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京都府

大蜘蛛(おおぐも)とはどんな妖怪か|姿と伝承・登場する作品・伝承地域

大蜘蛛  / オオグモ

獣の妖怪 怪談・百物語

老婆や天井から伸びる毛むくじゃらの手となって人を襲い、斬られた後に巨大な蜘蛛の姿を現す怪異。

大蜘蛛の姿を描いた図

作者不明 「曾呂利物語 大蜘蛛」 1663年 / パブリックドメイン 出典

大蜘蛛とはどんな妖怪か

大蜘蛛は、巨大な蜘蛛を正体とする複数の怪談の呼び名です。老婆へ化ける話、寺の天井から毛むくじゃらの手を伸ばす話、病人にだけ姿を見せる話があります。

別々の土地の話が、同じ名でまとめられています。人に近づく姿は話ごとに違い、最後に蜘蛛の死骸や巣が見つかることで、直前の怪異の正体が明かされます。

大蜘蛛の漢字表記と読み方

「おおぐも」と読みます。「足高蜘」は『曾呂利物語』の一話に現れる名です。

大蜘蛛(おおぐも)

巨大な蜘蛛、または巨大な蜘蛛を正体とする怪異の呼び名。

足高蜘(あしだかぐも)

『曾呂利物語』の章題に見える蜘蛛の表記。

大蜘蛛の姿と特徴

『曾呂利物語』では髪を振り乱した六十歳ほどの老婆、『狗張子』では天井から下りる毛むくじゃらの手として人へ近づきます。斬られた後には、人の姿が消え、巨大な蜘蛛の死骸が残ります。

大蜘蛛の伝承記録

  1. 栗の木の下で、老婆が不気味に笑う
  2. 髪を振り乱して入る老婆を斬る
  3. 京都の寺で、天井から手が下りる
  4. 病人にだけ、枕元の蜘蛛が見える
  5. 老婆も毛深い手も、最後は蜘蛛になる

栗の木の下で、老婆が不気味に笑う

『曾呂利物語』の「足高蜘の変化の事」では、山里に住む男が夕暮れの道を歩いていました。大きな栗の木の下に、六十歳ほどの老婆が立っています。

老婆は男を見ると、不気味な笑みを浮かべました。男は胸騒ぎを覚えて家へ戻りますが、老婆の顔が頭から離れません。夜になると、月明かりを受けた女の影が障子へ映りました

髪を振り乱して入る老婆を斬る

男は刀を手元へ置き、影が部屋へ入るのを待ちました。やがて老婆が髪を振り乱し、襲いかかってきます。男は刀を抜き、相手の胴を斬りました。

騒ぎを聞いた家の者が駆けつけると、老婆の姿はありません。気を失った男のそばに、脚を斬られた巨大な蜘蛛が死んでいました。昼に道で笑った老婆も、夜に家へ来た女も、蜘蛛の変化だったのです。

京都の寺で、天井から手が下りる

『狗張子』では、京都の五条烏丸にある寺が舞台になります。泊まっていた山伏の顔を、夜ごと天井から下りる毛むくじゃらの手が撫でました。

山伏は刀を構え、手が伸びた瞬間に斬りつけます。手は天井へ引っ込み、その夜は静かになりました。翌朝、仏壇のそばを調べると、二尺八寸ほどもある大蜘蛛が死んでいました。

病人にだけ、枕元の蜘蛛が見える

『信濃奇勝録』には、病人にだけ見える蜘蛛の話があります。周囲の人には見えない大蜘蛛が枕元へ現れ、病人は日に日に衰えていきました。

家の者が病人の視線を頼りにその場所を探り、蜘蛛を退けると、病は快方へ向かいます。老婆や手へ化ける話とは違い、ここでは大蜘蛛そのものが、病人の生気を奪う相手として現れます。

老婆も毛深い手も、最後は蜘蛛になる

山里の男が斬ったのは、老婆に見えるものでした。寺の山伏が斬ったのも、天井から下りてきた人の手です。ところが朝になると、どちらの姿も消え、傷を負った大蜘蛛が残っていました。

人から蜘蛛へ変わる瞬間を見た者はいません。目の前にいたはずの相手が消え、その場所で巨大な蜘蛛が死んでいる。人の姿を借りていた正体は、夜が明けてから明らかになります

大蜘蛛の伝承地域

大蜘蛛は各地の複数の話に現れます。地図は『狗張子』が示す京都の地域を代表して置き、すべての大蜘蛛伝承の中心地とはしません。

五条烏丸周辺(ごじょうからすましゅうへん)

『狗張子』の大蜘蛛譚の舞台

地図で開く

五条烏丸周辺の所在地:京都府京都市下京区五条烏丸周辺

寺の天井から毛むくじゃらの手が伸びる話の地域です。

示しているのは物語の舞台となった地域です。

大蜘蛛の正体と考えられているもの

大蜘蛛は、老婆・毛深い手・病人にだけ見える蜘蛛という異なる姿で人へ近づき、最後に巨大な蜘蛛の正体を現す怪談の総称です。

大蜘蛛をめぐる妖怪のつながり

大蜘蛛が登場する作品

大蜘蛛は、複数の怪談をまとめた呼び名です。

老婆に化ける話、天井から手を伸ばす話、病人にだけ見える話。 別々の書物に載る話が、正体が巨大な蜘蛛だったという一点で同じ名にまとめられています。

人から蜘蛛へ変わる瞬間を見た者はいません。 目の前にいたはずの相手が消え、その場所で蜘蛛が死んでいる。正体は、夜が明けてから明らかになります。

大蜘蛛が登場する古典・怪談

曽呂利物語

江戸前期の怪談集。「足高蜘の変化の事」で、栗の木の下の老婆に化けた大蜘蛛が斬られます。

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伽婢子

浅井了意の怪談集。夜ごと天井から毛むくじゃらの手が下りる話など、蜘蛛の怪異が収められています。

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大蜘蛛についてよくある質問

大蜘蛛とはどんな妖怪ですか。

巨大な蜘蛛を正体とする怪異です。老婆に化ける、天井から毛むくじゃらの手を伸ばす、病人の生気を奪うなど複数の話があります。

大蜘蛛と土蜘蛛は同じですか。

別のものです。大蜘蛛は巨大な蜘蛛の怪談を広く指し、土蜘蛛は源頼光の物語や古い歴史的呼称を持つ別の系譜です。

大蜘蛛と女郎蜘蛛は同じですか。

重なる話がありながら、名は分かれています。女郎蜘蛛は美女へ化ける名を持つ一方、大蜘蛛には老婆や手だけで現れる話もあります。

大蜘蛛が登場する古典は何ですか。

老婆へ化ける『曾呂利物語』、寺の天井から手を伸ばす『狗張子』、病人にだけ見える蜘蛛を収めた『信濃奇勝録』などがあります。

大蜘蛛と併せて覚えたい言葉・用語

変化(へんげ)

人や別の物の姿へ変わって現れること。

山伏(やまぶし)

山で修行する修験道の行者。『狗張子』では大蜘蛛の手を斬ります。

二尺八寸(にしゃくはっすん)

約八十五センチ。『狗張子』の大蜘蛛の大きさとして語られます。

大蜘蛛の参考資料

この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。

  1. 国立国会図書館デジタルコレクション『近代日本文学大系 第13巻』
  2. 国立国会図書館サーチ『信濃奇勝録 巻之1』
  3. 國學院大學学術情報リポジトリ「蜘蛛の表象に関する研究」