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全国に伝わるもの

餓鬼憑き(がきつき)とはどんな妖怪か|姿と伝承

餓鬼憑き  / ガキツキ

憑き物病の妖怪 各地の伝説

道を歩いている最中、突然の飢えと脱力で一歩も動けなくなる。餓死者の霊や餓鬼が憑いたと語られた怪異。

餓鬼憑きの姿を描いた図

HDDIV 「六甲山最高峰(兵庫県神戸市)」 2012年 / CC BY-SA 3.0 出典

餓鬼憑きとはどんな妖怪か

餓鬼憑きは、突然の飢えで人を止める怪異です。姿の見えない餓鬼が取り憑くと、力が抜け、食べ物なしには歩けなくなります。

伊勢から伊賀へ向かう道では、餓死した者の怨念が通行人へ憑くといわれました。六甲山では雪の上で汗を流して座り込み、新潟では味噌汁や粥を食べても回復に数日かかります。同じ名の怪異でも、土地ごとに襲い方と助かり方が違います。

餓鬼憑きの漢字表記と読み方

餓鬼憑きは「がきつき」と読みます。六甲山では、餓鬼をひだる神、ひだるぼうとも呼びました。いずれも、山道で人を急な飢えと脱力へ陥らせるものです。

餓鬼憑き(がきつき)

餓鬼が人へ憑く現象を表す名称。

餓鬼(がき)

伊勢・伊賀、新潟、六甲山、相馬地方の採録で使われる呼称。

ひだる神・ひだるぼう(ひだるがみ・ひだるぼう)

六甲山で餓鬼と並んで使われた呼び名。

餓鬼憑きの姿と特徴

餓鬼の姿は見えません。取り憑かれた人の体に異変が現れます。力が抜けて歩けなくなり、六甲山では両手を震わせ、冬の雪の上で汗を流しながら座り込んだ人もいました。

餓鬼憑きの伝承物語

  1. 伊勢から伊賀への道で、後ろの男が動けなくなる
  2. 六甲山では、雪の上で汗を流して座り込む
  3. 新潟では、味噌汁と粥で数日かけて戻す
  4. 相馬では、へらから飯を食べると空腹が終わらない

伊勢から伊賀への道で、後ろの男が動けなくなる

伊勢から伊賀へ向かう道で、後ろを歩いていた男が急に立ち止まりました。足に力が入らず、それ以上進めません。男は餓鬼に憑かれたと言い、食べ物を求めました。

この道では、行き倒れて餓死した者の怨念が餓鬼となり、通行人へ取り憑くといわれていました。飢えたまま死んだ者が、今度は生きて歩く人へ同じ飢えを負わせるのです。

播磨の僧も伊予を旅した時、同じように餓鬼へ憑かれたと語っています。

六甲山では、雪の上で汗を流して座り込む

空腹のまま六甲山へ入ると、餓鬼に取り憑かれると恐れられました。両手が震え始め、やがて立っていられなくなります。冬の雪の上に座り込みながら、汗を流した人もいました。

倒れた人へ生卵を飲ませると、意識を取り戻しました。米一粒にも力があります。山へ入る時に米を持ち、一粒を投げる。あるいは自分で一粒食べて「ああ、うまかった」と口にする。そうすれば餓鬼憑きが解けると伝わります。

新潟では、味噌汁と粥で数日かけて戻す

現在の新潟市秋葉区にあたる土地でも、餓死した人の霊が通行人へ憑くといわれました。人が倒れた場所には、死者を弔う供養塔も建てられています。

餓鬼に憑かれた人は、その場から動けません。周りの人は味噌汁や粥を食べさせ、休ませました。食べてすぐ元へ戻るわけではなく、全快するまで数日を要しました。

相馬では、へらから飯を食べると空腹が終わらない

福島県の相馬地方では、餓鬼は山道ではなく、家の食卓へ現れます。

へらは、釜の飯を混ぜ、茶碗へよそうための道具です。そのへらから炊いた米を直接食べてはいけません。茶碗へ移す前の飯を口にすると餓鬼が憑き、どれほど食べ続けても腹が満たされなくなるからです。

