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鳥取県

依掛松(いかけまつ)とはどんな妖怪か|姿と伝承

依掛松  / イカケマツ

器物と草木 各地の伝説

鳥取県若桜町の松。恥をかいたとされた女が衣服をかけて川へ身を投げたと伝わる。

依掛松の姿を描いた図

663highland 「若桜駅(鳥取県八頭郡若桜町若桜)」 2008年 / CC BY 2.5 出典

依掛松とはどんな妖怪か

依掛松はひとことで言えば、身を投げた女が衣をかけた松です。鳥取県八頭郡若桜町の話です。

国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースは、田中新次郎樹木に関する因伯民談(五)」(『因伯民談』5巻2号、1938年、50頁)を典拠に、次のように記します。

公儀の客を招待する役の女が廻廊を歩き、その音が放屁と聞こえたため、殿は客を不快にさせたとして、川辺に出て、衣服をこの松にかけて投身したという

衣服をかけた——身を投げる前に、着ているものを松に残したということです。

その松が、依掛松と呼ばれるようになりました。

怪異が起きたとは書かれていません。 残ったのは松の名です。

依掛松の漢字表記と読み方

読みは「いかけまつ」です。

依掛」は、衣をかけたことを指すとみられます衣掛と書く松の名は各地にあります。

由来がそのまま名になった松です。岩手の赤子塚、大阪のウマザカと同じく、出来事が土地の名に残った形です。

依掛松(いかけまつ)

日文研データベースが示す漢字表記。

イカケマツ(いかけまつ)

同データベースの呼称読み。

依掛松の姿と特徴

この話に妖怪の姿はありません。記録にあるのは、出来事です。

きっかけ … 廻廊を歩く音が放屁と聞こえた。
咎め … 客を不快にさせたとされた。
行い … 川辺で衣服を松にかけ、投身した。
残ったもの … 依掛松という松の名。

霊が出た、声がしたという記述はありません。

依掛松の伝承記録

  1. 足音が放屁と聞こえた
  2. 衣服を松にかけて

足音が放屁と聞こえた

女は、公儀の客を招待する役でした。大切な客をもてなす場です。

廻廊を歩いたとき、その音が放屁と聞こえました。

本人が何をしたわけでもありません。音がそう聞こえたというだけです。

しかし殿は、客を不快にさせたとして咎めました

この理不尽さが、話の芯にあります。

衣服を松にかけて

女は川辺に出ました

そして、衣服をこの松にかけて投身しました

脱いだ衣を残す——身元と決意を示す形です。

咎めがどれほど重かったかは書かれていません。 役目を果たせなかったという一事が、命を絶たせました。

その松が、名を持ちました。

依掛松の伝承地域

公的データベースの地域欄は鳥取県八頭郡若桜町を示します。

松や川の位置は書かれていないため、地図で指せるのは町の範囲までです。

若桜町周辺(わかさちょうしゅうへん)

日文研データベースが示す伝承地域

地図で開く

若桜町周辺の所在地:鳥取県八頭郡若桜町

「樹木に関する因伯民談」の地域欄に対応します。

松や川の現在地は資料に書かれていません。

依掛松の正体と考えられているもの

この話に妖怪は出てきません。語られているのは、理不尽な咎めと、女の死です。

足音が放屁と聞こえた——それだけで役目を失い、命を絶ちました。

衣をかけた松が残り、名として土地に留まりました

樹木の伝説を集めた報告の中にある話で、木が人の死を覚えているという形をしています。

依掛松が記録された資料

依掛松を単独で扱った本は見当たりません。読めるのは『因伯民談』の記事です。

因伯は因幡と伯耆、いまの鳥取県です。樹木にまつわる話を集めた連載で、木ごとの由来が並びます。

依掛松が記録された民俗資料

樹木に関する因伯民談(五)

田中新次郎が『因伯民談』5巻2号(1938年)に載せた中心資料です。

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依掛松についてよくある質問

依掛松とは何ですか。

鳥取県若桜町の松です。咎められた女が衣服をかけて川へ身を投げたと伝わります。

なぜ咎められたのですか。

廻廊を歩いた音が放屁と聞こえ、客を不快にさせたとされたためと記録されています。

幽霊は出るのですか。

出るという記録はありません。松の名の由来として語られています。

松は今もありますか。

資料に現在地の記載はありません。日文研データベースの地域欄は八頭郡若桜町を示します。

依掛松と併せて覚えたい言葉・用語

公儀(こうぎ)

幕府や公の権威を指す語。招待する客の格を示します。

廻廊(かいろう)

建物をめぐる渡り廊下。足音が響く場所です。

因伯民談(いんぱくみんだん)

鳥取県の民俗誌。依掛松の記録が載りました。

依掛松の参考資料

この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。

  1. 国際日本文化研究センター「依掛松」