香川県綾川町で、増水した川に女の泣く声がするという。渕で髪をとき、笑うと馬鍬のような歯が見えた。

カワジョロとはどんな妖怪か
カワジョロはひとことで言えば、笑うと歯が恐ろしい川の女です。香川県綾歌郡綾川町の話です。
国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースは、水野一典「香川県綾上町妖怪名彙」(『四国民俗』通巻8号、1981年、24頁)を典拠に、次のように記します。
大雨が降って水かさが増えると川で女の泣く声がするが、カワジョロだという。
さらに、夜になると渕でカワジョロが髪をとき、こちらを向いて笑うとウマンガ(馬鍬)のような歯が生えていたといいます。
馬鍬は、牛や馬に引かせて田をならす農具です。櫛のように歯が並んでいます。その歯の並びが、笑った口の中に見えた、というのがこの話の要です。
声と、髪と、歯。 記録されているのはこの三つです。
カワジョロの漢字表記と読み方
読みは「かわじょろ」です。
「ジョロ」は女郎、女を指す言い方とみられます。川に現れる女を「川女郎」と呼ぶ例は、各地にあります。
ただし、この記録に字の説明はありません。カタカナのまま記録されています。
カワジョロ(かわじょろ)
日文研データベースが示す呼称。
川女郎(かわじょろう)
各地で同じ音に当てられる書き方。
カワジョロの姿と特徴
カワジョロの姿は、記録に細かく書かれています。
声 … 増水した川で泣く女の声。
動き … 夜の渕で髪をとく。
顔 … こちらを向いて笑う。
歯 … 馬鍬(ウマンガ)のような歯が生えている。
髪をとく姿は美しく、笑うと歯が恐ろしいという組み立てです。
背丈や着物は記録されていません。
カワジョロの伝承記録
大雨のあと、川で泣く声
出るのは大雨が降って水かさが増えたときです。
川の音が大きくなる時期にあたります。 増水した流れの中に、女の泣き声を聞き取ったという形です。
なぜ泣いているのかは記録されていません。 溺れた人の霊とも、川の主とも書かれていません。
危険な水位のときに、近づくなという知らせとして働いた、と読むこともできます。
笑うと、馬鍬の歯
もう一つの姿は、夜の渕で髪をとく女です。
髪をとく姿は、水辺の女の怪異によく現れます。そこまでは、恐ろしくありません。
振り向いて笑ったときに、ウマンガ(馬鍬)のような歯が見えます。
馬鍬は、田をならすために歯を並べた農具です。 その歯並びが口の中にある、という形で恐ろしさが表されました。
田を耕す道具が、怪異の顔に使われています。
カワジョロの伝承地域
公的データベースの地域欄は香川県綾歌郡綾川町を示します。採録当時の綾上町は、合併により現在の綾川町の一部です。
集落や川の名は記録されていないため、地図で指せるのは町の範囲までです。
綾川町周辺(あやがわちょうしゅうへん)
日文研データベースが示す伝承地域
綾川町周辺の所在地:香川県綾歌郡綾川町
採録地の綾上町は、合併して現在の綾川町になりました。
資料には、渕の名も川の名もありません。
カワジョロの正体と考えられているもの
カワジョロの正体は確定していません。
川の主とも、溺死者の霊とも書かれていません。 記録にあるのは、声・髪・歯という三つの姿だけです。
各地の川女郎や濡女と近い形をしていますが、この記録は他の妖怪と結び付けていません。
大雨のあとの川は危険です。 その危険な場所に、近づけば振り向いて笑う女がいる——という語りが残りました。
カワジョロが記録された資料
カワジョロが記録された民俗資料
香川県綾上町妖怪名彙
水野一典が『四国民俗』通巻8号(1981年)に載せた中心資料です。
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カワジョロについてよくある質問
カワジョロとはどんな妖怪ですか。
香川県綾川町の川の女です。増水すると泣く声がし、夜の渕で髪をとき、笑うと馬鍬のような歯が見えたと記録されています。
馬鍬とは何ですか。
牛や馬に引かせて田をならす農具です。櫛のように歯が並んでいます。
人に害はありますか。
襲うという記録はありません。声と姿だけが伝えられています。
いつ現れますか。
大雨で水かさが増えたとき、また夜の渕と記録されています。
カワジョロと併せて覚えたい言葉・用語
馬鍬(まぐわ)
田をならす農具。記録では「ウマンガ」と呼ばれ、歯の並びが顔の例えに使われます。
渕(ふち)
川の深くよどんだところ。カワジョロが髪をとくとされた場所です。
四国民俗(しこくみんぞく)
カワジョロの報告が載った雑誌です。
カワジョロの参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。