鹿児島県与論町の生霊。口が入ると力が抜け、クチアカシという儀式で追い出したという。

Rsa 「与論港(鹿児島県与論町)」 2012年 / CC BY-SA 3.0 出典
イキロウとはどんな妖怪か
イキロウはひとことで言えば、人の口が入る生霊です。鹿児島県大島郡与論町の話です。
国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースは、鎌田久子「奄美諸島の憑依現象」(『人類科学』通巻29号、1977年、134頁)を典拠に、次のように記します。
イキロウの口が入ることをユンクミと言い、目に力がなくなり、身体がだるくなるといった症状が出る。イキロウがユンコマレルとクチアカシという儀式を行わねばならない。追い出したイキロウが他の家に憑かないように、なるべく人の住んでいない方向に行う。
「口が入る」という言い方が独特です。ユンクミ(口込み)と呼ばれます。
症状は具体的です。 目に力がなくなり、体がだるくなる。
そして、追い出す方向まで決められていました。
イキロウの漢字表記と読み方
読みは「いきろう」です。
「イキ」は生、生きた人の霊を指します。本土の生霊、沖縄のイキジャマにあたります。==
「ユンクミ」は口が込むという形の語とみられます。「クチアカシ」は口を明かす、つまり憑いた口を明らかにして追い出す儀式です。
イキロウ(いきろう)
日文研データベースが示す呼称。
生霊(せいれい)
同データベースが併記する語。
ユンクミ(ゆんくみ)
イキロウの口が入ることを指す語。
イキロウの姿と特徴
イキロウに姿はありません。記録にあるのは、症状と儀式です。
入り方 … 口が入る(ユンクミ)。
症状 … 目に力がなくなる。体がだるくなる。
儀式 … クチアカシ。
追い出す方向 … なるべく人の住んでいない方へ。
姿を見たという記述はありません。
誰のイキロウかを特定する方法も書かれていません。
イキロウの伝承記録
口が入る、という言い方
憑くでも取りつくでもなく、口が入ると言います。
ユンクミ——言葉が体に入るという形にも読めます。
症状は、はっきりしています。 目に力がなくなり、体がだるくなる。
気力が抜けるという形の不調として語られます。
追い出す方向まで決まっている
治すにはクチアカシという儀式を行います。
そして、重要な決まりがあります。 追い出したイキロウが他の家に憑かないように、なるべく人の住んでいない方向に行う。
行き先まで考えられています。
村の中で、次の被害を出さないための配慮です。
憑き物の話は、個人の病であると同時に、村の付き合いの問題でもありました。
イキロウの伝承地域
公的データベースの地域欄は鹿児島県大島郡与論町を示します。与論島は奄美群島の南端にあります。
儀式の場所はそのつど決まるため、地図で指せるのは島の範囲までです。
与論島(よろんじま)
日文研データベースが示す伝承地域
与論島の所在地:鹿児島県大島郡与論町
「奄美諸島の憑依現象」の調査地域に対応します。
儀式を行う場所は、そのつど決まるため記録されていません。
イキロウの正体と考えられているもの
イキロウは、生きた人の霊とされます。沖縄のイキジャマ、本土の生霊にあたります。
姿はありません。 症状と、儀式の手順によって存在が示されます。
この記録の特徴は、追い出す方向まで決まっている点です。 人の住んでいない方へ送る。
憑いたものを消すのではなく、移すという考え方が読み取れます。
残ったのは、ユンクミ・クチアカシという言葉と、その手順です。
イキロウが記録された資料
イキロウを単独で扱った本は見当たりません。読めるのは『人類科学』の論文です。
奄美の憑依やユタを扱った研究は数多くあります。沖縄のイキジャマと並べて読むと、島ごとの言い方の違いが見えます。
イキロウが記録された民俗資料
奄美諸島の憑依現象
鎌田久子が『人類科学』通巻29号(1977年)に載せた中心資料です。
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イキロウについてよくある質問
イキロウとは何ですか。
鹿児島県与論町に伝わる生霊です。口が入ると目に力がなくなり、体がだるくなるとされました。
ユンクミとは何ですか。
イキロウの口が入ることを指す語です。
どうやって治すのですか。
クチアカシという儀式を行います。追い出す方向は、なるべく人の住んでいない方へとされました。
イキジャマと同じですか。
どちらも生きた人の霊です。イキジャマは沖縄本島北部、イキロウは与論島での呼び名です。
イキロウと併せて覚えたい言葉・用語
ユンクミ(ゆんくみ)
イキロウの口が入ることを指す語です。
クチアカシ(くちあかし)
憑いた口を明かして追い出す儀式です。
イキジャマ(いきじゃま)
沖縄県大宜味村で語られる生霊。同じ形の言い伝えです。
イキロウの参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。