宮城県仙台市に伝わる、古い柿の木が化けたとされる大入道。

タンタンコロリンとはどんな妖怪か
タンタンコロリンはひとことで言えば、柿の木が化けたものです。
放っておかれた木が化けます。
宮城県仙台市に伝わります。古い柿の木が化けた大入道で、実を採らずに放っておくと現れるとされます。
袖口から柿の実をぽろぽろ落としながら歩く姿が知られていますが、これは山田野理夫の『おばけ文庫6 たんたんころりん』に載るもので、元にした資料が分からず、本当に語られていた話かどうかは疑わしいと指摘されています。
名については、何かを転がすときの音を写したものではないかとみられています。
タンタンコロリンの漢字表記と読み方
読みは「たんたんころりん」です。漢字表記はありません。
名の由来について、柳田國男は『妖怪談義』で、何かを転がすときの擬音ではないかと指摘しています。同じ指摘は近年の研究でも繰り返されています。
つまり「柿の実がころころ転がる音」が、そのまま妖怪の名になった可能性があります。
注意が必要なのは、タンコロリンとの混同です。こちらは青森県五所川原市・金木町・弘前で、拗ねる子供を叱るときに持ち出される妖怪の名でした。水木しげるが柿の木の妖怪のほうを「タンコロリン」の名で紹介したことから、他の書物でもこの名で広まったといわれます。
タンタンコロリン(たんたんころりん)
もっとも一般的な表記。仮名書きが普通。
たんたんころりん(たんたんころりん)
平仮名表記。書名にはこの形が使われる。
タンコロリン(たんころりん)
青森県に伝わる別の妖怪の名。しばしば混同される。
タンタンコロリンの姿と特徴
タンタンコロリンの姿は、次のように伝えられます。
姿 … 古い柿の木が化けた大入道。
振る舞い … 袖口から柿の実をぽろぽろ落としながら歩く。
現れる条件 … 柿の実を採らずに放置しておくこと。
ただし、袖口から柿を落とす姿は、資料の裏づけがはっきりしません。 山田野理夫の本に載るものですが、参考にした資料が明らかでないためです。
確かなのは「古い柿の木が化けた大入道」という点と、「実を採らないと現れる」という点です。
宮城に伝わる柿の精の話では、真っ赤な顔の大男の姿で現れます。栗原郡(いまの栗原市)の民話では、夜中に現れて尻をほじって嘗めろと言い、言われたとおりにすると甘い柿の味がしたといいます。
タンタンコロリンの伝承物語
柿を採らないと出る ─ 現れる条件
タンタンコロリンには、はっきりした現れる条件があります。
柿の実を採らずに放置しておくこと。 これだけです。
古い柿の木が化けた大入道が現れると伝わります。
これは怪談というより、戒めの形をしています。 実った柿は採る。放っておけば化ける。農家の暮らしの中で、そのまま守るべき決まりとして働いていたと考えられます。
柿は干し柿にすれば冬の食料になります。採らずに置くことは、単なる怠慢ではなく、暮らしを危うくする行いでした。
同じ形の妖怪は各地にあります。実った作物を放っておくと何かが出る、という話は、暮らしの手順を守らせる仕組みとして働いていました。
柿の精の民話 ─ 尻から柿の味
宮城には、柿が人に化けるという話が数多く残ります。
ある民話では、寺の小僧のもとに男がやって来て、自分の糞をすり鉢ですって食べろと言いました。小僧は嫌がりましたが、男が怒るので仕方なく食べると、とても美味しい柿の味がしました。
不思議に思った小僧が和尚に話し、二人で男を捜し出して跡をつけます。男は山奥へ入って姿を消し、そこには大きな柿の木があって、実がたくさん落ちていました。
和尚が「きっとこの柿の実が化けたのだろう」と拾い集めて持ち帰ったところ、男は現れなくなったといいます。
栗原郡(いまの栗原市)には「柿の精」と題する話もあります。屋敷に仕える女が庭の柿を食べたいと思っていると、夜中に真っ赤な顔の大男が現れ、尻をほじって嘗めろと言う。言われたとおりにすると甘い柿の味がし、翌朝に柿の木を見ると実に抉り取った跡があったといいます。
話が広まる ─ 集める側の事情
宮城に柿の精の話が多いことには、集める側の事情があります。
昔話収集家の佐々木徳夫が宮城県を拠点に調査を行い、意識して柿の精の話を集めたためです。
同じ形の柿の妖怪話は、岩手県や秋田県でも分布が確認されています。また同じ筋でナシやリンゴの妖怪が出る話もあります。
さらに、アイヌの伝承にもウバユリやギョウジャニンニクの精が同じように人と接する話があります。探せば東北一帯、あるいはもっと広い地方に類話が分布している可能性があると指摘されています。
ここで一つ、はっきりさせておくべきことがあります。
