本文へ移動

新潟県

六人搗き(ろくにんづき)とはどんな妖怪か|姿と伝承

六人搗き  / ロクニンヅキ

そのほか獣の妖怪 各地の伝説

鼬の群れの物音を六人の臼搗きに聞きなし、家の繁栄や衰退の前兆とした新潟県の音の怪異。

六人搗きの姿を描いた図

nubobo 「蒼柴神社(新潟県長岡市)」 2019年 / CC BY 2.0 出典

六人搗きとはどんな妖怪か

六人搗きは、新潟県で語られた音の怪異です。鼬の群れが騒ぐ音を、六人が臼を搗いているような規則的な音と聞きなし、家が栄える、または衰える前触れとしました。音のする方へ近づくと物音が止み、正体を目で確かめる前に体験が終わります。六人の人影が現れる話ではなく、聞こえる音につけられた名です。

六人搗きの漢字表記と読み方

読みは「ろくにんづき」です。「搗き」は、杵を上下させて臼の中の穀物や餅をつく動作を指します。

名称の「六人」は、音の数え方から来た言い方です。複数の人が調子を合わせて臼を搗くように聞こえる物音を表しています。「鼬の六人搗き」と呼ぶ場合は、その音を鼬の群れによるものと説明しています。

六人搗き(ろくにんづき)

六人が臼を搗くように聞こえる音を表した名称。

鼬の六人搗き(いたちのろくにんづき)

音の主を鼬の群れとする説明を含めた呼び方。

六人搗きの姿と特徴

六人搗きは、姿よりも音で知られる怪異です。人のいない方角から、複数人が臼を搗くような規則的な物音が聞こえます。音を確かめようと近づくと止み、音の主は姿を見せません。

伝承では鼬の群れが騒ぐ音とされます。姿を見たという話は残っていません。鼬の色、大きさ、並び方も語られません。

聞き慣れた共同作業の音が、人のいない場所から聞こえ、確かめると消えることが六人搗きの怪異です。

六人搗きの伝承記録

  1. 六人で臼を搗くような音
  2. 栄える前兆か衰える前兆か
  3. 追うと音が止まる

六人で臼を搗くような音

六人搗きで聞こえるのは、六人が一つの臼を囲み、杵を交互に振り下ろしているような音です。しかし、音のする場所に実際の臼や人はいません

米や餅を臼で搗く作業には、一定の間隔と繰り返しがあります。人々が暮らしの中でよく知っていたリズムだからこそ、姿がなくても「六人で搗いている」と聞き分けられました。

この呼び名は、怪物の身体ではなく、何人もの動作を思わせる音の型を表しています。六人という数は物音のたとえであり、現れた鼬の頭数としては記録されていません。

栄える前兆か衰える前兆か

六人搗きの音は、ただ不気味なだけでなく、家の行く末を知らせる前兆とも受け取られました。紹介される伝承には、家が衰える前触れとする説明と、反対に家が栄える前触れとする説明があります。

同じような音が正反対の意味を持つのは、物音そのものに吉凶が固定されていたのではなく、語られた土地や家ごとに受け取り方が違ったことを示します。

六人搗きは「凶兆だけの妖怪」でも「吉兆だけの妖怪」でもありません。家の変化を知らせる音として、相反する伝えが残っています。

追うと音が止まる

臼搗きのような音を聞いた者が、正体を確かめようと音の方へ近づくと、物音は止んでしまうとされます。そこに六人の作業者も臼もなく、鼬の群れを目撃する場面も中心の説明にはありません。

遠くで聞けば人の作業に思え、近づけば消える。この順序によって、音の主を確かめられないまま話が終わります。

六人搗きには、戦いや退治の結末はありません。聞く、近づく、止むという短い体験が繰り返し語られた伝承記録です。

六人搗きの伝承地域

六人搗きは新潟県の伝承として紹介されています。確認できる書誌情報だけでは、採録された集落、屋敷、山林、道を一地点へ絞れません。

地図は新潟県という伝承範囲を示すための代表位置です。示しているのは長岡市という伝承地域です。

新潟県(にいがたけん)

六人搗きの伝承地域

地図で開く

新潟県の所在地:新潟県長岡市

新潟県で鼬の群れの音として記録されます。伝承地域の代表位置です。

伝承の細かな分布は採録資料ごとに確認します。

六人搗きの正体と考えられているもの

六人搗きの音の主は、伝承では鼬の群れと説明されます。ただし、人が近づいたときに鼬を見たという記述や、音が生じる仕組みの説明は中心資料から確認できません。

重要なのは、物音が共同作業のリズムとして聞き取られ、さらに家の繁栄や衰退の前兆として意味づけられたことです。動物の鳴き声や足音だけでは、なぜ家の吉凶に結び付いたのかまでは説明できません。

六人搗きは、鼬の群れによるとされた正体不明の音を、人の臼搗きと家の行く末へ結び付けた新潟県の怪異です。

六人搗きをめぐる妖怪のつながり

同じ地域・原典 姿・性質が似る 対立・退治 混同・地域変異

六人搗きが記録された資料

『日本民俗文化資料集成 第8巻 妖怪』は、谷川健一の責任編集で1988年に三一書房から刊行された資料集です。六人搗きは、鼬の群れの物音と臼搗きの聞きなしに関わる伝承として参照されます。

六人搗きが記録された伝承資料

日本民俗文化資料集成 第8巻 妖怪

妖怪に関する各地の民俗資料を収録した1988年刊の資料集。

Amazonで本・漫画を探す

中部の妖怪の本を探す

Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。

六人搗きについてよくある質問

六人搗きとはどんな妖怪ですか。

新潟県で、鼬の群れが騒ぐ物音を、六人が臼を搗くような音に聞きなした怪異です。その音は家が栄える、または衰える前兆とも受け取られ、音の方へ近づくと止むとされます。

六人搗きは何と読みますか。

「ろくにんづき」と読みます。「搗き」は杵で臼の中の穀物や餅をつく動作で、六人という名は複数人の作業に似た音を表します。

六人搗きはどの資料にありますか。

谷川健一責任編集『日本民俗文化資料集成 第8巻 妖怪』などの民俗資料で紹介されています。同書は1988年に三一書房から刊行されました。

六人搗きの正体は分かっていますか。

伝承では鼬の群れの音とされますが、音を確かめに近づくと止み、鼬の姿は確認されません。六人の人影や六匹の鼬を数えた話でもありません。

六人搗きと併せて覚えたい言葉・用語

六人搗き(ろくにんづき)

新潟県で、鼬の群れが騒ぐ音を六人で臼を搗く音に聞きなし、家の盛衰の前兆とした怪異。

臼搗き(うすつき)

杵を使い、臼の中の穀物や餅をつく作業。六人搗きの音を表す基準になった。

聞きなし(ききなし)

動物の声や物音を、人の言葉や身近な作業の音に置き換えて聞くこと。

六人搗きの参考資料

この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。

  1. 国立国会図書館サーチ『日本民俗文化資料集成 第8巻 妖怪』