粗末に扱われた草履が化けたもの。夜の家の中を走り回る。

十返舎一九 「化け草履」 1803年 / パブリックドメイン 出典
化け草履とはどんな妖怪か
化け草履は、草履の妖怪です。日本各地に伝わります。
古くなった草履が化けたものとされます。
現れる条件があります。
大切に使われず、しまわれずに放り出された草履が、夜になると動き出します。
そして、家の中を走り回ります。
そのとき、唱えごとをします。
「カラカラカラ、カンカラカン、めだま三つに歯が二本」
カラカラと音を立てて走ります。
歯が二本は、下駄の歯です。
目玉が三つは、鼻緒を通す三つの穴のことです。
化け草履の漢字表記と読み方
読みは「ばけぞうり」です。
化けた草履。 名前が、そのまま中身です。
そして、この妖怪の唱えごとには謎かけがあります。
「めだま三つに歯が二本」
目玉が三つ、歯が二本。
化け物のようですが、ただの履物の説明です。
目玉三つ … 鼻緒を通す三つの穴。
歯が二本 … 下駄の二本の歯。
履物を裏返して見れば、その通りです。
そして、これは草履と下駄が混ざっています。
草履に歯はありません。 履物全体の妖怪として語られたのでしょう。
化け草履(ばけぞうり)
もっとも一般的な表記。
化草履(ばけぞうり)
送り仮名を省いた書き方。
バケゾウリ(ばけぞうり)
カタカナで書くこともある。
化け草履の姿と特徴
化け草履の姿は、草履そのものです。
そこに、顔がつきます。
目玉が三つ(鼻緒を通す三つの穴)。
歯が二本(下駄の歯)。
そして、走ります。
夜になると動き出し、家の中を走り回ります。
音を立てます。
「カラカラカラ、カンカラカン」
板の間を、履物が走る音です。
近代の絵では、こう描かれます。
草履から腕と足が生え、一つ目で、舌を出した姿。 絵によって、目の数は変わります。
化け草履の伝承物語
粗末にすると化ける
化け草履が現れる条件は、扱い方です。
大切に使われず、しまわれずに放り出された草履が化けるといいます。
脱ぎ散らかしたままにすると、化けます。
これは、付喪神の考え方です。
道具は百年たつと魂を得るとされます。
そして、粗末に扱われた道具は恨みます。
『付喪神絵巻』には、煤払いで捨てられた古道具たちが妖怪となって人を襲う話があります。
捨てられた恨みです。
化け草履も、同じ筋にあります。
違いは、害が軽いことです。
走り回るだけで、人を襲いません。
子どもに履物を片付けさせるための話でもあります。
目玉三つに歯が二本
化け草履の唱えごとは、謎かけになっています。
「カラカラカラ、カンカラカン、めだま三つに歯が二本」
目玉が三つ、歯が二本。
恐ろしげに聞こえます。
しかし、種明かしがあります。
目玉三つは、鼻緒を通す三つの穴です。
草履の裏を見ると、鼻緒を通す穴が三つあります。
前に一つ、後ろの左右に一つずつ。 合わせて三つです。
歯が二本は、下駄の二本の歯です。
裏返せば、二本の歯があります。
つまり、化け物の特徴ではありません。
履物をそのまま言葉にしただけです。
言葉遊びとして、よくできています。
化け草履の伝承地域
化け草履には、訪ねられる伝承地がありません。
家の中そのものが舞台であり、特定の場所に結びついた伝承ではないためです。
大切に使われず、しまわれずに放り出された草履が化けるとされ、どの家にも出うるものとして語られました。
碑も祠も、この名では見つかっていません。
無い場所を、あるように書くことはしません。この欄は空のままにしてあります。
化け草履の正体と考えられているもの
化け草履については、次のように整理できます。
一つめは、付喪神です。道具は百年たつと魂を得るという考え方に基づきます。 『付喪神絵巻』には、煤払いで捨てられた古道具たちが妖怪となって人を襲う話があります。
二つめは、粗末な扱いです。大切に使われず、しまわれずに放り出された草履が、夜になると動き出し、家の中を走り回るといいます。
三つめは、謎かけです。「めだま三つに歯が二本」の目玉三つは鼻緒を通す三つの穴、歯が二本は下駄の二本の歯です。履物をそのまま言葉にしたものです。
四つめは、境目のものです。履物は外と内の境にあります。 脱いで上がり、履いて出ます。境目にあるものは、怪異が宿るとされました。
化け草履は、害の軽い妖怪です。 走り回るだけで、人を襲いません。子どもに履物を片付けさせるための話でもあります。
化け草履をめぐる妖怪のつながり
化け草履が登場する作品
化け草履は、家の中の付喪神です。
脱ぎ散らかした履物が夜に走り回るという、身近な話です。 唱えごとの謎かけがよくできています。
資料は各地の民俗の記録と、付喪神の絵巻が中心です。
化け草履が登場する研究
化け草履が登場する漫画・アニメ
妖怪をまとめて扱う作品
付喪神として、唐傘お化けや提灯お化けと並べて取り上げられます。
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化け草履についてよくある質問
化け草履は何と唱えるのですか。
「カラカラカラ、カンカラカン、めだま三つに歯が二本」と唱えながら、夜の家の中を走り回るといわれます。
目玉三つ、歯が二本とは何ですか。
履物そのものの説明です。 目玉三つは鼻緒を通す三つの穴、歯が二本は下駄の二本の歯を指します。裏返して見れば、その通りです。
どうして化けるのですか。
大切に使われず、しまわれずに放り出された草履が化けるといいます。道具は百年たつと魂を得るという付喪神の考え方に基づきます。
人に害を加えますか。
走り回るだけです。 『付喪神絵巻』の古道具たちが人を襲うのに対し、化け草履の害は軽いものです。子どもに履物を片付けさせるための話でもあります。
化け草履と併せて覚えたい言葉・用語
付喪神(つくもがみ)
長く使われた道具が魂を得て妖怪になったもの。
鼻緒(はなお)
草履や下駄の、足の指を掛ける緒。三つの穴に通す。
煤払い(すすはらい)
年末の大掃除。古道具が捨てられる機会だった。