山口県で、旧六月頃にどこからか聞こえるという太鼓の音。難破して死んだ軽業師の一行によるとされた。
虚空太鼓とはどんな妖怪か
虚空太鼓はひとことで言えば、海で死んだ一行の太鼓です。山口県の話です。
国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースは、柳田国男「妖怪名彙」(『民間伝承』、1938年)を典拠に、昔、宮島様のお祭りの日に軽業師の一行が難破して死んで以来、旧6月の頃にどこからか太鼓の音が聞こえると記します。
軽業師は、綱渡りや曲芸を見せて回る芸人です。祭りへ向かう途中で船が難破し、一行がそろって亡くなったという筋です。
音が聞こえるのは旧暦六月の頃、つまり難破した季節にあたります。
姿は語られません。 太鼓の音だけが、決まった季節に戻ってきます。
虚空太鼓の漢字表記と読み方
読みは「こくうだいこ」です。
「虚空」は、何も無い空間、大空を指す言葉です。出どころの無い音であることが、そのまま名になっています。
似た名の付け方に、狸のしわざとされる狸囃子や、山で鳴る天狗囃子があります。いずれも「誰が鳴らしているか分からない音」に名を与えたものです。
虚空太鼓(こくうだいこ)
日文研データベースが示す漢字表記。
コクウダイコ(こくうだいこ)
同データベースの呼称読み。
虚空太鼓の姿と特徴
虚空太鼓に姿はありません。記録にあるのは、音と季節と由来です。
音 … 太鼓の音。どこからか聞こえる。
季節 … 旧暦六月の頃。
由来 … 宮島様の祭りへ向かう軽業師の一行が難破して死んだ。
姿を見た、亡霊が現れたという記述はありません。
音を聞いた人がどうなるかも書かれていません。祟るとも、助けを求めるとも記録されていません。
虚空太鼓の伝承記録
祭りへ向かう途中の難破
話の背景にあるのは、宮島様のお祭りです。宮島は広島県の厳島で、海を渡って参る場所です。
芸を見せに行く途中で、船ごと海に沈んだ。軽業師の一行にとって、太鼓は仕事の道具でした。
その道具の音が、死んだあとも季節ごとに戻ってきます。 芸人が芸を続けている、とも読める形です。
具体的な年も、船の名も、人数も記録されていません。
旧六月に戻る音
音が聞こえるのは旧暦六月の頃とされます。難破した時期に合わせて、毎年その季節に鳴るという語られ方です。
決まった季節に決まった音が聞こえる、という形は各地の怪異にあります。命日に近い時期に音や火が現れるという語りは、亡くなった人を覚えている形でもあります。
虚空太鼓の場合、戻ってくるのは祭りの音です。祭りで打つ、賑やかな音です。
海で果てた芸人たちが、季節が巡るたびに太鼓を打つ。 記録が伝えるのは、その一行の名残です。
虚空太鼓の伝承地域
公的データベースの地域欄は山口県を示します。話に出てくる宮島は広島県の厳島です。
音が聞こえる場所を示す村や海辺の名は記録されていません。
虚空太鼓の正体と考えられているもの
虚空太鼓の正体は、記録の中では難破して死んだ軽業師の一行とされています。
ただし、その一行がいつの人か、どこの座だったかは書かれていません。難破の記録として確かめられる出来事なのかも、資料からは分かりません。
海鳴りや、遠くの祭り囃子が風に乗って届いた音を考えることはできますが、資料はそこに触れていません。
残ったのは、季節が巡ると鳴る太鼓という形と、芸人の一行が海で死んだという由来です。
虚空太鼓が記録された資料
虚空太鼓を単独で扱った本は見当たりません。読めるのは柳田国男の「妖怪名彙」です。
音の怪異は各地にあり、狸囃子や天狗囃子と並べて論じられることがあります。虚空太鼓は、その中でも由来のはっきりした例です。
虚空太鼓が記録された民俗資料
妖怪名彙
柳田国男が『民間伝承』(1938年)に載せた中心資料です。
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虚空太鼓についてよくある質問
虚空太鼓とはどんな妖怪ですか。
山口県で語られた音の怪異です。旧暦六月の頃に、どこからか太鼓の音が聞こえるとされました。
なぜ太鼓の音がするのですか。
宮島様の祭りへ向かう軽業師の一行が難破して死んで以来だと記録されています。
姿は見えるのですか。
見えません。確認した記録にあるのは音だけで、亡霊が現れるとは書かれていません。
いつ聞こえるのですか。
旧暦六月の頃とされます。難破したとされる季節にあたります。
虚空太鼓と併せて覚えたい言葉・用語
軽業師(かるわざし)
綱渡りや曲芸を見せて回る芸人。難破したのはこの一行とされます。
宮島(みやじま)
広島県の厳島。祭りへ向かう途中の難破という筋の舞台です。
虚空(こくう)
何も無い空間。出どころの無い音であることを表した名です。
虚空太鼓の参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。