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全国に伝わるもの

五徳猫(ごとくねこ)とはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品

五徳猫  / ゴトクネコ

器物と草木獣の妖怪 鳥山石燕の絵

二本の尾を持つ猫が五徳を頭に載せ、火吹き竹で囲炉裏の炭を起こす妖怪。

五徳猫の姿を描いた図

鳥山石燕 「百器徒然袋 五徳猫」 1784年 / パブリックドメイン 出典

五徳猫とはどんな妖怪か

五徳猫は、石燕が『百器徒然袋』に描いた猫です。二本尾の猫が囲炉裏の前へ座り、鉄製の五徳を冠のように頭へ載せ、火吹き竹を口にくわえます。

一見すると猫が火の番をする場面ですが、絵には言葉遊びが仕込まれています。器物の「五徳」と、『徒然草』に登場する「五徳の冠者」というあだ名が、猫の頭の上で一つになります。

五徳猫の漢字表記と読み方

「ごとくねこ」と読みます。「五徳」は囲炉裏や火鉢で鍋を載せる鉄の台で、猫はそれを頭へ載せています。

五徳猫(ごとくねこ)

火の上で鍋を支える五徳と、猫の姿をそのまま結びつけた名。

五徳猫の姿と特徴

耳を立てた猫が後脚で座り、尾は先で二本に分かれます。頭の五徳は三本の爪を上へ向け、口元から伸びる火吹き竹は囲炉裏の炭へ届きます。猫、器物、火の道具が一つの動作にまとまった姿です。

五徳猫の伝承記録

  1. 二本尾の猫が囲炉裏の前へ座る
  2. 鉄の五徳が、そのまま冠になる
  3. 火吹き竹の息が、炭の火を起こす
  4. 「七徳」を二つ忘れて五徳の冠者になる
  5. 猫又に似ていても、五徳と火が主役になる

二本尾の猫が囲炉裏の前へ座る

五徳猫は人へ飛びかからず、囲炉裏へ正面を向けて座ります。背中は丸く、二本尾の猫が後ろ脚を折り、年を経た猫の妖怪を思わせます。暮らしの中心にある火のそばで、人の代わりに仕事を始めた場面です。

夜の留守中に動き出したようにも、家人が眠った後まで火を使っているようにも見えます。静かな室内で猫だけが道具を扱うことが、五徳猫の可笑しさと不気味さを同時に作ります。

鉄の五徳が、そのまま冠になる

頭に載る五徳は、三本の爪で鍋を支える鉄の台です。ふだんなら火の上へ置かれる道具が、上下を変えて猫の冠になります。丸い輪が頭を囲み、上向きの爪が王冠の飾りのように見えます。

五徳猫の「五徳」は、鍋を支える鉄の台の名です。名前を見てから頭上の器物を見ると、台所道具が身分を示す冠へ変わる仕掛けです。

火吹き竹の息が、炭の火を起こす

猫の口には細長い火吹き竹があり、先端は囲炉裏の炭へ向きます。息を細く送れば、灰の下で弱った火が赤くなり、再び燃え始めます。五徳猫は火の前にいるだけでなく、自分の息で火を扱っています。

鍋を載せる五徳、火力を上げる竹、熱を持つ炭。三つの道具が正しい位置に並ぶため、奇妙な猫の姿にも生活の手順が通っています。

「七徳」を二つ忘れて五徳の冠者になる

徒然草第226段に、その名の種があります。

七徳の舞〔秦王破陣樂の一名、武徳の頌語七つある、之を七徳と稱する。〕を二つ忘れたりければ、五徳の冠者と異名をつきにけるを

七から二を引いて五。失敗を数の差で呼ぶ、少し意地の悪い言葉遊びです。

石燕はこの「冠者」を本物の冠へ置き換えました。行長の頭にはなかった五徳を猫へかぶせ、古典のあだ名を一目で分かる姿にします。

猫又に似ていても、五徳と火が主役になる

二本尾は猫又と共通します。けれど五徳猫には、山奥で人へ化ける話や、飼い主へ害をなす長い事件はありません。囲炉裏の前で、五徳をかぶり、火吹き竹を使う一場面に個性が集まります。

猫又らしい尾が妖怪であることを知らせ、五徳と竹が五徳猫だけの動作を作ります。似た猫の妖怪を見分ける鍵は、尾の数だけでなく、何を頭に載せ、何をしているかです。

五徳猫の伝承地域

五徳猫は妖怪画と古典の言葉遊びから生まれました。土地の口承とは別のものです。舞台は地名を持たない囲炉裏端です。

五徳猫の正体と考えられているもの

五徳猫は、二本尾の猫、五徳、火吹き竹、『徒然草』の五徳の冠者を一枚へまとめた妖怪です。猫が火を起こす生活感と、五徳を冠へ変える洒落が同時に働きます。火を守る善悪の役目より、道具と言葉がぴたりと重なる瞬間がこの姿の核です。

五徳猫をめぐる妖怪のつながり

五徳猫が登場する作品

五徳猫は、言葉遊びから生まれた妖怪です。

『徒然草』の「五徳の冠者」は、七から二を引いて五、という意地の悪いあだ名でした。 石燕はその「冠者」を本物の冠へ置き換え、鉄の五徳を猫の頭へ載せます。

猫又と同じ二本尾を持ちながら、山で人を襲う話はありません。 囲炉裏の前で五徳をかぶり、火吹き竹を使う一場面に個性が集まっています。

五徳猫が登場する妖怪画

百器徒然袋

鳥山石燕の妖怪画集。二本尾の猫が五徳を冠のようにかぶり、火吹き竹をくわえる姿を描いています。

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五徳猫が登場する古典

徒然草

第226段に、七徳の舞のうち二つを忘れて「五徳の冠者」とあだ名された話があります。名の種になりました。

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五徳猫についてよくある質問

五徳猫とはどんな妖怪ですか。

二本尾の猫が鉄の五徳を頭へ載せ、火吹き竹をくわえて囲炉裏の炭を起こす妖怪です。鳥山石燕の『百器徒然袋』に登場します。

五徳猫は猫又と同じですか。

二本尾は猫又を思わせますが、五徳猫は五徳の冠と火吹き竹を使う一場面で作られた別の妖怪です。石燕は両者を同一とは記していません。

五徳猫の五徳とは何ですか。

囲炉裏や火鉢の火の上で、鍋ややかんを支える鉄製の台です。五徳猫は上下を逆にし、三本の爪を冠の飾りのように立てています。

五徳猫は火を守る妖怪ですか。

絵では火吹き竹で炭を起こしていますが、家を火事から守る役目や人へ福を与える性格は書かれていません。火を扱う動作そのものが中心です。

五徳猫と併せて覚えたい言葉・用語

五徳(ごとく)

火の上で鍋ややかんを支える金属製の台。五徳猫は頭へ載せる。

火吹き竹(ひふきだけ)

細く息を送って炭火を強める竹筒。猫の口から囲炉裏へ伸びる。

五徳の冠者(ごとくのかじゃ)

七徳の舞を二つ忘れた信濃前司行長へ付いた、『徒然草』のあだ名。

五徳猫の参考資料

この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。

  1. 国立国会図書館サーチ『百鬼徒然袋 3巻』
  2. 香川大学学術資産デジタルアーカイブ『画図百器徒然袋』
  3. 山梨県立大学『徒然草 第226段』