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香川県

徳利回し(とっくりまわし)とはどんな妖怪か|姿と伝承

徳利回し  / トックリマワシ

そのほか器物と草木 各地の伝説

香川県綾川町の寂しい場所で、蹴ろうとする足を横へかわし、前へ転がり続ける土の徳利。

徳利回しの姿を描いた図

Bakkai 「滝宮天満宮(香川県綾歌郡綾川町滝宮)」 2009年 / CC BY 3.0 出典

徳利回しとはどんな妖怪か

徳利回しは、道を転がる土の徳利です。香川県綾川町に伝わります。人里を離れた寂しい道へ土の徳利が現れ、通行人の足元の動きに応じて進路を変えます。人を襲う武器や獣ではなく、ありふれた酒器が捕まえられない相手になることが特徴です。短いやり取りの中で、道具の側が人を翻弄します。

徳利回しの漢字表記と読み方

読みは「とっくりまわし」です。綾川町のトックリマワシは器そのものが動く呼び名で、似た名称を持つ音だけの怪異とは現れ方が違います。

徳利回し(とっくりまわし)

動く器とその動作を表す漢字表記。

トックリマワシ(とっくりまわし)

採録記録で用いられるカタカナ表記。

徳利回しの姿と特徴

姿は土でできた徳利です。顔、手足、尾はなく、普通の酒器と変わらない形のまま道を転がります。大きさや色、栓の有無は伝わっていません。見た目ではなく、自分から進路を変える動きが怪異を示します。

徳利回しの伝承記録

  1. 人里を離れた寂しい場所へ現れる
  2. 蹴ろうとすると横へ逃げる
  3. 足を上げ直すと前へ転がる
  4. アシマガリは鑵子が転がる別の怪異

人里を離れた寂しい場所へ現れる

舞台は、家々から離れた静かな場所です。通行人の前方から、土の徳利が道の上を転がってきます。誰かが投げたとも、坂道を落ちてきたとも語られません。人の手を離れた器が、行き先を持つように近づくところから出来事が始まります。酒宴や酒蔵ではなく、使う人のいない道に日用品が一つだけ現れるため、見慣れた形がかえって不気味になります。

蹴ろうとすると横へ逃げる

通行人が転がる徳利を蹴ろうとすると、徳利は足の届かない横方向へすっと外れます。偶然に軌道が変わるのではなく、足を出した瞬間だけ避ける動きです。相手は人を襲わず、声も上げません。それでも、こちらの行動に合わせて進路を選ぶため、ただの落とし物として拾うことも、邪魔な物として退けることもできません。

足を上げ直すと前へ転がる

横へ外れたあと、人が足を上げ直すと、徳利はその方向へ逃げ続けず、再び前方へ転がります。近づく、横へ外れる、前へ進むという小さなやり取りが繰り返されます。徳利回しの怖さは大きな被害ではなく、相手に主導権を取られたまま道の上で翻弄されることです。名の「回し」も、器を手で回す場面ではなく、転がりながら進路を変える動きに合っています。

アシマガリは鑵子が転がる別の怪異

同じ綾川町には、徳利回しによく似た「アシマガリ」も伝わります。アシマガリで道を転がるのは、湯や酒を注ぐ金属製の鑵子です。徳利回しは土の徳利、アシマガリは鑵子と、足元へ現れる器が違います。通行人を翻弄する器物の怪異という型を共有しながら、呼び名と器物で区別される二つの地域伝承です。

徳利回しの伝承地域

伝承地は香川県綾歌郡の旧綾上町、現在の綾川町です。記録は「人里離れたさびしいところ」とするだけで、現れた道路や番地までは示していません。

旧綾上町周辺(きゅうあやかみちょうしゅうへん)

徳利回しの採録地域

地図で開く

旧綾上町周辺の所在地:香川県綾歌郡綾川町

土の徳利が転がる話が採録された地域です。

特定の坂や道路名までは記録されていません。

徳利回しの正体と考えられているもの

狸、狐、亡霊は登場しません。道で転がる器という日常的な光景に、近づく人へ応じて軌道を変える一動作が加わり、意思を持つ怪異へ変わっています。

徳利回しをめぐる妖怪のつながり

同じ地域・原典 姿・性質が似る 対立・退治 混同・地域変異

徳利回しが登場する作品

徳利回しは、器物が人を翻弄する怪異です。

蹴ろうとすると横へ外れ、足を上げ直すと前へ転がる。 襲いも脅しもしません。それでも、こちらの行動に合わせて進路を選びます。

同じ綾川町には、金属製の鑵子が転がる「アシマガリ」も伝わります。通行人を翻弄する型を共有しながら、器物の違いで呼び分けられた二つの伝承です。

徳利回しが登場する事典

日本妖怪大事典

村上健司による大部の事典。地方の小さな伝承まで、出典を添えて収めています。

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妖怪事典

村上健司による事典。全国の妖怪を採録元とともに整理しており、土地の伝承をたどる入口になります。

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徳利回しについてよくある質問

徳利回しとはどんな妖怪ですか。

香川県綾川町で、道具の側が進路を変えながら通行人を翻弄する怪異です。

徳利回しは音だけの妖怪ですか。

綾川町では、土の徳利そのものが転がってきます。転がる徳利が目に見えます。

徳利回しを蹴るとどうなりますか。

蹴ろうとした瞬間に横へ逃げ、足を上げ直すと前へ転がります。

徳利回しはアシマガリと同じですか。

似ていますが、アシマガリでは鑵子が転がります。記録上は別の呼び名として並んでいます。

徳利回しと併せて覚えたい言葉・用語

徳利(とっくり)

酒などを入れて注ぐ細口の器。

鑵子(かんす)

湯や酒を温め、注ぐために使われる金属製の器。

綾上町(あやかみちょう)

現在の香川県綾川町の一部にあたる旧町名。

徳利回しの参考資料

この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。

  1. 国際日本文化研究センター「トックリマワシ」
  2. 国際日本文化研究センター「アシマガリ」