ぼろぼろになりながら残された布団が化けたもの。

鳥山石燕 「百器徒然袋 暮露暮露団」 1784年 / パブリックドメイン 出典
暮露暮露団とはどんな妖怪か
暮露暮露団は、布団の妖怪です。鳥山石燕の『百器徒然袋』(1784年)にあります。
古くなってボロボロになりながらも、さまざまな理由で残された布団が、この妖怪になるといいます。
絵では、格子模様の布団が身をよじって立ち上がり、手のような形を伸ばしています。片端に目のようなものが見えます。
名前が、すべてを言っています。
ぼろぼろの布団。 音をそのまま漢字にすると「暮露暮露団」になります。
そして、「暮露」(ぼろ)には別の意味があります。
普化禅宗の僧を指す語です。 石燕は、その意味も重ねています。
暮露暮露団の漢字表記と読み方
読みは「ぼろぼろとん」です。
ぼろぼろの布団。 音をそのまま漢字に当てると「暮露暮露団」になります。
「団」は、布団の団です。
そして「暮露」(ぼろ)には、もうひとつの意味があります。
普化禅宗の僧を指す語です。 半僧半俗の托鉢僧で、粗末な身なりをしていました。
『徒然草』第百十五段に、この「ぼろぼろ」が出てきます。
ぼろぼろに破れた布団と、ぼろぼろという僧。
同じ音に、二つの意味があります。 石燕は、その両方を使いました。
同じ本の猪口暮露も、「暮露」の字を持っています。
暮露暮露団(ぼろぼろとん)
鳥山石燕『百器徒然袋』での表記。
ぼろぼろとん(ぼろぼろとん)
仮名で書く例。
ぼろぼろ(ぼろぼろ)
『徒然草』第百十五段に出てくる普化禅宗の僧の呼び名。
暮露暮露団の姿と特徴
石燕の描く暮露暮露団は、次のような姿です。
体 … 布団。格子の模様が入っている。
動き … 身をよじり、立ち上がっている。
手 … 布の端が、手のように分かれて伸びる。
顔 … 片端に、目のようなものがある。
背景 … 畳。板の間。
中身は、綿です。
破れた口から、綿がはみ出しています。 ぼろぼろというのは、そういう状態です。
格子模様は、木綿の布団地によくある柄です。
安物です。
『百器徒然袋』には、琵琶や三味線、蒔絵の貝桶といった高価な道具が並びます。
そのなかで、この布団は最も安いもののひとつです。
白溶裔の布巾と、同じ位置にあります。
暮露暮露団の伝承物語
残された布団
暮露暮露団の生まれ方は、はっきりしています。
古くなってボロボロになりながらも、さまざまな理由で残された布団。
捨てられなかった布団です。
「さまざまな理由」と書かれているところが、この妖怪の含みです。
もったいないから。
まだ使えるから。
捨てるのが面倒だから。
捨てられない事情があるから。
理由はいくつもあります。
布団は、毎晩使うものです。
そして、人が寝ているあいだ、ずっと触れているものです。
体温も、汗も、寝言も、そこに残ります。
それが、何十年も家にある。
付喪神の考え方からすれば、これ以上の条件はありません。
徒然草の「ぼろぼろ」
『徒然草』第百十五段に、「ぼろぼろ」という者が出てきます。
普化禅宗の僧を指す語です。
半僧半俗の托鉢僧で、粗末な身なりをしていました。
『徒然草』の第百十五段は、その「ぼろぼろ」が二人、宿河原で出会う話です。
宿河原〔攝津と云ふ説と武藏と云ふ説がある〕といふ所にて、ぼろ〳〵〔梵論、虚無僧〕おほく集りて、九品の念佛〔九度調子を變へる念佛〕を申しけるに
互いに過去の因縁を告げ、そして刺し違えて死にます。
二人河原に出であひて、心ゆくばかり〔思ふ存分〕に貫きあひて
兼好法師は、その最期を書き留めました。
石燕は、この「ぼろぼろ」を布団に掛けました。
『徒然草』第百十五段の話と、ぼろぼろに破れた布団との言葉遊び。
そこから暮露暮露団が創作されたとの説があります。
『百器徒然袋』は『徒然草』を下敷きにした本ですから、筋は通っています。
伝承の無い付喪神
暮露暮露団の伝承地域
暮露暮露団には、訪ねられる伝承地がありません。
この妖怪にまつわる記録は民間伝承としては残っておらず、石燕による創作と推測されているためです。
名の下敷きとされる『徒然草』第百十五段の「ぼろぼろ」は、宿河原(現・神奈川県川崎市多摩区とされる)で出会う話です。
ただし、それは『徒然草』の舞台であって、暮露暮露団を伝える場所とは別です。
碑も祠も、この名では見つかっていません。
無い場所を、あるように書くことはしません。この欄は空のままにしてあります。
暮露暮露団の正体と考えられているもの
暮露暮露団の正体については、次のように整理できます。
一つめは、残された布団です。古くなってボロボロになりながらも、さまざまな理由で残された布団が、この妖怪になるとされます。捨てられなかったことが条件です。
二つめは、言葉遊びです。「ぼろぼろ」という音に、布団の「団」を足したものです。音をそのまま漢字に当てると「暮露暮露団」になります。
三つめは、『徒然草』第百十五段です。「暮露」は普化禅宗の僧を指す語で、同段にその「ぼろぼろ」が出てきます。石燕は、その話と破れた布団を掛けたとする説があります。
四つめは、付喪神です。長い年月を経た器物に魂が宿るという考え方の上にあります。布団は毎晩、体に触れているものです。
暮露暮露団は、伝承として語られてきた妖怪ではありません。 石燕が音と『徒然草』から仕立てた一体と考えられています。
暮露暮露団をめぐる妖怪のつながり
暮露暮露団が登場する作品
暮露暮露団は、音と『徒然草』を下敷きにした絵です。
「ぼろぼろ」が普化禅宗の僧を指す語であることを知っていると、名の二重の意味が見えてきます。
資料は石燕の絵と、その典拠にあたるものが中心です。
暮露暮露団が登場する古典
付喪神絵巻
室町時代の絵巻。長い年月を経た器物に魂が宿るという考え方を描きます。
暮露暮露団が登場する研究
暮露暮露団が登場する漫画・アニメ
妖怪をまとめて扱う作品
器物の妖怪として、付喪神と並べて取り上げられます。
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暮露暮露団についてよくある質問
暮露暮露団はどうやって生まれるのですか。
古くなってボロボロになりながらも、さまざまな理由で残された布団が、この妖怪になるといいます。捨てられなかったことが条件です。
「暮露」とはどういう意味ですか。
「ぼろ」という音に当てた字ですが、普化禅宗の僧を指す語でもあります。半僧半俗の托鉢僧で、粗末な身なりをしていました。
『徒然草』とどう関係がありますか。
第百十五段に「ぼろぼろ」という者の話があります。その話と、ぼろぼろに破れた布団との言葉遊びで創作されたとの説があります。
伝承はあるのですか。
ありません。 この妖怪にまつわる記録は民間伝承としては残っておらず、石燕による創作と推測されています。
暮露暮露団と併せて覚えたい言葉・用語
暮露(ぼろ)
普化禅宗の僧を指す語。半僧半俗の托鉢僧。
付喪神(つくもがみ)
長い年月を経た器物に魂が宿ったもの。
普化禅宗(ふけぜんしゅう)
禅宗の一派。虚無僧が属した宗派としても知られる。