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高知県

シバテン(芝天)とはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品

シバテン  / シバテン

人型の妖怪水の妖怪 各地の伝説

土佐で人に相撲を挑む小柄な怪。負けてやると喜んで仲間を呼んでくる。

シバテンの姿を描いた図

作者不明 「シバテン」 江戸時代 / パブリックドメイン 出典

シバテンとはどんな妖怪か

シバテンはひとことで言えば相撲を取りたがる小さな怪です。

見たところ小児のようで、いかにも非力に見えます。ところが勝つと「今一番」と言って、何度でも挑んできます。

わざと負けてやると、キキと嬉しそうに鳴いて、仲間をうんと呼んできます。

九州には、挑まれて夜どおし相撲を取り、気が狂ったようになったという話が多く残ります。

それでいて、狐狸のように騙すつもりではないらしいと柳田国男は書いています。害を加えるでもなく、ただ相手をさせられます。

シバテンの漢字表記と読み方

読みは「しばてん」です。柳田国男は、これを天狗の略称ではないかと考えました。

ただし挙動は天狗ではなく、ほとんど河童と同じです。日本の中央部から西で「やたらに人と相撲を取りたがる」といえば、相手は決まって河童でした。

シバテン(しばてん)

土佐での呼び名。

芝天狗(しばてんぐ)

柳田国男が略称かと考えた形。

芝天(しばてん)

漢字を当てた書き方。

シバテンの姿と特徴

姿は小児のようです。見たところ、まるで力がなさそうに見えます。

ところが相撲では負けません。外見と強さが一致しないのが、この怪の特徴です。

体つきを細かく伝える記録は残っていません。伝わっているのは、勝ったときに鳴く声のほうです。

シバテンの伝承物語

  1. 道で相撲を挑まれる
  2. 勝つと「今一番」で終わらない
  3. わざと負けると、仲間を呼んでくる
  4. 田舎相撲のほうが古い

道で相撲を挑まれる

土佐の山や川のあたりで、小児のような姿の者に呼び止められます。

相撲を取ろう、というわけです。柳田国男はこう書いています。

土佐ではシバテンといって芝天狗の略称かとも考えるが、挙動はほとんと川童と同じである

見たところいかにも非力なので、つい相手をしてやることになります。

日本の中央部から西で、やたらに人と相撲を取りたがるといえば、相手は決まって河童でした。シバテンもその一つです。

柳田国男は、山男と人が相撲によって近づきになったという話も偶然ではないと見ています。

力比べは、言葉の要らない付き合い方です。名乗りも約束もなく、その場で始められます。

山でも川でも、出会いがしらに成立する交渉はそう多くありません。

勝つと「今一番」で終わらない

ここからが厄介でした。

見たところ小児のごとくいかにも非力であるが、勝つと何遍でも今一番というので、うるさくてしかたがない

一度勝てば済む、という相手ではありません。勝つほど回数が増えます。

しかも相手は疲れません。人のほうが先に音を上げます。

九州で語られる「夜どおし取らされた」という話は、この繰り返しの果てにあります。

九州では、挑まれて夜どおし相撲を取り、後には気が狂ったようになったという話が多く伝わりました。

わざと負けると、仲間を呼んでくる

では負けてやればよいのか。そうでもありませんでした。

わざと負けてやるとキキと嬉しそうに鳴いて、また仲間をうんと喚んでくる

勝てば繰り返され、負ければ人数が増える。どちらに転んでも終わりません。

厄介な相手ですが、狐狸のように人を騙すつもりではないらしい、と柳田国男は書いています。

害を加えるでもなく、化かすでもない。ただ相撲を取りたいだけです。

だからこそ断りにくく、付き合ってしまった人のほうが参ってしまいます。

佐渡では今も村々を代表する力士がいて、名乗りを世襲します。会津の新宮権現でも、祭の日には村の名を帯びた力士が出ました。相撲は、村と村が向かい合う場でもありました。

田舎相撲のほうが古い

そもそも、なぜ怪が相撲を挑むのか。柳田国男は、相撲そのものの歴史を遡って考えました。

朝廷の相撲召合は七月を例とする古い年中行事でしたが、唐の制度の真似でも、皇室だけの儀式でもなかったようです。

力士が諸国から貢進されたことからも、民間の風習を採り上げて国技にしたと読めます。

つまり、田舎の相撲のほうが起源としては一つ前です。 山と川の怪が挑んでくるのは、その古い層に触れているのかもしれません。

シバテンの伝承地域

シバテンの呼び名は土佐(高知県)のものです。相撲を挑まれて夜どおし取らされたという話は九州に多いと柳田国男は記しています。人と相撲を取りたがる怪は、日本の中央部から西に広く分布します。

シバテンの正体と考えられているもの

シバテンは、勝っても負けても終わらない相手です。

勝てば「今一番」と繰り返され、負ければ喜んで仲間を呼ばれる。害を加えるわけでもなく、騙すつもりもありません。

ただ相撲を取りたいだけの怪に、人が根負けします。

シバテンをめぐる妖怪のつながり

シバテンが登場する作品

シバテンは、相撲を挑む妖怪です。

土佐の川辺で人へ相撲を挑み、勝つまで離れない。 河童の一種とされることも、狸の化けたものとされることもあります。

四国では、河童をエンコ、九州ではガラッパと呼びます。シバテンもその圏内にあり、名と役目が土地ごとにずれながら重なっています。

シバテンが登場する事典

妖怪事典

村上健司による事典。全国の妖怪を採録元とともに整理しており、土地の伝承をたどる入口になります。

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日本妖怪大事典

村上健司による大部の事典。地方の小さな伝承まで、出典を添えて収めています。

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シバテンについてよくある質問

シバテンとはどんな妖怪ですか。

土佐で人に相撲を挑む小柄な怪です。柳田国男は芝天狗の略称かと考えましたが、挙動はほとんど河童と同じだとしています。

シバテンに勝つとどうなりますか。

「今一番」と言って何度でも挑んできます。うるさくてしかたがないと柳田国男は書き、九州には夜どおし取らされて気が狂ったようになった話が多いとしています。

わざと負けたらどうなりますか。

キキと嬉しそうに鳴いて、仲間をたくさん呼んできます。勝てば「今一番」と繰り返され、負ければ人数が増えるので、どちらに転んでも終わりません。

なぜ妖怪が相撲を挑むのですか。

柳田国男は相撲の歴史を遡り、朝廷の相撲召合は民間の風習を採り上げたもので、田舎相撲のほうが起源として古いと見ています。

シバテンと併せて覚えたい言葉・用語

芝天狗(しばてんぐ)

柳田国男がシバテンの元の形かと考えた呼び名。ただし挙動は河童に近い。

相撲召合(すまいのめしあわせ)

朝廷で七月に行われた相撲の行事。力士は諸国から貢進された。

田舎相撲(いなかずもう)

村ごとに力士を出す相撲。柳田国男は、これが朝廷の行事より起源として古いと見た。

シバテンの参考資料

この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。

  1. 青空文庫 柳田国男『山の人生』(一九二六年)