長野県茅野市の化物。古木の霊気が固まったもので、子どもを乗せたまま山へ走り込んだという。

尺取虫とはどんな妖怪か
尺取虫はひとことで言えば、動く古木です。長野県茅野市の話です。
国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースは、高橋宏一「蓼科山紀行」(『旅と伝説』4巻7号・通巻43号、1931年、74頁)を典拠に、次のように記します。
尺取虫は古木の霊気が固まったもので、人を害することはない。寛永15年4月、山の際にあった苔むした古木に子供が登った。2、3人の子供が後に続こうとしたとき、この木が山の中に走りこんだので子供たちは振り落とされてしまった。古老は「それはここの主で尺とり虫という化物である」と子供たちに教えたのでおそれられていた。
寛永15年は1638年です。
名は虫ですが、姿は古木です。
尺取虫が体を曲げて進むように、木が動いたということでしょう。
尺取虫の漢字表記と読み方
読みは「しゃくとりむし」です。
尺取虫は、体を曲げ伸ばしして進む蛾の幼虫です。尺(長さ)を測るように動くことからこの名があります。
この記録の尺取虫は、虫ではなく古木です。
動き方が虫に似ていたため、この名で呼ばれたとみられます。
尺取虫(しゃくとりむし)
日文研データベースが示す漢字表記。
尺とり虫(しゃくとりむし)
記録の中で古老が使う表記。
尺取虫の姿と特徴
尺取虫の姿は、古木です。
正体 … 古木の霊気が固まったもの。
見た目 … 山の際にあった苔むした古木。
動き … 山の中に走りこんだ。
害 … 人を害することはない。
呼び名 … ここの主で、尺とり虫という化物。
顔や目の記述はありません。
尺取虫の伝承記録
苔むした古木に登る
寛永15年(1638年)4月のことです。
山の際に、苔むした古木がありました。
子供が一人、その木に登ります。
2、3人の子供が後に続こうとしたとき——
この木が山の中に走りこみました。
子供たちは振り落とされました。
古老が教えた名
古老はこう教えました。 「それはここの主で尺とり虫という化物である」
「主」は、その場所を治めるものを指します。
記録は、人を害することはないとも書きます。
振り落とされはしましたが、襲うものではないとされています。
それでも、おそれられていたと結ばれます。
尺取虫の伝承地域
公的データベースの地域欄は長野県茅野市を示します。報告の題は「蓼科山紀行」です。
蓼科山は標高2,531メートルの山で、登山道が整備されています。古木の位置は書かれていません。
尺取虫の正体と考えられているもの
尺取虫が記録された資料
尺取虫を単独で扱った本は見当たりません。読めるのは『旅と伝説』の紀行です。
山を歩きながら土地の話を書き留めた記事で、蓼科山周辺の伝えが並びます。
尺取虫が記録された民俗資料
蓼科山紀行
高橋宏一が『旅と伝説』4巻7号(1931年)に載せた中心資料です。
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尺取虫についてよくある質問
尺取虫とは何ですか。
長野県茅野市に伝わる化物です。古木の霊気が固まったもので、子どもを乗せたまま山へ走り込んだと記録されています。
いつの話ですか。
寛永15年(1638年)4月のことと記録されています。
人を襲うのですか。
記録は「人を害することはない」と書いています。それでもおそれられていたとされます。
なぜ尺取虫と呼ぶのですか。
記録に理由は書かれていません。木の動きが尺取虫に似ていたためとみられます。
尺取虫と併せて覚えたい言葉・用語
霊気(れいき)
気配や力を指す語。古木に宿るとされました。
主(ぬし)
その場所を治めるもの。古老がそう呼びました。
寛永15年(かんえいじゅうごねん)
西暦1638年。この出来事の年です。
尺取虫の参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。