これらの柿の精はタンタンコロリンと同一視されがちですが、「放置された柿の精」以外の柿の精が「タンタンコロリン」という名で呼ばれ、同じものとして扱われた事例は見つかっていません。 同じものだと言い切ることはできません。
タンタンコロリンの伝承地域
タンタンコロリンの伝承地は、宮城県仙台市です。
柿の精の話としては、栗原市(旧・栗原郡)にも同じ形のものが伝わります。同じ筋の話は岩手県・秋田県にも分布しています。
会いに行ける施設や祠は確認できませんでした。 古い柿の木がある家の庭が、そのまま伝承地にあたります。
仙台市(せんだいし)
タンタンコロリンが伝わる土地
仙台市の所在地:宮城県仙台市
タンタンコロリンの伝承地は仙台市です。ここが本来の土地です。
山田野理夫の本には、仙台市に現れた、袖口から柿の実を落としながら歩く姿の話が収録されています。
ただし参考にした資料が不明であり、実際に語られていた話かどうかは疑わしいとされています。
柿の木は市街地の民家の庭にも多く見られます。
タンタンコロリンを主題とした施設は確認できませんでした。
栗原市(旧・栗原郡)(くりはらし(きゅう・くりはらぐん))
「柿の精」の民話が伝わる土地
栗原市(旧・栗原郡)の所在地:宮城県栗原市
「柿の精」と題する民話が伝わる土地です。
屋敷に仕える女の前に、夜中に真っ赤な顔の大男が現れる話です。翌朝、柿の木の実に抉り取った跡があったといいます。
佐々木喜善の『聴耳草紙』にも「柿男」と題して同じ形の話があります。
三原良吉が『仙台の昔話』に「柿の精」として同じ話を載せています。
タンタンコロリンの正体と考えられているもの
タンタンコロリンの正体については、次のように考えられています。
柿の実が転がる音から生まれた名とする見方が有力です。柳田國男は『妖怪談義』で、この表現が何かを転がす際の擬音として現れる話がいくつかあることを指摘しています。近年の研究も同じ見方をとります。
採り忘れを戒める話とする見方も自然です。実った柿を放っておくと化ける、という条件がはっきりしていることから、暮らしの手順を守らせる仕組みとして働いていたと考えられます。
姿の描写には裏づけが乏しいことに注意が必要です。袖口から柿を落として歩く姿は山田野理夫の本に載るものですが、参考にした資料が不明で、実在した伝承かどうか疑われています。
タンコロリンとは別のものです。 こちらは青森県で、拗ねる子供を叱るときに持ち出される妖怪の名でした。水木しげるが柿の木の妖怪をこの名で紹介したことから混同が広まったといわれます。青森県には、狐が人を殺すときに唱える呪文の中に「タンコロリン」という語句がある、という別の伝えもあります。
タンタンコロリンをめぐる妖怪のつながり
タンタンコロリンが登場する作品
タンタンコロリンは、名前が二つに割れてしまった妖怪です。
水木しげるが柿の木の妖怪を「タンコロリン」の名で紹介したことで、他の書物でも同じ名で広まりました。
しかし本来のタンコロリンは青森県の別の妖怪であり、二つは同じものではありません。 作品での扱いを追うときは、どちらの名を指しているかに注意が要ります。
タンタンコロリンが登場する書物
タンタンコロリンが登場する漫画・アニメ
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タンタンコロリンについてよくある質問
タンタンコロリンとは何ですか。
宮城県仙台市に伝わる柿の木の妖怪です。古い柿の木が化けた大入道で、実を採らずに放っておくと現れるとされます。
タンタンコロリンはどこに出ますか。
宮城県仙台市です。柿の精の話としては栗原市にも同じ形のものが伝わります。会いに行ける施設や祠は確認できませんでした。
タンコロリンとは違うのですか。
違います。タンコロリンは青森県で、拗ねる子供を叱るときに持ち出される妖怪の名です。水木しげるが柿の木の妖怪をこの名で紹介したことから混同が広まったといわれます。
名前の由来は何ですか。
何かを転がすときの擬音とみられています。柳田國男も『妖怪談義』で同じ指摘をしています。柿の実が転がる音を写したものと考えられます。
タンタンコロリンと併せて覚えたい言葉・用語
柿の精(かきのせい)
宮城に多く伝わる、柿が人に化ける話。タンタンコロリンと同一視されるが、同じ名で呼ばれた例は見つかっていない。
タンコロリン(たんころりん)
青森県で拗ねる子供を叱るときに持ち出される妖怪の名。タンタンコロリンとは別。
佐々木徳夫(ささきとくお)
宮城県を拠点に昔話を集めた収集家。柿の精の話を意識して集めた。