記。
燈台鬼(とうだいき)
石燕の絵に添えられた表記。
灯台鬼の姿と特徴
石燕の絵の灯台鬼は、燭台を頭に載せた人です。
頭 … 大きな燭台。火が灯っている。
衣装 … 唐人風。
体 … 毛のような入れ墨が全身をおおう。
顔 … うつむき、目を閉じている。
そば … 碁盤と碁笥。
正体 … 人間。
鬼の角や牙は描かれていません。
灯台鬼が登場する古典の物語
父を探して唐へ渡る
軽大臣という日本人が、遣唐使として中国にわたったきり、行方不明になりました。
息子の弼宰相は、父の消息を探すため、中国へ渡ります。
そして、中国のとある場所で「灯台鬼」を見ました。
頭に大きなロウソクを載せる台をしつらえ、体中にびっしり入れ墨をほどこされ、薬で喉をつぶされた者です。
指を噛み切って詩を書く
灯台鬼は、弼宰相の姿を見るとポタポタと涙を流しました。
声を出せないので、指先を歯で噛み切り、漢詩を書きます。
我元日本華京客、汝是一家同姓人。
為子為爺前世契、隔山隔海変生辛。
弼宰相は、目の前の灯台鬼が、自分の父親の変わり果てた姿であることを知り、愕然としました。
都市伝説と結び付けられる
現代の都市伝説「中国奥地の達者」は、中国で行方不明となった日本人が人体を改造されて見世物にされる、という話の骨子が灯台鬼と全く同じです。
そのため、灯台鬼が元ネタの一つとなったと推定する説もあります。
民俗学者の飯倉義之は、この説を否定しています。
灯台鬼説話の中心が孝子説話であり異郷での身体変容に話の重きが置かれていないうえ、灯台鬼と都市伝説には1000年以上もの時間的開きがあるためです。
灯台鬼の伝承地域
灯台鬼をまつる社として広く知られたものは見当たりません。
語られてきたのは、『平家物語』『源平盛衰記』『宝物集』『広益俗説弁』といった書物の中です。舞台は中国とされます。
灯台鬼の正体と考えられているもの
灯台鬼の正体は、人間です。石燕の絵も、その正体は人間であると記します。
話の中心にあるのは孝子説話——父を探す息子の話です。
南條範夫の小説『燈台鬼』は、この説話をもとにした短編です。 1956年に第35回直木賞を受賞しました。
主人公の灯台鬼とその息子が、実在の遣唐使小野石根・小野道麻呂父子に置きかえられています。
手塚治虫『ゴブリン公爵』にも、眉間から燭台が伸びた「燈台鬼」が登場します。
灯台鬼が登場する作品
灯台鬼は、石燕の絵と『平家物語』で読めます。
南條範夫『燈台鬼』は直木賞を受けた短編で、遣唐使父子に置きかえて書かれています。大阪圭吉にも同名の短編がありますが、こちらは航路目標の灯台を舞台にした別の作品です。
灯台鬼が登場する古典
宝物集
平康頼による仏教説話集。灯台鬼の話を載せます。
灯台鬼が登場する小説・漫画
燈台鬼
南條範夫の短編。1956年に第35回直木賞を受賞しました。
ゴブリン公爵
手塚治虫。燭台の伸びた「燈台鬼」が登場します。
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灯台鬼についてよくある質問
灯台鬼とは何ですか。
頭に燭台を載せられた人間燭台です。その正体は、行方不明になった遣唐使の父でした。
なぜ声を出せないのですか。
薬で喉をつぶされていたためです。指先を噛み切って漢詩を書きました。
妖怪なのですか。
石燕の絵も、その正体は人間であると記しています。
現代の都市伝説と関係がありますか。
元ネタとする説がありますが、飯倉義之は時間的開きなどを理由に否定しています。
灯台鬼と併せて覚えたい言葉・用語
軽大臣(かるのおとど)
遣唐使として渡り行方不明になったとされる人物です。
弼宰相(ひつのさいしょう)
軽大臣の息子。父を探して中国へ渡ります。
孝子説話(こうしせつわ)
親に孝を尽くす子を主題にした説話です。