夜の水辺でざぶざぶと物を洗う音をさせる怪異。遠州西部では狐のしわざとされた。
洗濯狐とはどんな妖怪か
洗濯狐はひとことで言えば、夜の水辺で洗い物の音をさせるものです。
国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースは、柳田国男「妖怪名彙」(『民間伝承』、1938年)を典拠に、夜に水辺でざぶざぶと物を洗う音をさせる怪異と記します。地域欄は静岡県です。
遠州西部では狐の仕業だとされている——これが名の由来です。音を聞いた人が、その主を狐と考えたところから「洗濯狐」と呼ばれました。
姿は語られません。記録にあるのは音だけで、狐の姿は書かれていません。
洗っているものが何かも書かれていません。布か、米か、体か。記録は「物」としか記していません。
洗濯狐の漢字表記と読み方
読みは「せんだくぎつね」です。「せんたく」ではなく「せんだく」と濁ります。
古い言い方では、洗濯を「せんだく」と読むことがありました。日文研データベースの呼称読みも「センダクギツネ」です。
「狐」の字が入っていますが、狐の姿を見た記録はありません。音の主として狐が当てられた名です。
洗濯狐(せんだくぎつね)
日文研データベースが示す漢字表記。
センダクギツネ(せんだくぎつね)
同データベースの呼称読み。
洗濯狐(せんたくぎつね)
現代の読み方に寄せた読み。
洗濯狐の姿と特徴
洗濯狐に姿はありません。記録にあるのは、音と場所と時刻です。
時 … 夜。
場所 … 水辺。
音 … ざぶざぶと物を洗う音。
主 … 遠州西部では狐とされた。
洗っている姿を見た、という記録はありません。
音が近づくのか遠ざかるのか、覗きに行くとどうなるのかも書かれていません。
洗濯狐の伝承記録
水辺は、昼の仕事場だった
川べりや井戸端は、昼のあいだ人が洗い物をする場所でした。
その同じ場所で、夜になって同じ音がする。誰もいないはずの時刻に、聞き慣れた音だけが続きます。
知らない音ではなく、知っている音であることが不気味さの中心です。 洗濯狐の話は、暮らしの音がそのまま怪異になった例です。
洗濯狐の伝承地域
公的データベースの地域欄は静岡県を示します。資料は遠州西部と記します。
どの川、どの水辺かは書かれていません。地図で示せるのは県西部という範囲までです。
洗濯狐の正体と考えられているもの
洗濯狐の正体は確定していません。
記録が伝えるのは、遠州西部では狐の仕業とされたという土地の見方です。記録にあるのは、音を狐に結び付けた土地の受け取り方までです。
夜の水音の出どころとして、流れの変化や獣の水浴びを考えることはできますが、資料はそこに触れていません。
分かっているのは、夜・水辺・洗い物の音・狐という四つだけです。
洗濯狐が記録された資料
洗濯狐を単独で扱った本は見当たりません。読めるのは柳田国男の「妖怪名彙」です。
狐を主とする怪異は数が多く、まとめて論じられることが多い題材です。洗濯狐はその中の、水辺の音に付けられた名として拾えます。
洗濯狐が記録された民俗資料
妖怪名彙
柳田国男が『民間伝承』(1938年)に載せた中心資料です。
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洗濯狐についてよくある質問
洗濯狐とはどんな妖怪ですか。
夜の水辺でざぶざぶと物を洗う音をさせるとされた怪異です。遠州西部では狐のしわざとされました。
狐の姿は見えるのですか。
記録に姿の記述はありません。聞こえるのは音だけで、狐は音の主として当てられた名です。
何を洗っているのですか。
書かれていません。記録は「物を洗う音」とだけ記しています。
読み方は「せんたくぎつね」ですか。
日文研データベースの呼称読みは「センダクギツネ」です。古い言い方で洗濯を「せんだく」と読んだ形です。
洗濯狐と併せて覚えたい言葉・用語
遠州(えんしゅう)
静岡県西部の古い呼び名。洗濯狐が狐のしわざとされた地域です。
妖怪名彙(ようかいめいい)
柳田国男が『民間伝承』に連載した、各地の妖怪の呼び名を集めた記事です。
狐火(きつねび)
狐のしわざとされた怪火。狐が夜のふしぎの主とされた例の一つです。
洗濯狐の参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。