餓鬼憑きの伝承地域

餓鬼憑きは各地で別々に語られてきました。伊勢から伊賀への道、六甲山、新潟県、相馬地方に、それぞれ違う場面と助かり方が残っています。

六甲山(ろっこうさん)

餓鬼・ひだる神の採録地域

地図で開く

六甲山の所在地:兵庫県神戸市

空腹の登山者が震えて座り込む話が採録されています。

登山道や地点までは特定されていません。

新潟市秋葉区(にいがたしあきはく)

餓死者の霊が憑く話の採録地域

地図で開く

新潟市秋葉区の所在地:新潟県新潟市秋葉区

動けなくなった人を食事で介抱する話があります。

供養塔の名称や位置は公開カードにありません。

相馬地方(そうまちほう)

食事作法に結び付く餓鬼の伝承地域

地図で開く

相馬地方の所在地:福島県相馬市

へらから飯を食べると憑くとされました。

現在の一地点ではなく地方の代表位置です。

餓鬼憑きの正体と考えられているもの

餓鬼憑きは、妖怪の姿を見る話ではなく、突然の飢えが人の体を支配する話です。旅人を一歩も動けなくする飢えと、米や卵、汁物で人を現世へ戻す知恵が対になっています。

餓鬼憑きをめぐる妖怪のつながり

同じ地域・原典 姿・性質が似る 対立・退治 混同・地域変異

餓鬼憑きが登場する作品

餓鬼憑きは、米一粒で解ける怪異です。

六甲山では、倒れた人へ生卵を飲ませると意識を取り戻したといいます。 山へ入る時に米を持ち、一粒を投げる。あるいは自分で一粒食べて「ああ、うまかった」と口にする。

相馬では、へらから直接飯を食べてはいけないとされました。山道の話が、家の食卓の作法にまで及んでいます。

餓鬼憑きが登場する民俗学

綜合日本民俗語彙

全国の民俗語彙を集めた辞典。妖怪名だけでなく、土地ごとの言い回しごと記録されています。

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妖怪談義

柳田国男の妖怪論集。個々の妖怪を、全国の分布と名の変化のなかへ置いて論じています。

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餓鬼憑きについてよくある質問

餓鬼憑きとはどんな妖怪ですか。

旅や山歩きの途中で、急な空腹と脱力を起こして歩けなくするとされた、姿の見えない憑き物です。餓死した人の霊とされた土地もあります。

餓鬼憑きに遭うとどうなりますか。

歩けなくなる、両手が震える、冬でも汗を流して座り込む、いくら食べても満腹になれないなど、土地ごとに違う異変が起こります。

餓鬼憑きは食べ物で治りますか。

六甲山では米一粒や生卵、新潟では味噌汁や粥を食べさせました。新潟の話ではすぐには戻らず、全快するまで数日かかります。

餓鬼憑きとひだる神は同じですか。

兵庫県の伝承では同じ怪異を餓鬼、ひだる神、ひだるぼうと呼びました。伊勢・伊賀、新潟、相馬地方では餓鬼の名で語られています。

餓鬼憑きと併せて覚えたい言葉・用語

餓鬼(がき)

飢えに苦しむ存在。各地の憑き物伝承では、人へ急な空腹や脱力を起こす。

ひだる神(ひだるがみ)

山道などで人を急な飢えと脱力へ陥らせるとされた怪異の名。

へら(へら)

釜の飯をよそい、混ぜるための道具。しゃもじ。

餓鬼憑きの参考資料

この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。

  1. 国際日本文化研究センター「餓鬼」伊勢・伊賀
  2. 国際日本文化研究センター「ひだる神,ひだるぼう,餓鬼」
  3. 国際日本文化研究センター「餓鬼」新潟県
  4. 国際日本文化研究センター「餓鬼」相馬地方